AIスキルが“無料”で身に付く「AWSの学習コンテンツ」とは?誰でも使えるAI教材が充実

ITベンダーがAI技術に関する無料のトレーニングを拡充している。AWSもその一社だ。同社が新たに追加した、誰もが生成AIのスキルを習得できる無料の学習コンテンツとは。

2024年08月09日 05時00分 公開
[Patrick ThibodeauTechTarget]

 テキストや画像を生成する人工知能(AI)技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)は、日常生活だけではなくビジネスにも大きな影響を与えている。生成AIを扱うスキルは、誰にでも求められる“基本の能力”になりつつある。そうした中、クラウドベンダーAmazon Web Services(AWS)が、生成AIに関する無料の学習コンテンツを追加した。同社が従来提供している豊富な教材を含めて、具体的に以降で確認しよう。

AIスキル習得に役立つ「AWSの無料学習コンテンツ」とは

 AWSは2020年以降、世界で2900万人に対して、同名クラウドサービス群とそのスキルを習得できるトレーニングコースを無償提供する目標を掲げている。その中核を担うのが、オンライン学習支援サービス「AWS Skill Builder」だ。

 AWS Skill Builderは600点を超える無料のトレーニングコースを提供している。このうち100点以上が機械学習(ML)などのAI技術に特化した内容だ。そうしたコースには、ハンズオン形式でAWSの操作方法を学習できる「AWS Builder Labs」、認定資格試験の対策コース「Exam Prep」などが含まれる。

 AWSは、開発者やビジネスユーザーを対象にした生成AIツール「Amazon Q」に関する無料のトレーニングコース「Amazon Q Developer Getting Started」と「Generative BI with Amazon Q in Quicksight」を追加した。エンドユーザーはそれぞれのコースで、ソースコードの生成および自動補完ができるツール「Amazon Q Developer」、ビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Amazon QuickSight」でAmazon Qを使用する方法を学習できる。

 AWSは、2023年11月にはAI分野に特化したトレーニングコースの拡充としてMLや生成AIに着目した取り組み「AI Ready」を発表した。2025年までに世界で少なくとも200万人を対象に、AI関連のスキルを習得できる無料のトレーニングコースを提供する目標を掲げている。

 AWSのジェニー・トラウトマン氏(トレーニングと認定の担当責任者)は、「生成AIを早期に導入した企業は、生成AIの導入が遅れた企業よりも生産性が向上する可能性がある」と語る。生成AIを早期に導入した企業の従業員は、速く、スマートに働くことができ、自身の役割において創造力を発揮し、イノベーションを起こすためにより多くの時間を費やせるようになるとトラウトマン氏は強調する。

 AWSの無料トレーニングコースはMicrosoftやGoogle、Salesforceなど他のITベンダーの認定プログラムとも似ている。調査企業Nucleus Researchのリサーチマネジャーであるエブリン・マクマレン氏によると、このことはAmazon Qの知名度向上にも寄与する。

 「生成AIはAWS固有のものではないため、学習者がAWSのユーザーであるかどうかに関係なく、無料トレーニングから得られる価値はある」とマクマレン氏は述べている。

無料トレーニングの課題は「効果の可視化」

 AI技術に関するトレーニングの分野は、競合がひしめいている。2024年4月、Cisco Systems、Google、IBM、Microsoft、SAPなどはコンソーシアム「AI-Enabled Information and Communication Technology(ICT)Workforce Consortium」を設立した。その目的は、AI技術の影響を受ける見込みがある職業に就いている労働者を対象に、リスキリング(新しい知識やスキルの習得)を支援することにある。

 こうしてAI技術に関するトレーニングが充実してくることは、企業にとっての新たな課題を生んでもいる。IT認定資格の業界団体CompTIAのチーフリサーチオフィサーであるティム・ハーバート氏は「スキルを習得できる選択肢は豊富にあるが、企業と従業員が自身にとってどの選択肢が最適かを判断するのは難しい場合がある」と指摘する。

 CompTIAが複数の人事、スキルアップの専門家からヒアリングしたところによると、企業はトレーニングが生産性、仕事の質、ビジネスの成果に与える影響を定量化することに課題を感じている。

 企業からすると、全ての学習コンテンツへのアクセス権を従業員に付与し、各自に学習計画の策定を委ねることは魅力的に映る。そうすることで、従業員ごとのアクセス権や学習コースの管理をする手間を省けるからだ。だがハーバート氏は、「トレーニングコースの品質はさまざまで、それによって学習成果や職場での適用性も異なる」と警鐘を鳴らす。

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