ありがちな「費用惜しんでDR計画は後回し」が高くつくのはなぜ?DR計画は「不要なコスト」ではない【前編】

さまざまな「危機」が発生する時代、災害復旧(DR)計画でビジネスへの負の影響を最小限に抑えるのは企業にとって急務だ。そのネックになる「お金」の問題はどう解決すべきなのか。

2021年10月29日 08時00分 公開
[Stuart BurnsTechTarget]

 実際に起こるかどうか分からない災害に備えるシステムに「多額の予算を使いたくない」。そう考え、災害復旧(DR)計画への投資に消極的な企業は少なくない。しかし災害が発生してシステムが使えなくなったとき、きちんとDR計画を立てている企業こそビジネスへの影響を最小限に抑えられる。

インフラ全体の障害という悪夢 震災や攻撃にどう備える?

 企業はDR計画を立て必要なツールを用意することを怠ると、災害時にシステムが使えなくなる時間(ダウンタイム)が長くなる。長引くシステム停止によって業務が止まり、ビジネスに影響が出て売り上げが減少――こうした悪循環に陥る。ダウンタイムが長くなればなるほど、損失がDR計画のコストを上回る可能性が高い。そのため、企業は予算を惜しまず、積極的にDR計画に取り組むべきだ。

 DR計画の確立と実施で防げるシステム障害の種類は大きく2つある。「インフラの障害」と「局地的な障害」だ。インフラ障害とは、例えば地震によってデータセンターが崩壊したり、サーバやストレージといったIT機器が破損したりすることを指す。一方、局地的な障害は“ユーザーに近いところ”で、端末や業務アプリケーションが利用不可能になることだ。

 企業にとって深刻な問題になるのは、前者のインフラの障害だ。例えばオフィスの火事によってPCが壊れても、簡単に置き換えることができる。しかしデータセンターが被害を受けてインフラ全体に障害が及べば、復旧にはお金も時間もかかる。インフラの障害は、特に大規模なシステムを有する企業にとって最悪のシナリオだ。

 地域ごとの地震の発生頻度といった条件にもよるが、インフラ全体が失われるリスクは比較的低い。とはいえ、いつ何が起こるかが分からないので、リスクがゼロというわけではない。最近はランサムウェア(身代金要求型マルウェア)をはじめとしたサイバー攻撃が急増している。企業は「災害」をより広い意味で捉え、さまざまな事態に備えなければならない。

影響は社内だけではない サービス提供ができなくなるリスク

 災害時にシステムが停止すれば、企業のほぼ全ての部署に影響が及ぶ恐れがある。企業によっては、影響が社外に及ぶ場合もある。システムを使ってサービスを提供する企業は、顧客満足度や訴訟といったさまざまな面でシステム停止による損失を被る可能性がある。だからこそDR計画を立て、いち早くシステムを復旧させることが重要だ。

 DR計画に取り組む際に大切なのは、システム障害のコストを数値化することだ。その際に考慮すべき項目として、復旧コストやダウンタイムの影響、年間の障害発生頻度などがある。企業は潜在的なリスクを洗い出すことで、その影響やコストを特定できる。リスク評価をすれば、どのような対策を優先的に講じるべきかが分かり、DR計画の道筋が見えてくる。例えば頻繁に停電が発生する地域にデータセンターがあれば、「まずはデータセンター移設を優先する」といった具合だ。

 「起きそうにない危機にコストをかけたくない」と考えるのは当然だ。だからこそ、リスク評価によって起きる可能性が高いシナリオを把握し、それに備えるための予算を確保することが重要だ。DR計画の確立と実施は企業の「回復力」を高め、経営層やIT部門の安眠につながる。


 後編は、「お金がかかり過ぎない」DR計画のこつを紹介する。

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