実トラフィックが語る「セキュリティ脅威の真実」【最終回】
会社を今まさに襲う「3つのセキュリティ脅威」、その有効な対策とは?
実トラフィックを基にした調査は、企業が想像以上に危険と隣り合わせの状況にあることを浮き彫りにした。企業はどのような対策を取ればよいのか。連載の内容を振り返りながら解説する。
本連載ではこれまで、国内企業のネットワークから得た生データを基に、最新の脅威について説明してきました。最終回となる今回は、これら最新の脅威に、セキュリティ製品を使ってどう対処すべきかを説明します。
連載:実トラフィックが語る「セキュリティ脅威の真実」
脅威1:情報共有アプリによる意図しない情報漏出
連載の第1回「『OneDrive』やメールも危険? 攻撃者が狙う情報共有系アプリ5種」では、
- メール
- インスタントメッセージング(IM)
- ソーシャルメディア
- ファイル共有
- 写真動画
という5つのカテゴリの情報共有系アプリケーションについて、企業における使用状況を分析。国内企業は、ファイル共有アプリケーションについては1社平均17種のアプリを使用しており、グローバルと比較してメールや写真動画アプリケーションの利用割合が高かったことを紹介しました。
情報共有系アプリケーションを経路とする脅威は、国内では脅威全体のうち17%を占めています。攻撃そのものの経路だけでなく、内部情報の意図しない外部流出に情報共有系アプリケーションが利用されるケースも多くあります。
対策としては、情報共有系アプリケーションについて利便性と安全性のバランスが取れたセキュリティポリシーを導入する必要があります。具体的には、どのアプリケーションを誰が使っているのかを把握した上で各部門と協議し、業務に必要なアプリケーションを洗い出して、セキュリティポリシーを定義します。セキュリティポリシーの文書化や定期的な見直し、ユーザーの教育も必要になります。
セキュリティポリシーに基づく制御を実現する具体的な手段としては、以下が挙げられます。
制御手段1:ネットワークの制御
1つ目はネットワークによる制御であり、次世代ファイアウォールなどのネットワークセキュリティ製品によって実現します。従来のファイアウォールではポート番号やプロトコル番号によるポリシー制御しかできませんでしたが、次世代ファイアウォールではアプリケーションやユーザー名、グループ名も制御要素として指定することが可能です。
制御手段2:端末の制御
ネットワークではなく、端末にエンドポイントセキュリティ製品をインストールして、アプリケーションを制御する方法もあります。この場合、管理者が実行してもよいアプリケーションをホワイトリストとして定義し、実行させたくないアプリケーションをブラックリストとして定義する、といった方法で制御をします。
私物端末の業務利用(BYOD)を採用している企業では、私物端末にはセキュリティ製品を導入するのが難しいこともあり、エンドポイントセキュリティ製品だけでは制御対象を把握し切れない場合もあるはずです。そのような場合でも、LANやWANといった内部ネットワークの全トラフィックをスキャンできる次世代ファイアウォールなどのネットワークセキュリティ製品を併用すれば、問題あるアプリケーションを誰が使っているかを追跡できます。ただし、3G/LTE回線といった外部ネットワークしか使わない私物端末を制御するには、何らかのエンドポイントセキュリティ製品の導入が必要になります。
制御手段3:モバイル端末の制御
最近ではスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末でも、クライアントPCと同様のアプリケーションが利用できるようになりました。このことは便利な半面、クライアントPCと同等のセキュリティポリシーをモバイル端末にも適用しなければならないことを意味します。モバイル端末のアプリケーションには不正にユーザー情報を外部送信するなど悪質なものもあり、その管理は喫緊の課題です。
一部のモバイルデバイス管理(MDM)製品には、利用禁止アプリケーションを設定したり、アプリケーションのダウンロードを制限したりする機能があります。こうした端末レベルのアプリケーション管理ももちろん有効ですが、次世代ファイアウォールなどのネットワークセキュリティ製品で、組織全体に流れているトラフィックからアプリケーションを判別して制御する方が手間は掛かりません。
例えば次世代ファイアウォールの場合、日次リポートに気になるジャンルのアプリケーションカテゴリを登録しておけば、常に管理用画面を見ていなくても、1日1回確認する程度で傾向をつかむことができます。例えば、リポートに普段利用されていないファイル共有アプリケーションが表示されていたら、それはどのようなリスクを持つアプリケーションか、誤った使われ方はされないかなど詳細を確認し、自社のセキュリティポリシーと一致しなければブロックするように運用できます。
脅威2:未知のトラフィックの増加
連載第2回「会社で見つかるマルウェアは年間2000種以上――実トラフィックで明らかに」では、国内企業では1社当たり平均2200件のマルウェアが検出されたことを紹介。マルウェアの侵入経路は、55%がWebブラウジング経由、28%がSSL経由であることを示しました。
一方、グローバルで目立ったのは未知のUDPトラフィック経由のマルウェア侵入で、実にマルウェアの侵入経路全体の97%を占めています。国内でも今後、未知のUDPトラッフィク経由のマルウェア攻撃が増加する可能性があります。
未知のトラフィックの対処法としては、以下が挙げられます。
対処法1:トラフィック制御
会社のネットワークでやりとりされるトラフィックのうち、今回の調査で次世代ファイアウォールが“未知”だと判断したのは、平均で全トラフィックの10%程度です。未知のトラフィックは、ユーザー企業用にカスタマイズされた正規アプリケーションのトラフィックと、マルウェア通信のトラフィックに大別されます。
正規アプリケーションの場合、カスタムアプリケーションとして次世代ファイアウォールに定義しておけば、未知のトラフィックとして検知されないようにすることが可能です。その残りが、割合としては少ないもののリスクが非常に高いトラフィックになります。こうした未知のトラフィックを制御すれば、かなりの量のマルウェアを排除できます。
対処法2:アプリのセグメント化が有効
連載第2回でも解説したように、業務用のアプリケーションやサービスを分類し、各ユーザーが必要とするアプリケーションのみにアクセスできるようにする「セキュリティセグメンテーション」も有効です。基本的には、まずは全てを疑って掛かる「ゼロトラスト」の原則をネットワークにも適用することが大事です。
委託企業の従業員を含めた内部関係者による情報漏えい事件が、国内外で頻発しています。リスクを減らす観点からも、インターネットと内部ネットワークとの境界に置くゲートウェイだけでなく、内部ネットワークとデータセンターとの境界や、人事部など特定部門のみが利用するサーバの手前に、次世代ファイアウォールなどのネットワークセキュリティ製品を配置するのもよいでしょう。
例えば次世代ファイアウォールであれば、アプリケーションとユーザーを識別して不必要なアクセスを遮断し、いつ誰がデータへアクセスしたかを追跡しやすくします。これまでの情報漏えい事件の傾向を見ると、アクセス権限を持った人が機密情報を不正入手したケースは珍しくありません。そのため、機密情報保持や情報漏えい対策に関して、そのリスクと自社の対策について、ユーザーに対して教育していくことも重要です。
脅威3:「Heartbleed」などのSSL悪用攻撃
連載第3回「『Heartbleed』の脅威を正しく回避する7つの対策」では、国内企業ではSSLの使用状況が36%とグローバルの26%と比べて高く、その分SSLをターゲットとした攻撃も受けやすいことを示しました。プライバシー保護のためにはSSLの使用は重要です。ただし、一方でSSLは情報漏えいの抜け道として使われたり、SSL/TLSライブラリの脆弱性「Heartbleed」によるメモリ傍受の脅威を招く可能性があるなど、まさに“もろ刃の剣”なのが現状です。
対策:SSLを使用するアプリケーションを判別し、選択的に復号する
Heartbleed対策には第3回で説明した通り、パッチの適用が不可欠です。パッチをすぐに適用できない場合は、Heartbleed攻撃向けのシグネチャがある侵入防御システム(IPS)製品や次世代ファイアウォールの活用で、攻撃の検知や回避ができます。
マルウェア関連の通信や、セキュリティ対策を回避するトラフィックを特定するには、SSL暗号化通信の復号が必要な場合があります。その上で、SSL暗号化通信を使用しているアプリケーションを特定し、やりとりするトラフィックにマルウェア、スパイウェア、脆弱性攻撃による通信や、悪意あるURLへのアクセスがあるかどうかを確認できるようにします。SSL暗号化通信の復号が可能な次世代ファイアウォールやプロキシを利用すれば、これらを1台で確認できます。
これからの時代のセキュリティ対策
マルウェア攻撃や情報漏えい事件が後を絶たなくなった現在、セキュリティ担当者にはセキュリティポリシーの定義に加え、セキュリティ対策の具体的な方針策定、対策に必要なセキュリティ製品/サービスの適切な選定、導入が求められます。加えて、常日頃セキュリティ関連の情報を収集し、急なセキュリティの危機に対処できるような柔軟な体制を整えることが大切なのはいうまでもありません。
まずは、今回の調査で利用した次世代ファイアウォールをはじめ、トラフィックを可視化するセキュリティ製品を利用し、自社のネットワークの現状を明らかにすることから始めてみてはいかがでしょうか。
三輪賢一(みわ けんいち) パロアルトネットワークス合同会社
外資系ネットワークおよびセキュリティ機器ベンダーのプリセールスSEを15年以上経験。現在は次世代ファイアウォールおよびエンタープライズセキュリティを提供するパロアルトネットワークスでSEマネージャーとして勤務。主な著書に『プロのための図解ネットワーク機器入門(技術評論社)』がある。
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