色を使ってデータを高速に読み取る「プラズモニックストレージ」は、データが増加する時代の“解”になるのか。この新種の光学ストレージの仕組みと利点を解説する。
今後の増加するデータを活用するには、常識にとらわれないストレージ技術が必要だ。パデュー大学(Purdue University)の研究チームは、データをより高密度で保存し、より高速に読み出すストレージ技術を開発した。「表面プラズモン」(金属表面における自由電子の集団振動)を使う光学ストレージだ。本稿はこれを「プラズモニックストレージ」として扱う。
金属ナノ粒子と光の相互作用によって生じる表面プラズモンを制御する技術は、「プラズモニクス」と呼ばれる。これを応用するプラズモニックストレージの仕組みは、従来の光学ストレージとは異なる。研究チームはなぜこの新技術に期待をかけるのか。
プラズモニックストレージは、金属ナノ粒子によるナノ構造体と、メタサーフェスを使った表面プラズモンによってカラー(色)を生成し、それをデータ保存に応用する。メタサーフェスとは、自然界には存在しない挙動をする人工物質であるメタマテリアルを2次元化したものだ。
光学特性を制御するためのナノ構造体が、プラズモニクスによるデータ保存において重要な役割を果たす。ナノ構造体は光を反射する。光の当たる位置が変わると反射する色のスペクトル(波長の強度分布)が変化する。その異なる色をバイナリデータに変換することで、ストレージへの応用が可能になる。
研究チームは、材料にアルミニウムを使い、表面レリーフ(薄膜上の凹凸構造)を施したメタサーフェスを使用している。このメタサーフェスは、複合構造の共振器を採用する他の材料に比べて、より幅広い色調の変化と、より高い空間分解能(近接した2点を識別する能力)を実現する。研究者によると、アルミニウムのメタサーフェスは複雑な構造を採用しなくても反射防止を実現でき、より薄くできる。
ストレージ構造は、16ナノピクセルで構成するフレーム(データの構成単位)をベースにする。各ナノピクセルは、4つのナノアンテナ(ユニットセルとも)を持つ。ナノアンテナの向きはそれぞれ固有の色を持っている。イメージングシステムがその色を読み取り、それをバイナリデータに変換する。
パデュー大学のプロトタイプ(試作品)は、ナノピクセル当たり3bitのデータを保存し、18.3Gbpsの読み出し速度を達成した。研究チームによれば、1つのナノピクセルに4bitのデータを格納することで、光学ストレージの一種である「Blu-ray Disc」の最先端の仕様よりも40%ほど多くのデータを保存し、読み取りは191倍高速になるという。
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