SD-WANにはメリットもあるがリスクもある。ベンダー選びも一筋縄ではいかない。ユーザー企業がSD-WANを導入する際に押さえておくべきポイントとは。5つの観点で紹介する。
SD-WAN(ソフトウェア定義型WAN)を導入するに当たっては、そのメリットだけではなくリスクも認識しておく必要がある。SD-WAN製品を選定する際に考慮すべきポイントを5つ紹介する。
SD-WAN導入の最初のステップは、候補となるベンダーの選定だ。SD-WAN関連のベンダーは多様で、SD-WAN製品は市場にあふれている。どの製品にも、WANの変革に関係しそうな特徴があり、SD-WANの選定担当者は圧倒されるだろう。
SD-WANベンダーの候補を選定する前に、既に導入しているアプリケーションのワークフローと、今後10年間における変更の計画を文書化すべきだ。その作業と同時に、SD-WANの機能で従業員の生産性をどのように向上させられるかを検討するとよい。
近年は企業のWANにさまざまな役割が要求されるようになった。ネットワークとセキュリティをクラウドサービスに集約する「SASE」(セキュアアクセスサービスエッジ)はその一例だ。クラウドサービスやセキュリティ機能との連携で、従業員はどこにいてもより安全かつ便利にネットワークを利用できるようになる。その一方でIT部門は、従業員のワークフローを理解し、必要なサービスを選定しなければならず、IT部門の負担が増している。
SD-WAN製品を選定する際、ユーザー企業は純粋にその製品の機能だけを比較して意思決定してはいけない。既存の契約やネットワークの複雑さによる制約があるからだ。例えば、SD-WANの導入と同時にセキュリティベンダーとの契約を終了させることはあまりない。ベンダーはさまざまな機能を1つの製品に集約する傾向にあるため、導入済みの製品やサービスの契約が問題となりやすい。
物理的な配線や機器によるネットワークを「アンダーレイネットワーク」と呼ぶ。アンダーレイネットワークに作られた仮想的なWANが「オーバーレイネットワーク」だ。
アンダーレイネットワークをスイッチング(トラフィックの中継と転送)技術である「MPLS」(マルチプロトコルレベルスイッチング)による閉域網から、SD-WANとインターネット回線を組み合わせるネットワークに移行することはコストの面から合理的になることがある。
利用するアプリケーションの全てが自社のデータセンターにそろっているユーザー企業であれば、MPLSによる閉域網は検討の余地がある。しかしクラウドサービスを利用しているユーザー企業では、インターネット回線でWANを構築する方が適切な選択になることがある。
クラウドサービスを利用するユーザー企業が悩むのは、どのインターネットサービスプロバイダー(ISP)が自社に最も適しているかや、ISPを1社に統一するか複数社を使い分けるかといった点だ。ISPを選ぶ時はコストやパフォーマンス以外も考慮すべきだ。以前から閉域網を提供していたISPのオペレーションセンターでは、WANエッジ(WANの始点または終点に設置されたネットワーク機器)と回線を集中的に管理する仕組みが整っている。そうしたISPは効率的にトラブルに対処できるだろう。
インターネットサービスだけを提供するISPは、ネットワークの管理能力においてもトラブルへの対処能力においても、MPLSの専用線を提供する事業者に及ばなかったり、外部にそうした作業を委託していたりする傾向にある。ISPを選ぶ時は、サービスの内容や品質について合意するSLA(サービスレベル契約)を確認することが不可欠だ。
世界各国に拠点があるユーザー企業の場合は、可能な限り単一の通信事業者を採用するべきだ。アプリケーションのパフォーマンスが悪化した時に、トラフィック(ネットワーク内を流れるデータ)を分析して障害の原因を特定しやすくなるからだ。
拠点が国内に限られているユーザー企業の場合、通常はネットワークの遅延による影響が出にくいため、価格を優先して複数のISPを検討してもよい。
次回はクラウドサービス接続やコスト削減、管理などの観点からSD-WANの選び方を解説する。
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