BroadcomによるVMwareの買収は、プラットフォームエンジニアリング市場に変化をもたらしている。「Rancher」を提供するSUSEは、この状況をどう見ているのか。市場でのポジションをどう強化しようとしているのか。
半導体ベンダーBroadcomが仮想化ソフトウェアベンダーVMwareを買収した余波が、開発市場を揺るがしている。この状況下で企業向け営業を強化し、企業の買収と製品のアップデートを通じて攻勢を強めているのがSUSEだ。SUSEは「Kubernetes」クラスタ(Kubernetesで扱うコンテナクラスタ)管理ツール「Rancher」を手掛けている。専門チームが開発者に必要なインフラを構築、運用するアプローチである「プラットフォームエンジニアリング」分野において、SUSEがVMwareに代わって台頭する可能性について、専門家の分析とともに探る。
Broadcomは610億ドルでVMwareを買収した。その後の対処に対する懸念は現実のものとなり、2023年にはVMwareで人員削減が始まった。2024年に入ってからは、価格改定やリセラー契約の解除を巡り、顧客企業やパートナー企業に不安を与えている。
従来、プラットフォームエンジニアリングに関心のある企業にとって、VMwareのプライベートクラウドサービス「VMware Cloud Foundation」(VCF)や、コンテナオーケストレーションツールKubernetesを利用するための製品群「VMware Tanzu」は有力な選択肢だった。業界アナリストは、仮想化分野で優位な立場を築いたVMwareの製品とサービスは、今後もさまざまな企業が使用し続けると予測する。一方でBroadcomによるVMwareの買収がもたらす混乱によって、クラウドネイティブ(クラウドサービスで稼働させることを前提にしたアプローチ)分野を中心に、競合他社に新たなチャンスが生まれるという。
米TechTarget傘下の調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のアナリスト、トーステン・ボルク氏は、VMwareを離れる企業の大半が、自社のクラウドネイティブアプリケーションに適した新たなツールを求めているとみる。大手クラウドサービスのみを利用するクラウドネイティブアプリケーションの運用は予想外のコストがかかったり、コストの予測がしづらかったりするといった課題がある。こうした企業の課題を解決しようと、オンプレミスシステムとクラウドサービスの両方を対象にしたベンダーの間で顧客獲得競争が起きている。具体的には、Red Hat(2019年にIBMが買収)、Canonical、Pure Storage、Nutanix、Spectro Cloudといったベンダーが参戦している。
2023年、SUSEの大株主であるEQT Private EquityはSUSEの株式を非公開化する方針を固めた。SUSEはその目的を、事業の優先順位の策定や長期戦略の実行に注力することにあると公言している。
2024年3月、SUSEはRancherの商用バージョンである「Rancher Prime」を公開し、RancherをKubernetesクラスタ管理ツールから、包括的なプラットフォームエンジニアリングツールにリニューアルした。同年6月には可観測性(オブザーバビリティ)分野のパートナー企業であったStackStateを買収することで、製品とサービスの強化に乗り出した。その他にも、製品とサービスに対して以下の機能強化を実施している。
ITコンサルティング企業Sageableのグローバル最高技術責任者(CTO)兼創設者であるアンディー・マン氏の見解では、SUSEは「クラウドネイティブなDevOps(開発と運用の統合)向けの機能を備える『ベストオブスイート』スタイルの運用、開発環境」を構築しようとている。ベストオブスイートとは、単一ベンダーが提供するツール群を用いて、各ツールの連携が取れた状態でシステムを構築する考え方だ。これによって、開発と運用にまたがってツール群が統一され、開発チームと運用チームは同じ開発、運用環境でアプリケーションの構築、展開、運用が可能になる。「こうしたアプローチは、プラットフォームエンジニアリングの理想の実現につながる」とマン氏は解説する。
次回は、SUSEとStackStateの統合に対する専門家の見解を紹介する。
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