スパコンでも“快進撃”のNVIDIA その野望は続くのか、終わるのか?生成AIとLLMとNVIDIA【後編】

NVIDIAは同社の製品がスーパーコンピュータ「JUPITER」に採用されたと発表した。これはどのような製品で、AI分野で使う場合にはどのような利点があるのか。NVIDIAの今後を含めて展望する。

2024年01月12日 05時00分 公開
[Esther AjaoTechTarget]

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 GPU(グラフィックス処理装置)ベンダーのNVIDIAは、同社のアクセラレーテッドコンピューティング用モジュール「NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip」(以下、GH200)が、ドイツで運用されるスーパーコンピュータ「JUPITER」に搭載されることを発表した。

 JUPITERはエクサスケール(1秒間に100京回規模の計算速度)の処理能力を有しており、その目的は気候と気象の研究、生産工学、量子コンピューティングにおけるAI(人工知能)技術の基盤モデルを作成することなどだ。GH200はどのように処理の効率化に貢献するのか。

NVIDIAが作ったAI用モジュール 今後の展望は?

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 GH200はアプリケーションの要求する負荷に応じてCPU(中央処理装置)とGPUの間で動的に処理能力を分け合い、アプリケーションのパフォーマンスを最適化する。JUPITERはGH200を採用することで、AIワークロード(AI技術を組み込んだシステム)の処理を効率化する。

 NVIDIAはその他の事例として、Hewlett Packard Enterprise(HPE)が新しい生成AI(ジェネレーティブAI)向けスーパーコンピューティングシステムにGH200を搭載する計画だと発表している。

 コンサルティング企業J.Gold Associatesの創設者兼アナリストのジャック・ゴールド氏は「NVIDIAはGH200によって、GPU以外の市場で存在感を強めようとしている」と分析する。調査会社Opus Researchのアナリストを務めるダン・ミラー氏によると、NVIDIAが近年発表している製品や機能は、AI分野の研究者が求めるものを意識している。処理の安定性や、量子コンピューティングのパフォーマンスなどだ。

 一方ゴールド氏は、「Advanced Micro Devices(AMD)やIntelなどの競合半導体ベンダーと比べて、AI処理の能力ではNVIDIA製品が高いと見る意見があるが、必ずしもNVIDIAがAI市場で最高の位置を占めていることを意味するわけではない」と指摘する。

 例えば近年は、供給能力も重要な指標だ。AI技術用の半導体製品は、世界中で不足する傾向にある。「企業は単一のベンダーが需要に応える十分な製造能力を備えているかどうか、常に考えるようになっている」(ミラー氏)

 「動作周波数をMHzで表現する時代なら、処理速度の速さが“優れたチップ”の条件だった。今はそこまで単純ではない」とゴールド氏は話す。

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