ネットワークをサブスクリプション形式で利用するNaaSを使うことで、ネットワーク管理者には面倒なメンテナンスから解放される。その利用はまだ広がっていない。NaaSの現状とは。
企業がアプリケーションに投資する際、“サービスとしての利用”を意味する「as a Service」を選択することは珍しくなくなってきた。as a Serviceは通常、サブスクリプション形式で利用期間に応じて費用を払うため、会計処理がシンプルである他、必要に応じて利用規模を変化させやすいといったメリットがあるからだ。
企業はネットワークインフラをサブスクリプション形式で利用する「Network as a Service」(NaaS)にも関心を寄せるようになってきたが、現在のNaaSは未成熟だ。ネットワークのオープン化を目指す団体ONUG(Open Networking User Group)が主催したカンファレンス「ONUG Fall 2023」では、NaaSの標準化や、企業のNaaS採用が遅れているとの指摘があった。NaaSはそもそもどのようなサービスで、その採用はなぜ遅れているのか。
NaaSの厳密な定義はまだ定まっていないのが現状だが、ネットワーク機器ベンダーCisco Systemsのエンジニアであるスティーブ・ウッド氏は次のように紹介する。「クラウドサービスを利用するようにネットワークサービスを利用するという、これまでとは異なる考え方だ」
従来、企業がネットワークを利用するにはインターネットサービスプロバイダー(ISP)やネットワーク機器ベンダー、ネットワークインテグレーターなどに協力を依頼しながら、自社でハードウェアとソフトウェアを調達してインフラを構築して運用する形式が一般的だった。
それに対してNaaSは、ベンダーからインフラおよびネットワーク機能をサービス形式で購入する。ネットワーク機能は仮想化されているため、ユーザー企業にとってはネットワーク機器の物理的なメンテナンスから解放される点がメリットだ。ONUGは次のように解説する。「ユーザーはNaaSの利用によって、独自のインフラを所有、構築、維持することなくネットワークを取得し、オーケストレーション(システムの設定や管理の自動化)できる」
ウッド氏が挙げるNaaSの主な機能は以下の通りだ。
ウッド氏によれば、NaaSは単にネットワーク機能を仮想化するだけでなく、企業ネットワーク全体でセキュリティポリシーを統一したり、オンプレミスかクラウドサービスかを問わず接続したりできる機能を提供する必要がある。
医療サービスを提供するCigna Healthcareのバイスプレジデントであるクリス・モレッティ氏は「NaaSはこれまでの定説を覆す“パラダイムシフト”であり、それが企業による採用が遅れている一因だ」と述べる。
モレッティ氏によれば、NaaSはネットワークだけにとどまる概念ではなく、アプリケーションやクラウドサービス、セキュリティといった要素を内包している。そのため、各領域の担当者が分かれている企業にとっては挑戦的な取り組みになるという。
後編はNaaSの提供形態やユースケースを解説する。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
CMOが生き残るための鍵は「生産性」――2025年のマーケティング予測10選【中編】
不確実性が高まる中でもマーケターは生産性を高め、成果を出す必要がある。「Marketing D...
世界のモバイルアプリ市場はこう変わる 2025年における5つの予測
生成AIをはじめとする技術革新やプライバシー保護の潮流はモバイルアプリ市場に大きな変...
営業との連携、マーケティング職の64.6%が「課題あり」と回答 何が不満なのか?
ワンマーケティングがB2B企業の営業およびマーケティング職のビジネスパーソン500人を対...