英国の情報セキュリティ機関は、ランサムウェア攻撃を受けた企業に身代金の支払いを推奨しないよう、弁護士の協力を得ることに注力している。その背景に何があるのか。
ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)集団への身代金支払いを、クライアントの企業に推奨しないで――。英国の政府機関である国家サイバーセキュリティセンター(NCSC:National Cyber Security Centre)と情報コミッショナー事務局(ICO:Information Commissioner's Office)は共同で、弁護士にこう要請した。
弁護士団体である英国法曹協会(Law Society)に対してNCSCとICOは書簡を送り、身代金支払いの撲滅に協力を求めた。「身代金を支払えばデータを取り戻せる」といった誤った認識に基づき、弁護士が企業に助言しているとNCSCとICOはみている。
NCSCとICOは書簡で、ランサムウェア犯罪者に身代金を支払ってもシステムの復元やデータの復号が保証されないことを強調。「身代金を支払えば、ICOによる処罰が軽減する」という、一部企業の認識が誤っていることも明記した。書簡は法曹協会に、会員弁護士に対して正しい認識を周知するよう要請している。
「ランサムウェア攻撃は英国の企業にとって大きな脅威だ。残念ながら、攻撃者に身代金を支払う企業が最近増加している」と、NCSCのCEOリンディ・キャメロン氏は話す。「身代金の支払いが新たな攻撃を招く可能性がある」とキャメロン氏は主張。この悪循環を変えるには、身代金の支払いを被害企業に推奨しないことが重要だと指摘する。そのためには、法曹界が大きな役割を果たし、関係者の団結が欠かせないということだ。
「英国の企業がこの5年間にサイバー犯罪で受けた損害は数十億ポンドに上る」と、NCSC情報保護専門家のジョン・エドワーズ氏は説明する。エドワーズ氏によると、攻撃に対抗するための鍵になるのは、定期的にバックアップを実施することと、セキュリティ意識を向上させるための従業員教育だ。「企業は身代金を支払うよりも、(攻撃を受ける前に)このような取り組みに投資すべきだ」とエドワーズ氏は述べる。
後編は、身代金の支払いを巡るセキュリティ専門家の見解を紹介する。
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