いまさら聞けない「SD-WAN選び」を成功させる“比較のこつ”とはSD-WAN選定のための5つのポイント【前編】

SD-WANにはメリットもあるがリスクもある。ベンダー選びも一筋縄ではいかない。ユーザー企業がSD-WANを導入する際に押さえておくべきポイントとは。5つの観点で紹介する。

2024年08月07日 08時15分 公開
[Robert SturtTechTarget]

 SD-WAN(ソフトウェア定義型WAN)を導入するに当たっては、そのメリットだけではなくリスクも認識しておく必要がある。SD-WAN製品を選定する際に考慮すべきポイントを5つ紹介する。

1.候補となるSD-WANベンダー

 SD-WAN導入の最初のステップは、候補となるベンダーの選定だ。SD-WAN関連のベンダーは多様で、SD-WAN製品は市場にあふれている。どの製品にも、WANの変革に関係しそうな特徴があり、SD-WANの選定担当者は圧倒されるだろう。

 SD-WANベンダーの候補を選定する前に、既に導入しているアプリケーションのワークフローと、今後10年間における変更の計画を文書化すべきだ。その作業と同時に、SD-WANの機能で従業員の生産性をどのように向上させられるかを検討するとよい。

 近年は企業のWANにさまざまな役割が要求されるようになった。ネットワークとセキュリティをクラウドサービスに集約する「SASE」(セキュアアクセスサービスエッジ)はその一例だ。クラウドサービスやセキュリティ機能との連携で、従業員はどこにいてもより安全かつ便利にネットワークを利用できるようになる。その一方でIT部門は、従業員のワークフローを理解し、必要なサービスを選定しなければならず、IT部門の負担が増している。

 SD-WAN製品を選定する際、ユーザー企業は純粋にその製品の機能だけを比較して意思決定してはいけない。既存の契約やネットワークの複雑さによる制約があるからだ。例えば、SD-WANの導入と同時にセキュリティベンダーとの契約を終了させることはあまりない。ベンダーはさまざまな機能を1つの製品に集約する傾向にあるため、導入済みの製品やサービスの契約が問題となりやすい。

2.アンダーレイネットワーク

 物理的な配線や機器によるネットワークを「アンダーレイネットワーク」と呼ぶ。アンダーレイネットワークに作られた仮想的なWANが「オーバーレイネットワーク」だ。

 アンダーレイネットワークをスイッチング(トラフィックの中継と転送)技術である「MPLS」(マルチプロトコルレベルスイッチング)による閉域網から、SD-WANとインターネット回線を組み合わせるネットワークに移行することはコストの面から合理的になることがある。

 利用するアプリケーションの全てが自社のデータセンターにそろっているユーザー企業であれば、MPLSによる閉域網は検討の余地がある。しかしクラウドサービスを利用しているユーザー企業では、インターネット回線でWANを構築する方が適切な選択になることがある。

 クラウドサービスを利用するユーザー企業が悩むのは、どのインターネットサービスプロバイダー(ISP)が自社に最も適しているかや、ISPを1社に統一するか複数社を使い分けるかといった点だ。ISPを選ぶ時はコストやパフォーマンス以外も考慮すべきだ。以前から閉域網を提供していたISPのオペレーションセンターでは、WANエッジ(WANの始点または終点に設置されたネットワーク機器)と回線を集中的に管理する仕組みが整っている。そうしたISPは効率的にトラブルに対処できるだろう。

 インターネットサービスだけを提供するISPは、ネットワークの管理能力においてもトラブルへの対処能力においても、MPLSの専用線を提供する事業者に及ばなかったり、外部にそうした作業を委託していたりする傾向にある。ISPを選ぶ時は、サービスの内容や品質について合意するSLA(サービスレベル契約)を確認することが不可欠だ。

 世界各国に拠点があるユーザー企業の場合は、可能な限り単一の通信事業者を採用するべきだ。アプリケーションのパフォーマンスが悪化した時に、トラフィック(ネットワーク内を流れるデータ)を分析して障害の原因を特定しやすくなるからだ。

 拠点が国内に限られているユーザー企業の場合、通常はネットワークの遅延による影響が出にくいため、価格を優先して複数のISPを検討してもよい。


 次回はクラウドサービス接続やコスト削減、管理などの観点からSD-WANの選び方を解説する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬩幢ス「隴取得�ス�ク陷エ�・�ス�。鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�、鬩幢ス「隴主�讓滂ソス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス�ス�ス�ス

技術文書・技術解説 アイティメディア広告企画(2025年02-03月ネットワークセキュリティ特集)

「SD-WAN選び」で失敗しない 押さえておくべきポイント5選

SD-WAN(ソフトウェア定義型WAN)を導入する際はどのような観点で製品を選べばいいのか。メリットやデメリットなど押さえておくべき5つのポイントを紹介する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア広告企画(2025年02-03月ネットワークセキュリティ特集)

ADCの役割に変化 新たな役割や機能をおさらい

ロードバランサーから進化した「ADC」(アプリケーションデリバリーコントローラー)は、負荷分散にとどまらない、さまざまな機能を追加し続けている。充実するADCの機能をおさらいしよう。

技術文書・技術解説 アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社

ハイブリッドクラウド環境における、ネットワーク監視のベストプラクティスとは

ハイブリッドクラウド環境が当たり前となりつつある今、ネットワークの品質を確保することは組織にとって極めて重要な課題だ。本資料では、ハイブリッドクラウド環境のネットワーク監視におけるベストプラクティスを紹介する。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

ネットワークの複雑性の課題をどう解消する? 鍵は可視性と制御性

今日の企業における複雑化したITシステム環境においては、ビジネスの安全性や効率性が損なわれている。そこで求められるのがクラウドを活用したインテリジェントな自動化だが、これを実現するには、ネットワークの可視性と制御性が必要だ。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

複雑化したネットワークシステム、クラウド並みのアジリティを確保するには?

顧客や従業員のエクスペリエンスを向上させるとともに、インベーションを促進するには「アジリティ」の強化が鍵となる。しかし昨今、組織のネットワークは複雑化が著しく、アジリティの確保すら難しい。そこで求められるのが「簡素化」だ。

驛「譎冗函�趣スヲ驛「謨鳴€驛「譎「�ス�シ驛「�ァ�ス�ウ驛「譎「�ス�ウ驛「譎「�ソ�ス�趣スヲ驛「譎「�ソ�スPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

いまさら聞けない「SD-WAN選び」を成功させる“比較のこつ”とは:SD-WAN選定のための5つのポイント【前編】 - TechTargetジャパン ネットワーク 髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€鬮ォ�ェ陋滂ソス�ス�コ�ス�ス

TechTarget驛「�ァ�ス�ク驛「譎「�ス�」驛「譏懶スサ�」�趣スヲ 髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€鬮ォ�ェ陋滂ソス�ス�コ�ス�ス

鬩幢ス「隴取得�ス�ク陷エ�・�ス�。鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�、鬩幢ス「隴主�讓滂ソス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ゥ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ュ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ー

2025/05/28 UPDATE

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...