NVIDIAの時価総額は2024年6月にMicrosoftやAmazon.comを超えた。同社の時価総額や株価が上昇し続ける背景には何があるのか。2023年から2024年にかけての動向から読み解く。
NVIDIAは、2024年6月18日(現地時、以下同じ)に時価総額が3兆3350億ドルに達した。この時点で同社は、Microsoftを抜いて時価総額が世界最大の企業となった。NVIDIAの株価は2023年、2024年と急速に上昇してきた。その背景には何があったのか。
NVIDIAは2024年6月にMicrosoftを抜く数週間前、Appleを抜いて、時価総額第2位に躍り出たばかりだった。NVIDIAの時価総額が1兆ドルを突破し、Amazon.comやGoogleの親会社Alphabetの企業価値を上回ったのは、2023年5月のことだ。NVIDIAの企業価値は9カ月後の2024年2月に1兆ドルから2兆ドルに飛躍し、同年6月に3兆ドルを突破するまでには3カ月ほどしかかからなかった。
NVIDIAをはじめとしたIT企業にとって、2023年に主な原動力となったのが「生成AI」だ。生成AIの台頭によって、ハイテク銘柄は強気相場となり、株式市場は拡大期を迎えた。
ハイテク株の最上位グループは、「マグニフィセントセブン」と呼ばれている。ここに属する銘柄は、AlphabetとAmazon.com、Apple、Meta Platforms、Microsoft、NVIDIA、Teslaだ。マグニフィセントセブンの企業の株価は、2023年に平均で111%上昇。NVIDIAは239%上昇した。
2024年6月7日、NVIDIAは1株を10株とする株式分割を実施した。同社の1株当たりの価格は、約1200ドルから約120ドルとなった。分割調整後の取引は、2024年6月10日に開始した。NVIDIAの株式分割は、従業員や投資家が同社の株式を売買しやすくするために実施されている。分割前に1株を所有していた株主は、分割後にさらに9株を受け取ることになる。長期的には、1株当たり価格の低下によって、投資家は株式の売買が容易になると言える。
NVIDIAはGPU(グラフィックス処理装置)を主力事業としている。GPUはCPU(中央演算処理装置)と比較して高速な並列計算処理が可能だ。GPUはもともと、動画や画像の描画に使われている。グラフィックス処理を高速化し、PCやスマートフォンなどのデバイスにコンテンツを表示する役割を担っている。
生成AI技術が注目を集め始めた2023年に、NVIDIAの企業価値は大きく成長した。同社のGPUを使うことで、生成AIモデルの学習に膨大な量のデータを利用できる。MicrosoftやOpenAI、Googleなどの企業はAI分野に資金を注ぎ込み、NVIDIAはAI技術を動かすためのGPUを提供することで、AIから利益を得ているというわけだ。
NVIDIAの発表によれば、同社の2025年度第1四半期(2024年2〜4月期)の売上高は260億ドルとなり、前四半期比で18%、前年同期比で262%増加した。データセンターの四半期売上高は226億ドルと、前四半期比で23%、前年同期比で427%の増加となっている。
NVIDIAは2024年度第4四半期(2023年11月〜2024年1月期)の決算報告で、売上高が221億ドルとなり、前四半期と比較して22%、前年同期と比較して265%増加したと発表していた。2024年度の通年の売上高は2023年度と比較して、126%増の609億ドルだった。
AI技術の普及によって、企業は大量のデータを高速処理できるハードウェアを必要としている。この種の処理が可能なGPUは、メタバースやゲームでも必要とされている。NVIDIAはまた、技術の進歩が続く自動車用の半導体製品も提供している。
次回は、NVIDIAの株価が上昇してきた理由を4つの視点で解説する。
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