ランサムウェア攻撃に対してシステムを守るのが重要なのは当然だが、経営者は従業員が深刻なダメージを受けていることも忘れてはいけない。独自取材で浮き彫りになった、ランサムウェア攻撃の影響とは。
組織がランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃を受けたら、被害が及ぶのはシステムだけではない。IT部門をはじめ、攻撃対処に関わる従業員も何らかの形でダメージを受ける。
経営者は自組織がランサムウェア攻撃を受けた際、まず「ビジネスをどう守るか」を考えがちだ。だが、従業員が受ける被害があることを忘れてはいけない。セキュリティ担当者が攻撃による深刻な影響を受けていることが、独自の取材で見えてきた。セキュリティ担当者はどのような苦悩を抱えているのか。その事態はなぜ起きてしまうのか。
英Computer Weeklyはケント大学(University of Kent)との共同研究プロジェクトの一環として、ランサムウェア攻撃を受けた組織の従業員を取材し、攻撃による影響について聞いた。その結果、ランサムウェア攻撃は従業員の心と体の健康にさまざまな悪影響を与えていることが分かった。
ランサムウェア攻撃が発生したら、対処に関わる従業員は長期間(数週間から、場合によっては数カ月)にわたって長時間労働を強いられる。早朝や深夜に加え、休日にも仕事しなければならないケースもある。Computer Weeklyは今回の取材で、「慢性的な睡眠不足のため、カフェインを大量摂取して健康面で不安を感じた」といった回答を得た。
攻撃対処の作業は長時間労働だけではなく、内容的にも多大なストレスや不安をもたらしやすい。ストレスや不安がたまれば、燃え尽き症候群や身体の病気につながる恐れがある。Computer Weeklyが取材した従業員の中には、「病気療養のために欠勤を余儀なくされた」や「心療内科を受診した」、極端なケースでは「自殺を考えた」人がいた。
なぜ、経営者は従業員の被害に気付きにくいのか。主な理由は、ランサムウェア攻撃とその対処をIT部門の問題として捉える傾向があるということだ。あるIT部門の管理職はComputer Weeklyの取材に対し、「経営者はランサムウェア攻撃対処をIT部門に丸投げしている。何もしてくれない」と述べた。
経営者によっては、「ランサムウェア攻撃を受けたのは、IT部門の対策が不十分だったから」と非難することがある。そうなると、従業員は罪悪感や怒りを覚え、攻撃対処が終わった後もネガティブな気持ちを引きずる場合がある。経営者の過剰な反応によって恐怖の文化が浸透すれば、働きにくさが悪化するだけではなく、心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった病気の発症にもつながり得る。
ランサムウェア攻撃による従業員の健康被害を防ぐには、攻撃対処を「短距離走」ではなく、「長距離走」と捉えることが重要だ。経営者は攻撃対処に関わっている従業員が
といったことを定期的に確認する必要がある。場合によっては、心理カウンセリングなど外部のサポートを利用することも大切だ。
Computer Weeklyが取材した従業員の中には、「夜遅くまで作業が続き、オフィス近くに宿泊施設を用意してくれた」「集中力を高めるために食べるアイスクリーム用の冷凍庫を設置してくれた」といった、経営者によるきめ細かい配慮の例を語る人もいた。攻撃対処のときこそ、効率よく働くことが求められる。経営者はその環境をいかに作れるかが知恵の絞りどころだ。
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