テレワークが広がり、企業は従業員がどこにいても快適に利用できるネットワークを必要とするようになった。そうした中、「SD-WAN」から「5G」へと採用が加速したのはなぜなのか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が発生し、テレワークをする従業員が増加した。さまざまな拠点の従業員がクラウドサービスを効率的に利用するために、企業は「SD-WAN」(ソフトウェア定義WAN)を採用するようになった。
それと同時に、ネットワークとセキュリティをクラウドサービスに集約する「SASE」の導入を検討する企業が増加傾向にある。意外なことに、SASEの広がりによって「5G」(第5世代移動通信システム)の導入も進んでいる。
米TechTargetの調査部門であるEnterprise Strategy Group(ESG)のプリンシパルアナリストであるボブ・ラリベルテ氏に、企業のネットワークがどのように変化しているのかを聞いた。
―― パンデミックの影響やテレワークの普及、ネットワークの分散化などを踏まえて、企業のネットワークはどう変化していますか。
ラリベルテ氏 企業は従業員がシームレスにネットワーク接続できるための取り組みを進めている。誰もがクラウドサービスに接続する必要があるので、SD-WANが普及する可能性が高まっている。誰もが、より費用対効果の高いネットワーク接続を利用したいし、可用性も確保したい。
5Gが登場したことで状況は改善している。5Gは大きく2つの用途に使用できる。1つ目は各拠点でのメイン回線、2つ目は自宅にいるテレワーカー向けのネットワークだ。
パンデミックの間、コールセンターのオペレーターや医療従事者など、特定の職種ではリモートでの作業が増加することになった。その際、十分な通信速度を確保するためのネットワークとして5Gが使われた。
―― ネットワークインフラは、そう遠くない未来に5Gに支配されるようになり、さまざまなネットワーク技術の中には使われなくなるものが出てきますか。
ラリベルテ氏 SD-WANはしばらく存在するだろう。現状はSD-WANの代替物はないからだ。
過去2年間の調査で、5Gを利用するユーザーについて調べた。新しいものへの関心から「よく分からないけど、取りあえず使ってみよう」という5Gへの反応が見られた。
企業は5Gに移行することで大きなメリットを享受できる可能性がある。5Gはバックアップ回線だけにとどまらず、メイン回線としても使える。テレワーク用の回線として、5Gは企業にとって非常に理にかなっている。
有線のブロードバンド接続は5Gより帯域幅が広い傾向にあるが、それでも在宅勤務で満足する帯域幅がないときもある。ここ数年はテレワーカー向けに2つ目の回線を検討する企業を見てきた。全体として、ネットワークのコストよりも品質やパフォーマンスを重視する方向へ進んでいる。今後もさまざまなネットワーク技術が混在することになるだろう。
―― SASEを導入済みの企業に対して、アドバイスはありますか。
ラリベルテ氏 ネットワークをどの程度集約しているのか、どのようなベンダーと契約しているかが問題となる。自社が入れ替えを検討する価値があると考える別のSASEベンダーがあるとする。それでも、必ずしも全面的な入れ替えが必要なわけではない。まずは特定の製品や機能だけを導入しておき、将来的に既存製品の償却が終わったときに追加するという具合だ。
SASEには複数のコンポーネントが含まれる。SASEベンダーには、要素を小分けにして売るべきだと言いたい。本をまるごと1冊売るのではなく、1章ずつ売るようなものだ。SD-WANベンダーは運用の効率化やセキュリティの強化、ユーザーエクスペリエンス(UX)の向上を図るための手段を企業に提供することが重要だ。
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