新型コロナウイルス感染症の影響で企業のデジタル化が進み、推進役のCIOは脚光を浴びている。新たな需要を満たしながら会社を率いていくために、CIOに求められているスキルは。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響を受け、企業は業務をデジタル化する取り組みを加速させ、混乱に対処しながら、変化する顧客のニーズを満たすために奔走している。その結果、最高情報責任者(CIO)をはじめとするIT部門のリーダーが表舞台に引っ張り出され、その職務の重要性が脚光を浴びた。デジタルスキル向上のニーズやクラウドサービスの導入が続く限り、ITリーダーは注目を集め続けると考えられる。
「自社のビジネステクノロジー戦略を新たな方法で導く機会がCIOに訪れている」とコンサルティング会社PricewaterhouseCoopers(PwC)で、米国のクラウドおよびデジタルリーダーを務めるジェニー・ケーラー氏は話す。だが、この機会にはさまざまな課題が伴う。
本稿は、クラウドサービスの導入を契機とした「CIOが戦略的指導力を発揮する機会が訪れている理由」と「その機会を逃さないためのヒント」をケーラー氏に聞く。
―― 現在CIOに訪れている「戦略的指導力を発揮する機会」とはどのようなものでしょうか
ケーラー氏 当社が実施した調査で、重要なテーマを幾つか耳にしている。
CIOをはじめとする経営幹部がクラウドサービスの導入に本格的に取り組んでいる。「イノベーションを起こすため」「優れた意思決定を目的としたデータ収集や分析の実行のため」「より密接に顧客と関わるため」など目的はさまざまだ。
「US Cloud Business Survey」(注1)によれば、回答者の約半数が「自社のクラウド投資に価値を見いだせていない」と答えていた。逆に言えば、クラウド投資から得られる価値をもっと高める余地があると考えることができる。
※注1:PwCが2021年5月に実施した調査。調査対象はCIO、CTO(最高技術責任者)、CISO(最高情報セキュリティ責任者)を含む米国の経営幹部524人。
PwCの調査「Next in Work」(注2)は、「COVID-19のパンデミックが労働者のコミュニティー全体にもたらすプレッシャー」「将来の不確実性」「将来を形作るあらゆるものを実現する上での、ITの重要性」という要素に焦点を当てた。
※注2:PwCが2021年8月に実施した調査。調査対象は、CIO、CFO(最高財務責任者)、CISO(最高情報セキュリティ責任者)を含む米国の経営幹部。
CIOにとって、こうしたテーマをしっかりと考えることは重要だ。CIOはこれらのテーマに取り組むことで、自社の未来に対して非常に大きな発言力を持ち、ビジネスの成果や見込みを現実のものにし、全ての従業員にさまざまな方法で影響を与える機会を手にする可能性がある。
―― ITリーダーがCIOとして戦略的指導力を発揮する方法を教えてください。
ケーラー氏 技術革新は極めて速く、クラウドの可能性は非常に高い。全てのCIOは、自社のデジタル化の取り組みに現実的な方法で勢いを与えられる特別な立場にいる。「企業に勢いを与える取り組みをどのように実施するか」「取り組みを受け入れる文化が企業にあるかどうか」――企業に勢いを与えるための方法は、こうしたことを前提にCIOが悪戦苦闘しながら手探りで選ぶしかない。
企業は、顧客にとって体験価値が高く、理解しやすく、企業への親密さを感じられる方法で、顧客とのつながりを作る必要がある。一方でCIOには業務上の制約がある。大きな価値をもたらすよう株主からプレッシャーも受けている。そのためCIOは、中核となる事業や自社を差異化する要素に目を向ける必要がある。付加価値が低い事業、他社との差別化につながらない事業は、コスト効率の高い方法で進めるべきだ。
こうした取り組みを、ITや新たな技術を用いずに実行する方法などあるのだろうか。取り組みを実現する技術要素を理解しないままでは、最高経営責任者(CEO)や経営幹部同士が話し合う場面と同じようにCIOがビジネス戦略を語ることはできない。
だから今こそ、CIOが威厳を持って話し合いに参加し、事業の道筋を示す提唱者になる絶好の機会なのだ。
後編は「チェンジマネジメント(企業の業務変革を効率的に推進するマネジメント手法)と従業員のデジタルスキル向上に関してCIOができること」をケーラー氏に聞く。
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