AIアシスタント「Amazon Q」で“難解過ぎるBI”が簡単になる日は来るのかAWSの生成AI「Amazon Q」とは【中編】

AWSは2023年11月に発表したAIチャットbot「Amazon Q」を、BIサービス「Amazon QuickSight」をはじめとする複数サービスに組み込むことを計画している。Amazon Qはデータ分析のハードルをどう下げるのか。

2024年01月11日 05時00分 公開
[Eric AvidonTechTarget]

 データ分析は従来、専門家の領域だった。昨今は自然言語処理による対話機能を搭載するなど、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを一般ユーザーに利用しやすくする試みが部分的に成功を収めている。だがそうした試みにもかかわらず、企業内での分析ツールの利用は停滞気味だ。

 AIチャットbot(AI技術を用いたチャットbot)は、より詳細なデータの掘り下げを可能にすることで、この停滞した状況を変える可能性を秘めている。実際、OpenAIが2022年11月に「ChatGPT」を公開してから1年間で、大手ITベンダーだけではなく、数々の分析ツールベンダーが生成AIを製品開発の中心に据えるようになった。Tableau Softwareは同社のBIツールに、親会社であるSalesforceの生成AI「Einstein GPT」を組み込んでいる。Qlik Technologiesはユーザー企業のデータ分析を生成AIで支援するAIサービス群「Qlik Staige」を発表した。

 Amazon Web Services(AWS)も例外ではない。同社は2023年11月に開催したユーザーカンファレンス「AWS re:Invent 2023」の基調講演で、AI(人工知能)技術を活用したチャットbot「Amazon Q」を発表した。AWSはAmazon Qを、BI(ビジネスインテリジェンス)サービス「Amazon QuickSight」などの同社サービスに組み込むことを計画している。

データ分析がAmazon Qで加速する理由

 調査会社Ventana Researchのアナリストであるデービッド・メニンガー氏は、「ChatGPTが登場する以前は、データ分析で自然言語はあまり使われていなかった」と話す。「Amazon Qの登場は、自然言語でのインタラクションが、データ分析をより身近なものにすることを後押しする」とメニンガー氏は期待を寄せる。

 以下に、Amazon QによってAmazon QuickSightで利用可能になる機能を挙げる。

  • Data Q&A
    • ソースコードを記述することなく、ダッシュボードやレポートを出発点として、自然言語による会話形式でデータを掘り下げられる機能。
    • 例えばダッシュボードに地域の売上高が表示されている場合、エンドユーザーはその地域内の特定の都市における売上高をAmazon Qに尋ねて、より深く掘り下げることが可能だ。返答を得たら、その地域で何が起きているのかをさらに理解するために、別の質問を続けることができる。
  • Stories
    • データを他の人に説明するための物語を自動的に作成する機能。
    • 意思決定のための共同作業に活用できる。
  • Build for Me
    • ダッシュボードを開発する機能。
    • 開発者は、データを収集したりソースコードを書いたりせずに、自然言語を通じてダッシュボードを構築できる。
  • Executive Summaries
    • レポートやダッシュボード内の事実や統計を自動的にハイライトし、サマリーを作成する機能。

 このうちメニンガー氏が重要だと考えるのは、データに質問を投げ掛けることができるStoriesだ。「ストーリーは重要であり、価値がある。説明とビジュアルを組み合わせることは重要であり、現状ほとんどの人はプレゼンテーションツールを使っている。それらをまとめるのに役立つツールは、非常に理にかなっている」と同氏は話す。

 「Amazon Qは、データ分析に関連する生成AIの最も先進的な機能の一つだ」ともメニンガーは述べる。ただしAmazon Qが唯一ではなく、あくまでも「先陣を切っている」ものだというのが同氏の考えだ。「Amazon Qは最前線ではあるが、他のツールと必ずしも差異化できるものではない」と同氏は語る。具体的には、自然言語による問い合わせ、ストーリー構築、掘り下げるための質問といった機能は最前線のものであるという。

 一方で調査会社Constellation Researchのアナリストであるダグ・ヘンシェン氏は、Amazon QuickSightにおけるAmazon Qの全体像は、「AWSがQuickSight Qに生成AIを導入することを2023年7月に発表した際の説明をはるかに超えている」と指摘する。Amazon Qは「データ、テキスト、ソースコードの文脈を理解するAIアシスタント」というアイデアに基づく。「エンドユーザーが自然言語で質問したときに、Amazon Qが、ニュアンス豊かで文脈に沿った答えを出す“唯一無二”のAIアシスタントになるはずだ」とヘンシェン氏は述べる。


 次回は、Amazon Qの今後の見通しを紹介する。

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