日常生活や趣味といった個人的な情報を気軽に投稿できるSNSでは、個人データの扱いに注意が必要だ。第三者による個人データの活用やプライバシーに関するリスクを紹介する。
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)にひも付く個人データを、第三者が特定の目的で収集したり利用したりすることがある。Meta Platformsの「Facebook」やビジネス向けSNS「LinkedIn」、ショート動画共有サービス「Snapchat」「Instagram」「TikTok」をはじめ、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が生活やビジネスの一部になる中、個人データが危険にさらされている。特にどのような個人データに注意が必要なのか。
SNSのユーザーアカウントには個人のプライバシーに関わる情報がひも付いている。具体的には投稿した内容やプロフィール情報、閲覧したWebページ、商品の購入履歴などの情報だ。ユーザーアクティビティーを追跡するCookieによって、知らず知らずのうちに情報が第三者に公開されている場合もある。収集した情報はユーザーセグメントごとに分類され、データブローカー(個人データ売買事業者)がマーケティング目的で販売する場合もある。そのユーザーはフィットネスに興味があるのか、ペットを飼っているのか、子を持つ親かどうかといった観点から、企業は条件に合わせたマーケティング施策を実施する。
犯罪者もSNSから個人データを収集している。米連邦取引委員会(FTC)によると、2021年には米国で9万5000人以上がSNSを介した詐欺の被害に遭っており、その被害総額は7億7000万ドルに上る。一方で、FTCでエコノミストを務めたキース・アンダーソン氏が2021年に公開した論文「To Whom Do Victims of Mass-Market Consumer Fraud Complain?」によると、SNSを介した詐欺被害に遭った人のうち、政府機関に報告した人は4.8%だった。つまりFTCの報告以上の人数が被害に遭っている可能性がある。
SNSのユーザーアカウントを作成して利用すれば、インターネットにフットプリント(個人にひも付く記録)が残る。企業は、Cookieやジオフェンシング(地図上の特定エリアに仮想的なフェンスを設置する技術)、複数のWebサイトやアプリケーション間で横断的に追跡する「サイト越えトラッキング」を使って、ユーザーの興味や位置情報といったデータを収集する。ユーザーがアカウントにサインアップする際に利用規約に同意すれば、SNSはデータを収集できるようになる。
ユーザーアカウントを非公開に設定していたとしても、広告主の企業や犯罪者は個人のプライバシーに関わる以下のデータを入手することが可能だ。
ユーザーが投稿する考えや活動、コンテンツから、政治的な関心や食べ物、娯楽のジャンルや宗教、信条などについて、何を支持しているのか、何を嗜好しているのかを示す態度データ(Attitudinal Data)を収集できるのだ。
市場の分析や、ユーザーの興味に沿った広告の表示、投稿の促進を目的として、企業は個人データを活用している。ユーザーが何にいいねを送信したのか、低評価を付けたのかといった情報もユーザー理解のために有用だ。
ユーザーの興味を探るためにSNSがアンケートを実施したり、その回答を企業が購入したりする場合もある。アンケートで収集した情報を使って、特定の属性やカテゴリー分けし、企業のSNSへの投稿に注目し続けるよう促す施策も可能だ。
広告費を企業が負担し、その企業のブランドの広告をSNSが特定のユーザー向けに投稿する施策を「スポンサードコンテンツ」と呼ぶ。スポンサードコンテンツでは、どのユーザーに広告を打つのかを個人データに基づいて決定する。ユーザーがSNSにメールアドレスや電話番号を登録している場合、企業はその情報を利用して自社製品やサービスの情報をユーザーに打ち出すことができる。
後編は、個人がSNSを使う上で生じる可能性がある問題や、その対処法を紹介する。
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