MicrosoftのAIアシスタント「Copilot」がMicrosoft Fabricにも搭載される。具体的に何ができるのか。データ専門家にはどのような影響があるのか。
Microsoftは2023年11月、AI(人工知能)技術を組み込んだデータ分析ツール群「Microsoft Fabric」の一般提供を開始した。同社は同じタイミングで、Microsoft Fabric向けのAIチャットbot「Copilot in Microsoft Fabric」のプレビュー版の提供を発表した。
「Copilot」は、Microsoftが提供するNLP(自然言語処理)ツールだ。2021年に同社が発表したソースコード生成ツール「GitHub Copilot」以降、各種アプリケーションをサブスクリプション形式で利用できる「Microsoft 365」やコラボレーションツール「Microsoft Teams」など、Microsoftの各アプリケーション向けCopilotが登場した。
調査会社Ventana Researchのアナリストであるデビッド・メニンガー氏は、「データ分析ツールにNLPが組み込まれれば、組織内におけるデータ活用やデータ分析が進むだろう」と、NLPの重要性を強調する。
従来、NLPはモデルの訓練に使われるボキャブラリーが限定的だったり、使いこなすために専門知識やデータリテラシーが必要だったりと、綿密な分析に応用するのが難しい課題があった。しかしこの状況は、Microsoftが130億ドルを投資するAIベンダーOpenAIが、2022年にAIチャットbot「ChatGPT」を発表したことで変わった。OpenAIは生成AIの基となる大規模言語モデル(LLM)の大幅な進歩を実現した。
ChatGPTの他にも、Googleの「Bard」やMicrosoftの「Azure OpenAI」など、幅広いボキャブラリーを備えたLLMを利用できる生成AIツールが登場した。データ分析ツールベンダーはこれらのLLMを自社ツールに組み込むことで、業務プロセスやデータパイプライン(さまざまなデータソースからデータを取り込むシステム)作成を、自然言語によるやり取りで実施できるようにした。
Copilot in Microsoft Fabricではソースコード生成の他、データパイプラインやAIモデルなどの作成を自然言語で実施できる。メニンガー氏は、「ソースコードやデータリテラシーに関する知識がない従業員でも、データ活用が可能になる」と評価する。一般的に、組織でBIツールを活用できる従業員は全体の4分の1から3分の1とされるが、LLM技術の進化によりこの割合は変化する可能性がある。
生成AIと自然言語の組み合わせにより、データ活用人材が増えるだけではない。Copilot in Microsoft Fabricは、データエンジニアやデータサイエンティストなど、データ専門家の業務効率化にも役立つ。従来データパイプラインやデータモデルの作成時にソースコード記述に費やしていた時間をほぼ削減できる他、新たなインサイト(洞察)を素早く発見し、AI時代における競争を優位に進めるのに役立つ。
Microsoft以外にも、データ関連ツールを手掛けるさまざまなベンダーが、AIアシスタント機能やテキストベースのコード変換機能などのAI機能を発表している。例えばAmazon Web Services(AWS)やGoogleは、データ管理とデータ分析のポートフォリオに生成AI機能を追加している。InformaticaやTableau Softwareなどのデータツールベンダーも同様の動きを見せている。
次回は、Microsoftが発表したデータベース関連の新機能について紹介する。
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