JPMorganはサイバー攻撃の被害を巡り、顧客からの訴訟に直面している。背景には、金融業界を狙うサイバー攻撃が根強く存在することと、それに苦戦する金融機関の実情がある。
取引先と金銭をやりとりする中で、不審な活動を検出できなかった金融機関の事例が相次いでいる。大手銀行JPMorgan Chase Bankもこのような金融機関の一つだ。同行はサイバー攻撃に伴う被害を巡り、顧客からの訴訟に直面している。
被告はサングラスのブランド「Ray-Ban」を手掛ける眼鏡メーカー大手Essilor Internationalと、その製造子会社Essilor Manufacturing(Thailand)だ。2019年、JPMorgan Chase Bankの米ニューヨーク支店にEssilor Manufacturing(Thailand)が設けた口座で、サイバー攻撃の被害が発覚した。この攻撃により、合計約2億7200万ドルの損失が発生した。
Essilor Internationalは、不正の疑いがある取引についてJP Morgan Chase Bankから通知を受けていなかった。このことが商事契約に関するニューヨーク州の法律に違反するという理由で、Essilor InternationalはJPMorgan Chase Bankを提訴した。
2022年4月、Essilor Internationalはニューヨークの連邦裁判所に訴状を提出した。それによると、攻撃によって同社とJPMorgan Chase Bankの取引金額は急増していた上、資金がペーパーカンパニーに送金されていた。このペーパーカンパニーは、違法になる可能性がある管轄区域に存在する。Essilor Internationalは訴状の中で、「送金金額は全て端数のないものだったが、当社はそれまで1ドル未満の端数がない送金はほとんど実施してこなかった」と説明する。
訴状を受けてJPMorgan Chase Bankは、「セキュリティ手順に従い、当行は各送金で2度の承認を得た。それを根拠にEssilor Internationalは取引を承認した」と主張。米国地方裁判所の判事はJPMorgan Chase Bankの主張を退けた。判事はJPMorgan Chaseに対するEssilor Internationalの契約違反の申し立ては却下したものの、「Essilor Internationalはこの申し立てを再訴可能だ」と説明した。
金融機関はセキュリティ対策を重視してIT分野に投資している。JPMorgan Chase Bankも同様だ。同行のデジタル戦略、フィンテック、マーケットイノベーション責任者を務めるジブ・ガフニ氏によると、同行はIT分野に年間約120億ドルを投資している。
しかし犯罪者は防御をくぐり抜けているのが現状だ。マネーロンダリング(資金洗浄)の検出と防止を怠ったという理由で、規制当局が世界中の金融機関に科した罰金は、膨大な額となっている。B2B(企業間取引)ビジネスに関する情報提供サービス会社Kyckrは、2022年に調査レポート「2020 AML Bank Fines Report」を発表した。それによると、2020年に世界で28件の金融機関がマネーロンダリング対策(AML)関連の違反行為で罰金を科された。その総額は、約26億ポンドだった。
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