最新のツールを活用すれば業務の自動化は実現する。だがそれが業務の改善や効率化に直結するとは限らない。自動化しても業務が改善しないのは、重要なステップを見落としたからだ。
プログラミング言語を知らなくても、最新のツールがあれば自社のプロセスを自動化できる。この自動化を業務の最前線に委ねるのは優れた考え方だ。業務を自動化するのに適しているのは、その業務を担う部門や人々だからだ。だが、業務を自動化する前に一つ重要なステップがある。このステップは見過ごされることが多い。それは、業務の流れを最適化することだ。本稿は、それが何を意味するかを検討する。
VSM(Value Stream Mapping)という手法は製造業をルーツとし、トヨタ生産方式(1993年)で用いられていた。製造業では、VSMは工場のある部分から次の部分への「物と情報の流れ図」として使われる。
この手法はITコミュニティーに注目され、「仕事と価値の流れ図」として使われるようになった。ITコミュニティーは、製造業の「物」に当たるものとしてサポートチケット、要求、開発中のコード、その他の知的人工物を当てはめる。ITIL 4やIT4IT、DevOpsなど、ITの複数のフレームワークやアプローチでVSMの応用が話題になっている。
VSMは、仕事が特定された時点から完了するまでを追跡できる。仕事の関係者全員が協力して作業する環境を通じて、他のチームや部門の進捗(しんちょく)を適切に把握し、誰かが業務の一部(サポートチケット、要求、タスクなど)を始めるまでの待ち時間や、誰かがそれを完了するまでの時間を見極めることができる。業務が完了するのにかかる時間は、関係するリンクの中で最も速度の遅い作業によって決まる。VSMはそれも特定できる。
F1のピットクルーの例を考えてみよう。ピットに入ったレーシングカーは、ピットクルーがタイヤ交換や燃料補給などに奔走する間待機する。タイヤ交換に2秒、燃料補給に5秒かかるとすると、レーシングカーがピットを飛び出すまでにどのぐらいの時間が必要だろうか。
業務プロセス全体の速度を決めるのは、そのプロセスの各ステップの時間だ。例えば買掛金業務では、請求書を受け取ったらそれを発注書と照合する。受領した商品やサービスを確認し、支払い条件をチェックする。請求書への支払いについて財務管理者の承認を受け、支払いスケジュールを設定する。そして会計システムを更新して、最後にその他の書類作成を完了する。
この例で、支払いの承認を得るのに2週間かかるが、その他の残りのステップは1日未満で終わるとしよう(この例への不信感は取りあえず横に置いてほしい)。そう、プロセス全体を完了するには2週間必要だ。支払いの承認以外のステップを自動化しても、必要な総時間に与える影響はかなり少ない。
自動化は効率、品質、速度に大きなメリットをもたらす可能性がある。だが、自動化がボトルネックや制約部分に対処していなければその可能性は低くなる。成果を高めるために自動化を利用する手法は幾つかある。ただし多くの場合、本当の意味での「エンド・ツー・エンド」のVSMが必要になる。そのためには複数の部門が連携し、互いに批評し合うことが望ましい。
ITIL 4フレームワークは、こうした対話や活動の指針として役立つ一連の原則を提供している。その原則は次の通りだ(順不同)。
自動化への投資を考えている企業に注意を促したい点がもう一つある。それは人間の認知力を置き換え、感情移入を取り去ることが自動化だということだ。あなたも小包の再配達を依頼したことがあるだろう。再配達のスケジュールは、Webサイトで利用可能なシステムの制約内でのみ機能する。再配達を依頼する理由が病気の子どもの世話をするためであろうと、30分外出するためであろうと、このシステムは依頼者の事情を知ることもないし、気にすることもない。ただ設計通りに正確に機能する。
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