AWSは2023年11月に発表したAIチャットbot「Amazon Q」を、BIサービス「Amazon QuickSight」をはじめとする複数サービスに組み込むことを計画している。Amazon Qはデータ分析のハードルをどう下げるのか。
データ分析は従来、専門家の領域だった。昨今は自然言語処理による対話機能を搭載するなど、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを一般ユーザーに利用しやすくする試みが部分的に成功を収めている。だがそうした試みにもかかわらず、企業内での分析ツールの利用は停滞気味だ。
AIチャットbot(AI技術を用いたチャットbot)は、より詳細なデータの掘り下げを可能にすることで、この停滞した状況を変える可能性を秘めている。実際、OpenAIが2022年11月に「ChatGPT」を公開してから1年間で、大手ITベンダーだけではなく、数々の分析ツールベンダーが生成AIを製品開発の中心に据えるようになった。Tableau Softwareは同社のBIツールに、親会社であるSalesforceの生成AI「Einstein GPT」を組み込んでいる。Qlik Technologiesはユーザー企業のデータ分析を生成AIで支援するAIサービス群「Qlik Staige」を発表した。
Amazon Web Services(AWS)も例外ではない。同社は2023年11月に開催したユーザーカンファレンス「AWS re:Invent 2023」の基調講演で、AI(人工知能)技術を活用したチャットbot「Amazon Q」を発表した。AWSはAmazon Qを、BI(ビジネスインテリジェンス)サービス「Amazon QuickSight」などの同社サービスに組み込むことを計画している。
調査会社Ventana Researchのアナリストであるデービッド・メニンガー氏は、「ChatGPTが登場する以前は、データ分析で自然言語はあまり使われていなかった」と話す。「Amazon Qの登場は、自然言語でのインタラクションが、データ分析をより身近なものにすることを後押しする」とメニンガー氏は期待を寄せる。
以下に、Amazon QによってAmazon QuickSightで利用可能になる機能を挙げる。
このうちメニンガー氏が重要だと考えるのは、データに質問を投げ掛けることができるStoriesだ。「ストーリーは重要であり、価値がある。説明とビジュアルを組み合わせることは重要であり、現状ほとんどの人はプレゼンテーションツールを使っている。それらをまとめるのに役立つツールは、非常に理にかなっている」と同氏は話す。
「Amazon Qは、データ分析に関連する生成AIの最も先進的な機能の一つだ」ともメニンガーは述べる。ただしAmazon Qが唯一ではなく、あくまでも「先陣を切っている」ものだというのが同氏の考えだ。「Amazon Qは最前線ではあるが、他のツールと必ずしも差異化できるものではない」と同氏は語る。具体的には、自然言語による問い合わせ、ストーリー構築、掘り下げるための質問といった機能は最前線のものであるという。
一方で調査会社Constellation Researchのアナリストであるダグ・ヘンシェン氏は、Amazon QuickSightにおけるAmazon Qの全体像は、「AWSがQuickSight Qに生成AIを導入することを2023年7月に発表した際の説明をはるかに超えている」と指摘する。Amazon Qは「データ、テキスト、ソースコードの文脈を理解するAIアシスタント」というアイデアに基づく。「エンドユーザーが自然言語で質問したときに、Amazon Qが、ニュアンス豊かで文脈に沿った答えを出す“唯一無二”のAIアシスタントになるはずだ」とヘンシェン氏は述べる。
次回は、Amazon Qの今後の見通しを紹介する。
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