世界中で生成AIの利活用が進む中で、そのリスクを懸念し、規制に乗り出す政府の動きが見られる。一方で専門家は、近年の生成AI規制を巡る動向に疑問を呈する。AI規制のあるべき姿とは。
テキストや画像などを自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」をビジネスに活用する動きが世界中で進むと同時に、各国政府や規制当局は生成AIが引き起こし得るリスクを懸念し、規制の実施や検討に乗り出している。一方で専門家は、近年の生成AIを巡る規制の在り方に疑問を投げ掛けている。
米国の調査機関Hudson Instituteで上級研究員を務めるアーサー・ハーマン氏は、「生成AIに対する不安や懸念が広がっている」と話す。主要な懸念の一つが、データプライバシーに関するものだ。生成AIツールの基となる大規模言語モデル(LLM)のトレーニングに使用するデータの中には、欧州連合(EU)の「一般データ保護規則」(GDPR)や著作権の保護対象となるデータが含まれる可能性がある。
生成AIをはじめとする新興技術の弊害については、ユーザー企業自身が一定の責任を負うことになる。一方でハーマン氏は、「生成AIの利用を規制したり、罰則を定めたりするよりも、まずAIシステムの信頼性を強化する方が重要だ」と各国の規制当局に対して呼び掛ける。
2023年4月、米国商務省電気通信情報局(NTIA)は「責任あるAI」(公平性や透明性、安全性の確保を考慮したAI開発)に関する意見や情報の公募を開始した。情報技術・イノベーション財団(ITIF:Information Technology and Innovation Foundation)傘下組織のCenter for Data Innovationは、NTIAの公募に対する回答の中で、次のような懸念を表明している。「AI技術に対する警戒の大合唱は、イノベーションに寛容な米国の文化を脅かすものだ」
Center for Data Innovationで上級政策アナリストを務めるホーダン・オマール氏は、「生成AIに関する規制の目的は、企業のビジネスを行き詰らせることではない」と強調する。生成AIの利用自体を規制するのではなく、生成AIの監視やリスク軽減の取り組みを怠った企業に対して厳しい責任を課すべきだ、というのがオマール氏の主張だ。事前に調査を実施しても、潜在的な危険性を全て予測することはできない。
2023年4月、AIチャットbot(AI技術を活用したチャットbot)の「ChatGPT」を提供するAIベンダーOpenAIはブログエントリで、サービスの安全性に対する取り組みについて言及している。同社はLLM「GPT-4」のリスクやメリットの詳細把握に6カ月を費やしたが、それでもなおAIツールの安全性強化には時間が必要だという。「重要なのは、生成AIの開発や導入を世界規模で管理し、企業が安全性に関する取り組みの手抜きをしないよう対策することだ」というのが同社の意見だ。
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