老舗企業が事業変革に取り組む事例は続々と登場しているものの、古い慣習が成長を阻害する場面がある。企業が注意しなければならない「90%症候群」「うそつきクラブ」の問題とは。
2022年11月上旬に調査会社Gartnerが主催したカンファレンス「Gartner IT Symposium/Xpo 2022」に、マサチューセッツ工科大学(MIT)のMIT Initiative on the Digital Economyの共同設立者兼共同ディレクターを務めるアンドリュー・マカフィー氏が登壇した。同氏は自著『The Geek Way』で考察した「老舗企業が大手IT企業から学べるもの」をテーマにして、企業のデジタルビジネスを阻害しがちな悪習を指摘した。
「自社のビジネスはデジタルビジネスに変わった」と主張するCEOは後を絶たない。だが自動車メーカーVolkswagenの前CEOヘルベルト・ディース氏が経験した栄枯盛衰を見れば、デジタルビジネスへの転換は想像よりはるかに難しいことが見て取れる。Volkswagenは、ソフトウェアで制御する電気自動車(EV)の開発に社運を賭けている。
マカフィー氏は、EVメーカーTeslaを例に挙げ、企業がデジタルビジネスの成功には、産業革命の時代から続いてきたのとは異なる経営手法が必要だと指摘する。主要上場企業を見ると、IT企業が他業界の企業を大きく引き離している。マカフィー氏はこの状況を「技術オタクが企業を経営する方法を見つけたのだ」と説明する。
従来型の企業が直面する問題の一つに「90%症候群」がある。これは並行する複数の開発工程を含むプロジェクトが当初のスケジュールの約90%に達した段階で、修正が必要な点が見つかるなどの理由によって失速する現象を指す。90%症候群は「もっともらしい否認」という人間の本質に起因して発生する、とマカフィー氏は指摘。もっともらしい否認とは、何らかの問題に自分が明確に関与した証拠がないことを理由に責任逃れをすることだ。
テキサスA&M大学土木工学科教授デビッド・フォード氏らが、2003年に発表した論文「The Liar’s Club: Concealing Rework in Concurrent Development」には、90%症候群を表す象徴的な事例がある。ある企業のプロジェクトチームは「うそつきクラブ」と呼ばれ、ミスの隠蔽(いんぺい)が慣行になっていた。週次会議でチームメンバー全員が、プロジェクトのスケジュール遅延を招く手戻りが発生していることを知りつつ、それを隠すからだ。チームメンバーは自分以外の誰かが最初に問題を認めざるを得ない状況になり、それによってスケジュールが引き直しになり、自分はその責任から逃れることを期待していた。
後編は、企業がプロジェクトを成功させるには何を変えなければならないのかを解説する。
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