大手ソフトウェア会社の中には、顧客に無駄なアップグレードを勧める例があるという。売り手の口車に乗らず、貴重なIT予算を効率的に使うための交渉術を紹介する。
米調査会社Gartnerが提唱する「バイモーダルIT」とは、「CIOはIT部門を活動の方向性によって二分し、事業を進めるべきである」という考え方だ。「モード1」チームはシステムズ・オブ・レコード(SoR:Systems of Records)つまり従来型の基幹系システムを維持管理し、「モード2」チームは事業の発展が見込める分野に注力する新種のプロジェクトを推進する。後者の事業を、Gartnerはシステムズ・オブ・エンゲージメント(Systems of Engagement:SoE)と呼んでいる。
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このSoEは、IT投資に新しい価値をもたらすものとして有望視されている。しかし仮にGartnerの予測が正しいとしても、ヨーロッパ全域で企業がIT部門に割り振る予算はわずか1.8%増の見通しだ。この状況では、モード2チームに十分な予算が当てられる見込みはほとんどない。
さらに困ったことに、大手ソフトウェアプロバイダーにおいては、エンタープライズ製品の売り上げが頭打ちになっているという現実がある。今やIT予算の大半は既存システムの保守契約に対して支払われるものになっている。大手ソフトウェア会社の営業部門は、既存顧客に従来型の製品とクラウドサービスの組み合わせを売り込もうとしており、これを達成した営業担当者にインセンティブを与えている。
ユーザー企業のIT部門は、こうした大手ソフトウェア会社との交渉に当たって支払額を抑えようと試みる場合があるが、そんな苦労をしなくても済む方法がある。購入するライセンス数を減らせばいい。
独SAPや米Oracle製品の保守を請け負う専門業者、米Rimini Streetの代表兼COO(最高執行責任者)セバスチャン・グレイディ氏は、この現状を次のように指摘する。「無限のアップグレード地獄から抜け出さない限り、モード2のプロジェクトに回せる予算は永遠に確保できない。顧客を食い物にするベンダーが多すぎる。ライセンス更新料欲しさにアップグレードを促した例が、今までどれだけあっただろうか」
ソフトウェアは消耗品とは違うと同氏は主張する。SAPやOracleの平均的な顧客は、その社内システムを8年以上運用している。つまり最新バージョンより2〜3世代前のものだ。
「個人的な臆測だが、アップグレードを選択した企業の75%は、いわば(ソフトウェアメーカーのセールストークに乗せられて)変更させられたのだろう」(グレイディ氏)
ハードウェアメーカー、ソフトウェアメーカー、システムインテグレーターはいずれも、顧客がアップグレードによって支払うライセンス料に大きく依存していると同氏は説明する。
グレイディ氏は続けて、大手サプライヤーは不要なテクノロジーのアップグレードまで顧客に強要しているとも話す。正当性が疑わしいアップグレードの例として、インメモリテクノロジーを組み込んだERP「SAP S/4HANA」へのアップグレードを挙げた。
「SAP R/3」のコアである「ECC 6.0」は、4億行のコードで構成されていると同氏は指摘する。このシステムをHANAに移行する作業は、完了するまで数年を要するだろう。それでもSAPは、HANAへのアップグレードを顧客に促している。
同氏はSAPユーザーの実態を次のように説明する。旧バージョンであるこのERP製品に顧客が支払った保守契約料は220万ドルだったが、その後ライセンスの更新料として年間400万ドルが上乗せされた。これに対してS/4の場合は、システムの実装費も請求に加えられるので、請求額はさらに1000万ドル加わることになる。
グレイディ氏の主張によると、ほとんどの場合HANAへのアップグレードは不要なので、CIOは(仮にその提案を受けたとしても)却下するべきだという。
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