VMとコンテナはどちらもアプリケーションを実行するためのインフラとして機能するが、メリットとデメリットは異なる。技術の仕組みとサーバ効率、セキュリティの観点から両者の違いを説明する。
アプリケーションのインフラに仮想マシン(VM)とコンテナのどちらを使用するか検討するときは、2つの技術のメリットとリスクを体系的に評価するとよい。本稿は、これらの技術の仕組みと特徴、比較検討のポイントを説明する。
VMは物理サーバを仮想的に分割し、複数のサーバにしたものだ。各VMはOSやアプリケーションを実行するための専用のサーバとなる。サーバの仮想化には一般的にはハイパーバイザーを用いる。ハードウェアの共有方法はハイパーバイザーの機能によって異なるため、適切なハイパーバイザーを選ぶことが重要になる。
コンテナをVMの一種だと考える人もいる。その考えは正しいとは言えない。コンテナは、コンテナをホストできる「Linux」といったOSで稼働する、アプリケーションの実行単位だ。
VMとコンテナはアプリケーションを動かすときのサーバ効率やアプリケーション分離、セキュリティなどの点で異なる特性を持つ。以下で相違点を説明する。
各VMは個別のOSと、その他のミドルウェア、アプリケーションを実行する。1台の物理サーバで複数のVMを実行する際は、その分のリソースを消費することになる。コンテナは基本的にOSを共有する。そのためVMと比べて消費リソースを抑えやすく、場合によってはVMの2~6倍に相当する数のコンテナを1台の物理サーバで実行できることがある。
VMで稼働するアプリケーションは、同じ物理サーバで実行している他のアプリケーションから分離される。この仕組みにより「サイバー攻撃者がVMに侵入し、そのVMを踏み台にして同じ物理サーバで稼働する他のVMをハッキングする」という事態が起きる可能性を抑えている。
コンテナと比べると、VMで稼働するアプリケーションは、物理サーバでリソースの競合相手となる他のアプリケーションの影響を受けにくい。コンテナは物理サーバのメモリやCPUでリソースの競合が発生すると、処理速度といったパフォーマンス低下につながりやすい。
VMのセキュリティ手法ではアプリケーションとゲストOS、ハイパーバイザーそれぞれの間に境界を設けることができる。このことを考慮すると、事業にとって重要なアプリケーションのインフラとしては、VMに軍配が上がる可能性が高い。ただし他の考慮事項によってはコンテナが適している場合もある。
後編はインフラ管理の観点からVMとコンテナを比較する。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
さまざまなメリットをもたらす仮想化環境だが、2023年にVMwareが買収されたことで、ユーザー企業は難しい判断を強いられている。そこで、コストメリットも大きい、仮想化環境のモダナイゼーションの方法について解説する。
データ分析・利活用のニーズが高まる中、アクションのベースとなるデータも膨大な容量となり、今後も増え続けていく見通しだ。そうなると、各企業はデータ利活用基盤として、信頼性や拡張性の高いストレージを求めるようになるだろう。
OSの移行には「データ移行」が付き物だが、その業務負荷の高さに悩まされているIT管理者は多いだろう。Windows 11への移行を進める前に知っておきたい、「データレスPC」の有効性や、導入で得られる“プラスα”のメリットを解説する。
技術や市場の変化が激しい自動車業界にあって、長年、数多くの自動車メーカーに部品を供給してきた東海理化。同社は変化に柔軟に対応するためのDX推進に当たって、これまで運用してきたレガシー仮想環境からの移行を断行する。
ハイブリッド/マルチクラウドへ移行する企業のIT環境だが、クラウド同士の連携は複雑な上に、運用も非効率になりがちだ。そこで、この問題を解消するためのハイブリッド/マルチクラウドプラットフォームを紹介する。
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...