「VPN」の誤解と現実【中編】
「レガシーVPN」と「クラウドVPN」の違いとは?
ハードウェアの導入を前提とする従来型のVPN製品に加えて、最近はソフトウェア形式のVPN製品やVPNのクラウドサービスが充実し始めている。何が違うのか。
「VPN」(仮想プライベートネットワーク)がユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー経験価値)を妨害すると信じている人がいる。この誤解は「レガシーVPN」の動作に由来する。レガシーVPNは、従業員のクライアントデバイスにインストールするソフトウェア「VPNクライアント」と、会社側に設置するハードウェア「VPNゲートウェイ」の間で、仮想的な通信路の「トンネル」を作成し、安全にデータを送受信できるようにする。
ソフトウェアVPNやクラウドVPNのメリット
ITコンサルタントのポール・カーバン氏は、レガシーVPNがUXを妨害すると考えられている要因として、スループット(実効的なデータ伝送速度)の低さやレイテンシ(遅延)を挙げる。こうした問題は、従業員の苦情が増える原因となる。
VPNの主流はソフトウェアやクラウドサービスになりつつある。レガシーVPNはハードウェアとしてVPNゲートウェイを使用するため、VPNゲートウェイがある拠点に必ず接続しなければならず、非効率的な経路をたどらなければならないことがある。それが問題の一つになる。
ソフトウェア形式のVPN製品(以下、ソフトウェアVPN)やVPNのクラウドサービス(以下、クラウドVPN)の場合、ハードウェアには依存しないため同様の問題は発生しにくい。「データの伝送経路を効率化できることが、ソフトウェアVPNやクラウドVPNのメリットだ」と、VPNベンダーNetMotion Softwareでマーケティングを統括するジョエル・ウィンデルズ氏は語る。米国の企業で働く従業員が出張で英国にいたとしても、レガシーVPNのようにわざわざ遠隔地である米国の拠点にいったん接続する必要はない。
VPNの拡張性も問題
VPNの同時接続数の増加やスループットの向上といった拡張に関する誤解もある。これもやはりレガシーVPNに由来する。レガシーVPNはハードウェアを使用するため、拡張時には新たなハードウェアを導入するなど手間と時間がかかる。
ソフトウェアVPNやクラウドVPNであれば、拡張は比較的容易だ。特にクラウドVPNであれば、拡張は数時間で済むこともある。レガシーVPNの場合、ベンダーから新しいハードウェアを届けてもらうだけで数日から数週間かかることが珍しくない。
クラウドVPNにも課題が
ただしソフトウェアVPNやクラウドVPNにも注意点がある。特にクラウドVPNは導入や運用の容易さが、課題を招く要因となっている。レガシーVPNを利用していた企業が、在宅勤務などのテレワークの急増を理由にクラウドVPNを導入したとしよう。IT部門はレガシーVPNと同じようにVPNの利用状況を監視できるとは限らず、コントロールの一部を失う可能性がある。
クラウドVPNは拡張しやすい半面「保護する必要のない大量のデータを伝送する状況に陥りかねない」とウィンデルズ氏は指摘する。必ずしも必要ではない帯域幅(回線容量)を使い、出費がかさむ可能性もある。「それはユーザー企業ではなくベンダーの利益になるだけだ」(同氏)
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