オープンソースであるAndroidは、さまざまなデバイスにカスタマイズされて導入される。こうした多様性はメリットであると同時に、リスクを招く要因にもなる。なぜなのか。
モバイルデバイスを利用する際、まずはモバイルOSを慎重に検討する必要がある。Webサイトのアクセス解析をして市場を調査するStatCounterによると、GoogleのモバイルOS「Android」は、2023年12月時点で約70%の市場シェアを占めている。最も普及しているモバイルOSだ。こうした市場で圧倒的な人気を誇るAndroidは、企業によってはセキュリティリスクだと見なすことがある。
企業がAndroidをセキュリティリスクだと見なす主な原因は、同OSの「断片化」(フラグメンテーション)という問題だ。これは、デバイスのベンダーや機種ごとに、異なるバージョンのAndroidを搭載している状態を指す。
一般的には同じOSであれば、使用するデバイスが異なっていても仕様や機能の差が生まれにくい。しかしAndroidはオープンソースであるため、デバイスのベンダーによるカスタマイズが容易だ。それがIT部門にとっては、開発や管理、セキュリティの複雑化につながっている。
Androidがオープンソースであることのメリットは当然ある。ユーザーは幅広い種類のデバイスを利用できる。Androidは特定の用途に特化したデバイスにもインストールでき、結果的にコストを抑制できることがある。
セキュリティ対策が充実したAndroidデバイスを導入しつつ、統合エンドポイント管理(UEM)やモバイルデバイス管理(MDM)のツールを用いることで、企業はデバイスを適切に保護し、管理できる。
米国家安全保障局(NSA)のように、Androidのセキュリティ強化版となる「Security Enhanced(SE) Android」を開発し、デバイスに搭載している組織もある。
一方でAndroidの断片化は、企業に複数の問題をもたらしている。例えばセキュリティだ。異なるAndroidのバージョン間でセキュリティアップデートを同時に受け取れないため、一部のデバイスはセキュリティ面の脆弱(ぜいじゃく)性を抱えることになる。
IT部門によるサポート業務が複雑化することもデメリットになる。OSのバージョンやベンダーによるカスタマイズによって生まれた差異は、トラブルシューティングの手順を増やし、一貫したサポートの提供を困難にする。デバイスの仕様やAndroidのバージョンの差異により、企業用アプリケーションやクラウドサービスとの互換性に問題が生じ、機能やユーザー体験に影響を及ぼすことがある。
オープンソースであっても、ベンダーのOEM(相手先ブランドでの製造)によるカスタマイズは、企業が特定のベンダーに依存する「ベンダーロックイン」を生じさせる。Samsung ElectronicsのようにAndroidのユーザーインタフェース(UI)を変更することは、IT部門にとっては業務の混乱を招く一因になる。
Androidデバイスを効率的に管理するツールとしては、UEMとMDMがある。だが、これらのツールの導入が、ITインフラの複雑化を引き起こす要因になる点には注意が必要だ。セキュリティやアプリケーション利用に関するポリシーが複雑になり、ドキュメントが増え、監査や内部管理の課題が増える可能性がある。
アプリケーション開発者にとっては、さまざまな種類のAndroidデバイスやOSとの互換性を確保しながらアプリケーションを開発したりテストしたりする必要があり、それがコストとリソースの増大を招く可能性がある。
後編は、企業がAndroidの断片化にいかに対処すればよいのかを解説する。
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