ユーザー企業が直面するメインフレーム専門の人材不足は、ITサービスベンダーにとって商機だ。ただし人材確保の難しさはベンダーにとっても変わらない。窮地から生まれた、人材確保の知恵を紹介する。
クラウドサービスの活用は、企業にとってデジタルトランスフォーメーション(DX)の柱になっている。とはいえメインフレームをはじめとした「レガシーシステム」の運用を継続している企業は、決して少なくない。
メインフレームの運用や管理に精通する人材のニーズは高い。しかし企業では、従業員の退職によってメインフレーム専門人材の不足が深刻化しつつある。ITサービスベンダーはそれを受け、ユーザー企業に対してメインフレームのモダナイゼーション(最新化)を支援するサービスを提案している。
適切に運用されていないメインフレームは、企業がDXを進める上での“足かせ”になりかねない。2020年にコンサルティング会社Accentureが発表した調査では、「レガシーのインフラとアプリケーションを運用している」ことがクラウドサービス導入を妨げる理由の上位3位に入った。
メインフレーム専門の人材が不足しているのは、ユーザー企業だけではない。メインフレーム関連サービスを手掛けるITサービスベンダーも同じ問題を抱えている。こうした企業は自社の従業員のトレーニングをはじめ、エキスパートの採用活動や自動化など、あらゆる手を打って人材やスキルを確保しようとしている。
その一社が、メインフレームのモダナイゼーションを手掛けるEnsonoだ。同社プレジデントのマーク・カプリ氏は「企業がメインフレームから離れようとする動きは1990年代末期に始まった」と述べる。カプリ氏によれば、運用や管理の人材さえ確保できれば、メインフレームは完璧なシステムだが、人材が足りなくなったため、企業はメインフレームから移行せざるを得なくなっている。
メインフレーム専門の人材不足の背景には、従業員の定年退職ラッシュがある。Ensonoの同業であるAdaptigent(旧GT Software)のプレジデント、アレックス・ヒューブライン氏は「ベテランがいなくなり、メインフレームの専門知識を失うことは企業に大きなリスクをもたらす」と話す。メインフレームを使ったアプリケーション運用には特殊なノウハウが必要となる。メインフレームのアプリケーションを利用できなくなることが、企業のビジネス活動に影響を及ぼす恐れがあるとヒューブライン氏はみる。
相変わらずメインフレームのニーズが続く中、深刻化する人材不足――。こうした状況下で、ITサービスベンダーにとって新たな商機が生まれている。Ensonoでは、ユーザー企業がメインフレームのモダナイゼーションを進めるためのサポート案件が活性化しているという。カプリ氏は保険業界のユーザー企業を例にして「メインフレームのソフトウェアを改善したい」「メインフレームの活用範囲を広げたい」といった要望があると語る。
Adaptigentは、メインフレームからクラウドサービスに移行する支援に注力している。ヒューブライン氏によると、企業は移行を決める際、「メインフレームの運用担当者が退職したときのリスク」と「クラウドサービス移行がビジネスに影響を及ぼすリスク」を天びんに掛けて判断しなければならない。Adaptigentはリスク軽減のために、段階的移行とハードウェアの抽象化を推奨している。抽象化層はバッファーとなり、アプリケーションをメインフレームの複雑さから解放するとヒューブライン氏は言う。
後編は、メインフレーム専門の人材を確保するためにITサービスベンダーが講じている対策を紹介する。
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