2021年01月13日 08時00分 公開
特集/連載

VMwareは「Tanzu」でユーザーをロックインしようとしているのか?Kubernetes創始者ジョー・ベダ氏インタビュー【前編】

VMwareのKubernetes関連製品群がVMware Tanzuだ。VMwareはTanzuで何をやろうとしているのか。Kubernetesの創始者の1人で現在はVMwareのプリンシパルエンジニアであるジョー・ベダ氏に聞いた。

[Aaron Tan,Computer Weekly]

 「Kubernetes」の創始者の1人がジョー・ベダ氏だ。同氏がGoogleで初期のKubernetesに取り組んでいた当時、同氏も同氏のチームも、Kubernetesがコンテナアプリケーションの運用、管理ツールのデファクトスタンダードになるとは考えてもいなかった。

 今ではマイクロサービスのほぼ全てのデプロイ先でKubernetesを目にする。一部の推定によると、この市場は2023年には約50億ドル(約5280億円)に成長するといわれている。

 「Google Compute Engine」(GCE)の生みの親の1人でもあるベダ氏は、Kubernetesの利用を支援するためにHeptioを立ち上げた。その後HeptioがVMwareに買収され、同氏は現在VMwareでプリンシパルエンジニアとして勤務している。

 本誌はベダ氏にインタビューを行い、Kubernetesのコミュニティーが目指すこと、VMwareが考えていることを聞いた。

――Kubernetesの生みの親の1人として、Kubernetesが現在のようになると考えていましたか。

ベダ氏:Kubernetesに早くから携わっていた全員が事態の進展に驚いている。大きくなっていくかもしれないという思いはあった。だが、ここ6年の動きはまさに疾風のようだった。

 私は自身のキャリアの大半をプラットフォームレベルの仕事に費やしてきた。私のキャリアはMicrosoftから始まった。そこでは「Internet Explorer」や「Windows」に取り組んだ。その後サーバ側に移り、GCEやKubernetesによってクラウド関連の仕事に携わった。こうしたキャリアを通して、優れたプラットフォームとはどのようなものかを感じ取ってきた。それは、人々が計画していなかったことを実行し、想像を超える価値を引き出すことができるプラットフォームだ。

 Kubernetesの柔軟性と、Kubernetesを適用できるニッチな部分全てに驚いている。私がKubernetesを開発した当時、エッジコンピューティングについて考えたこともなかった。だが、さまざまな環境の統一プラットフォームという点ではエッジコンピューティングが大きな部分を占めるようになっている。

 そして最後に、コンテナという枠を超えてより汎用(はんよう)的で拡張可能なコントロールプレーンになっていったのは大きな驚きだった。Kubernetesコミュニティーが多くの場所に与える影響を目にするのも素晴らしいことだ。

――VMwareはKubernetesコミュニティーに大きく貢献していますが、Kubernetesのコードを改善するために取っている一般的なアプローチはどのようなものですか。

ベダ氏:オープンソースは全関係者にとって有用なポジティブサムゲームであり、オープンソースコミュニティーの良いメンバーでありたいとVMwareは考えている。その一環として、オープンソースとしてKubernetesの一部になるものと企業にとっての付加価値について、VMwareとコミュニティーの双方にとって適切なバランスを探っている。

 オープンソースコミュニティーとのやりとりを成功に導くには、コミュニティーが目標とすること、コミュニティーから得るもの、コミュニティーに貢献するものについて正直になることだ。VMwareはコミュニティーから得るものと同じぐらいの貢献をしたいと考えている。コミュニティーやKubernetesから一方的に価値を引き出そうとは考えていない。コミュニティーを進化させ、長期にわたって健全性を確保したいと考えている。

――顧客を自社のプラットフォームにロックインしていると非難されているKubernetesのディストリビューターについてどう考えますか。

ベダ氏:VMwareはサイロを生み出すのではなく、Kubernetes環境への橋渡しになりたいと考えている。

 VMwareは、ロックインによって顧客をKubernetesの大きなエコシステムから分離したいとは考えていない。顧客がKubernetesに引き付けられる理由の一つは、革新的なオープンソースプロジェクトの豊富なツールや拡張を使って固有の問題を解決できるからだ。

 互換性と移植性に関しては幾つかの見方がある。完璧な移植性を求めると独自性のない最小公倍数になってしまう。一般に、顧客は利用するプラットフォーム独自の機能や品質を活用したいと考える。

 VMwareはKubernetesに付加価値を加える際、オープンソースではなく「VMware Tanzu」(Kubernetes関連製品群)固有の部分であるものを明確にしているので、顧客は情報に基づいて選択できる。Tanzu固有の部分は純粋なオープンソースからは外れるので完全な移植性は失われるが、KubernetesとTanzuの目標は、その切り替えコストをできる限り削減することでもある。

 移植性にはスキルセットという観点もある。Kubernetesの仕組みを理解しているエンジニアがそれを基盤に自動化インフラやプラットフォームを構築するとする。そのエンジニアのスキルとツールを可能な限り環境間で移植可能にするにはどうすればよいだろうか。エンジニアによる切り替えコストの削減と稼働開始までの時間を短縮できれば顧客にとっては大きな節約になる。

――Tanzuの価値の一つはVMwareの顧客が抱えるアプリケーション開発ニーズに対応することだと思います。VMwareを利用していない顧客も視野に入れていますか。

ベダ氏:それはいい質問だ。VMwareの目標は顧客に価値を提供することだ。そしてまだ顧客にはなっていない企業とも関係を構築し、価値を提供したいと考えている。

 VMwareはほぼ全ての大手企業と関係を築いている。だが、その関係性がその企業の一部にとどまっている場合もある。Tanzuを使ってVMwareがやろうとしていること、またKubernetesや「VMware vSphere」のAPIなどを使ってやろうとしていることの大部分は、VMwareの顧客のより大きな部門、例えばアプリケーションチームに対応する新製品を作ることだ。そのために、VMwareはvSphereとアプリケーションチームを結び付けたり、vSphereを構想に入れていないアプリケーションチームにも価値を提供したりする。

後編では、ジョー・ベダ氏が考えるエコシステムの理想型を紹介する。

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