悪意のある通信も暗号化される、常時SSL時代のセキュリティ対策プライバシーも悪意も見えない時代

SSLなどの暗号化プロトコルの使用が増加すると、悪意のあるデータまでが暗号化されて検知が難しくなるという課題が顕在化してきた。

2019年08月02日 08時00分 公開
[Aaron TanComputer Weekly]

 サイバーセキュリティでは、ネットワークの暗号化はもろ刃の剣と見なされることが多い。暗号化すれば、顧客はインターネットでの取引のプライバシーとセキュリティを確保できる。同時に、サイバー犯罪者も暗号化によって悪意のあるアクティビティーを隠すことができる。

 調査会社Gartnerによると、暗号化されたトラフィックは対前年比90%以上増加しているという。同社は、2019年末までに全Webトラフィックの80%が暗号化されると予想する。

 広く利用されているSSL(Secure Sockets Layer)やTLS(Transport Layer Security)などの暗号化プロトコルに隠されたサイバー攻撃を防ぐには、自社のネットワークの可視性を高めることが重要になる。

会員登録(無料)が必要です

 ネットワークをチェックしない状況を続けると、暗号化されたトラフィック(特に従業員の端末からのトラフィック)増がマルウェアの感染やデータの持ち出しにつながり、重要な情報やIT資産の制御権がコマンド&コントロール(C2)サーバに流出する恐れがある。

 トレンドマイクロで「TippingPoint」担当のバイスプレジデント兼統括マネジャーを務めるブレーク・サザーランド氏は次のように指摘する。

 暗号化は端末のどちら側でも実行できる。暗号化がデータの持ち出しやC2コミュニケーションの有効化を目的として行われたかどうかを判断するためには、データパケットの暗号化されていない部分のルールを当てはめることになる。

 同氏は英Computer Weeklyのインタビューに答えて次のように語った。「多くの企業は、F5 Networksの『BIG-IP』を導入してデータセンターでSSLを終端処理している。このシステムの背後に当社の製品を設置して、トラフィックを監視することになる」

 アジア太平洋地域の企業は、TippingPointのような侵入防止システム(IPS)の導入が進んでいる。TippingPointは暗号化されたトラフィックを調べ、アクティビティーに悪意の兆候がないかどうかを確認する。サザーランド氏によると、IPSの導入は一般に医療サービスプロバイダーよりも金融機関の方が進んでいるという。

 「こうしたシステムの導入が進んでいる要因の一つは、世界的なサイバーセキュリティ人材の不足にある。この地域では特にその傾向が強いと考えている」(サザーランド氏)

 IPSはネットワークやアプリケーションのパフォーマンスに影響するのではないかという懸念に対して、同氏は次のように話す。「TippingPointのIPSエンジンは、特に長いレイテンシによって速度が落ちる恐れのあるモノのインターネット(IoT)アプリケーション向けに、正当なトラフィックを素早くプッシュするように設計している」

 暗号化トラフィックのピーク時に対応する場合は、複数のアプライアンスを組み合わせることができる。ただしクラウドでは、仮想プライベートクラウドが依然高いスループットに対処できないため、「まだ問題は解決されていない」と同氏は話す。

 世界的にサイバーセキュリティの人材が不足する中、トレンドマイクロでも他のセキュリティサプライヤーと同様、機械学習技術を用いて暗号化トラフィックにサイバー攻撃が潜んでいる可能性についての警告を生成している。

 その後、既知の脅威が自動的に判断されてブロックされ、正当なトラフィックは通過する。さらに調査が必要な、疑わしいトラフィックについては警告が発せられる。

 多くの企業が個人データ保護制度の対象となる中、ポリシーを使って暗号化された正当な送信トラフィックを許可する企業が増えている。例えば従業員のブラウザからインターネットバンキングのWebサイトに送られるトラフィックなどを許可する。TippingPointでもこうした機能を2019年秋にリリースする予定だ。

 「この機能をポリシーベースにするのは、顧客がプライバシー法に違反しないようにするためだ。顧客が暗号化を解除する場合としない場合を調整するための制御を提供する必要がある」とサザーランド氏は話す。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

技術文書・技術解説 ServiceNow Japan合同会社

限られた人材でインシデントや脆弱性への対応を迅速化、その鍵となるのは?

セキュリティ対策チームの57%が人材不足の影響を受けているといわれる昨今、インシデントや脆弱性への対応の遅れが、多くの企業で問題視されている。その対策として有効なのが「自動化」だが、どのように採り入れればよいのだろうか。

市場調査・トレンド ServiceNow Japan合同会社

増加の一途をたどるランサムウェア、攻撃に対して先手を打つには?

さまざまなITツールの導入が進んだことで、脅威アクターにとっての攻撃対象領域も拡大し、ランサムウェア攻撃が増加し続けている。しかし、多くの企業で対応が後手に回ってしまっている。この状況から脱却するにはどうしたらよいだろうか。

技術文書・技術解説 ServiceNow Japan合同会社

毎秒1.7MBが生成されるデータ時代、個人データ保護を実現する9つのステップ

世界中の企業が取り扱う個人データには、不正使用による悪影響やデータ侵害による被害といったリスクが付き物だ。今やグローバル課題となった適切なデータ利用と保護を実現するためのアプローチを、具体的に解説する。

市場調査・トレンド ServiceNow Japan合同会社

サイバー攻撃を効果的に“予測・排除・阻止”するための優れた10の方法

サイバー脅威に対するレジリエンスと脆弱性管理を強化することは、多くの企業にとって喫緊の課題になっている。リソースとコストが限られている中で、効果的に進めるにはどうすればよいのか。そのヒントを解説する。

製品資料 ServiceNow Japan合同会社

セキュリティツール増が招くアラート対応やデータ管理の煩雑化、解決するには?

激化するサイバー攻撃に対抗すべく複数のセキュリティツールを導入する企業は多いが、アラート対応に追われたり、データ管理が煩雑になったりといった、新たな課題に悩むケースも少なくない。これらを解決するための6つのステップとは?

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...