光学ストレージの一種である「ホログラフィックデータストレージ」(HDS)。過去に失敗に終わった取り組みもあるが、この技術が死んだわけではない。HDSがこれから革新を起こす可能性を深掘りする。
ホログラフィー(立体像を記録する技術)によってデータを記録する「ホログラフィックデータストレージ」(HDS)は、かつては光学ストレージの次世代候補に名を連ねていた。青紫色レーザーを使った光ディスクである「Blu-ray Disc」を上回る記録密度と、データへのアクセス速度が期待されていた。
さまざまな研究チームがHDSの開発に挑んできたが、プロトタイプはできてもそれ以上の芳しい成果につながることはなかった。ただし、その努力は無駄ではない。Microsoftの研究プロジェクト「Project HSD: Holographic Storage Device for the Cloud」は、クラウドサービスでの実用化を目指し、HDSに新たな息吹を注ぎ込んでいる。この研究開発は、Microsoftの研究部隊であるMicrosoft Researchとクラウドサービス「Microsoft Azure」のチームの共同研究だ。
HDSは光の屈折率を使用して立体的にデータを記録する。そのため3D(3次元)ストレージとも呼ばれる。データの読み取りと書き込みにはレーザーを使う。この点は他の光学ストレージと似ている。CDやDVD、HDDなどは記録媒体の表面にしかデータを記録できない。つまり2D(2次元)の記録しかできない。HDSは記録層を立体的に使用することで、同じスペースにより多くのデータを記録できる。同時にデータの書き込みと読み取りの速度も向上する。
1960年初頭に初めてHDSを提案したのは、インスタントカメラの製造企業だったPolaroidの研究者ピーター・J・バン・ヘーデン氏だ。この提案はレーザーの発明後間もなくのことだった。
2000年代初頭に、業界と学会双方の研究チームがHDSの将来性を実証し、研究開発における大きな一歩を踏み出した。その卓越した成果は、Polaroidから分社したAprilisと、通信技術の研究機関であるベル研究所(Bell Laboratories)から独立したInPhase Technologiesがもたらしたものだ。両社はHDSの市場投入を目指した。だが商業的な成功には至らなかった。その後、Aprilisは化学メーカーのDow Corningに買収され、InPhase Technologiesは破産を申告した。
その他にもHDSに関する取り組みはあったが、大きな変革を起こすことはなかった。そうした試みの大半はCDやDVDに似た円盤状の記録媒体を使用し、WORM(Write Once Read Many:書き込み1回、読み込み複数回)の操作に重点を置いていた。こうした特徴を持つHDSは他のストレージと競合し、競合のストレージは進化を続けた。
例えばHDDはデータの読み書き速度が高速化し、記録密度も向上した。SSDは容量単価が下がり、耐久性が改善した。ただし市場は依然として革新的なストレージを必要としている。Microsoftによると、2024年までに全世界で毎年125Z(ゼタ)Bのデータが生まれるようになる。企業やクラウドサービスベンダーはそのデータを保存しつつ、データのアクセス速度や可用性、耐久性などの重要な要件も同時に満たす方法を考え出す必要がある。
将来のデータのニーズを満たすには、既存のストレージ技術では不十分だ。HDDはその機械的な構造からさまざまな制約がある。SSDは大容量で使用するには容量単価が比較的高価で、企業が必要とする耐久性を常に提供できるとも限らない。
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