メールセキュリティサービスの選び方【前編】
運用やアーカイブまで考慮したメールセキュリティの選定
メールセキュリティサービス選びで妥協してはならない。フィッシングメールの検知率はもとより、大量のユーザーの移行やアーカイブなども考慮されたサービスであれば運用も効率化する。
メールセキュリティの特効薬はない。
メールセキュリティサービス選びで最も重要なことの一つは、セキュリティを確保する対象だ。Vade Secureのエイドリアン・ジェンドル氏(チーフソリューションアーキテクト)は次のように話す。「『Google Workspace』で機能するものが『Microsoft 365』のメールにも適しているとは限らない」
「高い技術を持つハッカーはメールセキュリティシステムをリバースエンジニアリングすることが知られている。ここで言うリバースエンジニアリングとは、システムの弱点を明らかにし、その弱点を利用して悪用する方法を開発することだ」
ジェンドル氏は、ゲートウェイまたはクラウドゲートウェイを検討している企業に警告する。ハッカーはMXレコードを検索してMicrosoft 365のメールを保護するゲートウェイを見つけ出し、使われている防御層に応じてサイバー攻撃を調整するという。
同氏は次のように話す。「多くの環境で、ハッカーはゲートウェイを迂回(うかい)してMicrosoft 365のパブリックエントリポイントに直接アクセスできる。そのようなケースにはAPIベースのサービスが適している。APIベースのサービスはハッカーから見えないMicrosoftのテナント内にあり、通常は脅威への自動対応のような追加機能を同時に提供する」
米国の児童福祉および問題行動の医療機関KVC Health Systemsは、長年にわたり多くのフィッシングメールやスピアフィッシングメールを目にしてきた。そしてMicrosoft 365に移行したタイミングでそうしたメール攻撃が急増した。
KVCのエリック・ナイバーグ氏(IT部門バイスプレジデント)は次のように話す。「医療データは高値で売れる。そうした情報の漏えいは組織の評判に悪影響を及ぼす」
「メールセキュリティ製品/サービスに満足したことは一度もない。80%の攻撃を阻止できるだけでは不十分だ」
AIベースのメールセキュリティ
KVCは、Vade SecureのAIベースのメールセキュリティシステム「Vade Secure for Microsoft 365」を本稿執筆の9カ月前に実装した。以来、KVCは深刻なメール攻撃を目にしていない。ナイバーグ氏は次のように話す。「ほぼ毎年、1通から2通のフィッシング攻撃を受けてきた。Vade Secure for Microsoft 365を稼働させてから、そのようなメールを目にしていない。Vade Secure for Microsoft 365はこれまで見てきたどのメールフィルターより改善されている。Microsoftが見逃したメールもキャッチしてくれる」
英ロンドンの広告代理店Four Communicationsも、メールセキュリティに関するさまざまな問題に直面している。こうした問題を解決するため、同社はMimecastのメールセキュリティとアーカイブのサービスを導入した。
Four Communicationsのジェイク・フレイザー氏(ITおよび運用部門ディレクター)は次のように話す。「当社は近年、多くの新企業を買収している。買収するたびに新しい従業員が入ってくるためITの複雑性が増加する。新しく受け入れた従業員を当社のシステムに移行させるに当たって、買収前のメールシステムのデータを一切失うことなく移動する必要がある。移行前のメールシステムが何であろうと問題になってはならない」
Mimecastのメールセキュリティとアーカイブのサービスによって、従来は数カ月かかっていた新しい従業員の移行を数週間で完了できるようになったとフレイザー氏は言う。
「Mimecastのサービスで過去のメールは全てアーカイブされる。メールは以前と同じフォルダ構造に整理される。移行に苦痛を感じることもなく、データが失われる恐れもない」(フレイザー氏)
適切なソリューションの選択
最も効果的なメールセキュリティプロバイダーを見つけるには、幾つか重要な要素を考慮しなければならない。サリー大学のアンドリュー・ロゴイスキ氏(サイバーコンサルタントおよびイノベーションチーム)は次のように話す。「サービスの選択に当たっては、メール内の情報の機密性、整合性、可用性を確保するアーカイブと復旧、署名、暗号化などの機能を確認する必要がある」
選択時に考慮すべきもう一つの要素は“データの保存場所”だとロゴイスキ氏は話す。データ保護、プライバシー、暗号化に関する法的問題から、メールを保持して処理する地理的な位置を検討する必要がある。
「例えば、ドイツのようにプライバシーとデータ保護に厳格な法律がある国でメールサービスをホストすることを意図的に選択できる。2018年にGDPR(一般データ保護規則)が最初に施行されたとき、データの所在地が大きな話題になった」(ロゴイスキ氏)
「英国は既にEUを離脱している。データ保護の法律が変わり、EUのGDPRとは差が出る可能性もある。EU諸国と相互運用するには、データ保護を等しく行うことを実証しなければならない。EUと米国間のプライバシーシールドの枠組みは非常に複雑なプロセスで、今でも混乱を招いている。英国はこの枠組みの独自のバージョンを作成しなければならないかもしれない」
後編では、今すぐ着手すべき新たな脅威と、利用するメールセキュリティプロバイダーに不可欠な要素を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly日本語版
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
4
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
5
AI導入が失敗する“真犯人”は現場のマニュアル 7割が陥る「標準化」のわな
-
6
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
7
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
8
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
9
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
10
ライオンが脱レガシーシステムのパートナーに「Google Cloud」を採用した理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー