IT業界で大型の人員削減が相次いでいる。ITベンダーが人員削減に動く背景には、幾つかの要因がある。考えられる9つのポイントを解説する。
IT業界で解雇やレイオフ(一時解雇)のニュースが飛び交っている。世界のIT企業の解雇状況を収集しているWebサイト「Layoffs.fyi」によると、2024年に入ってから、2024年8月時点で384社のIT企業が12万4500人以上の従業員を解雇した。
半導体ベンダーIntelは2024年8月、全従業員の15%以上に相当する約1万5000人を解雇すると発表した。HCM(人材管理)ソフトウェアベンダーUKGも、全従業員1万5000人のうち14%を占める約2100人のレイオフに踏み切った。IT業界で人員削減が続いているのはなぜか。9つの理由で解説する。
AI(人工知能)技術が台頭する中で、AIスキルを持つ人材への関心が高まる一方、AIスキルを持たない一部の人材は失業のリスクにさらされている。ただしAI技術の台頭は労働者の失職を加速させるものではない。AI技術には、人が実施する業務を補完したり、業務の生産性を高めたりする役割が期待される。
IBMは2023年1月、従業員の1.5%に当たる3900人の人員削減計画を発表した。通信社Bloombergは2023年5月、IBMはAI技術が代行可能な職務の雇用を停止する計画であると報じている。
米商務省経済分析局(Bureau of Economic Analysis)が2022年7月に公開した調査レポートは、米国経済の成長鈍化やインフレに言及している。政府が借り入れできる総額を制限する政府の債務上限やウクライナ侵攻、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)、金利上昇などが米国経済を脅かしていると同レポートは分析した。
こうした不透明な経済情勢の中で一部のIT企業は業績が悪化し、コスト削減の一環で人員を削減している。
米連邦準備制度理事会(FRB)が設定しているインフレ目標は年率2%だ。一方で2021年6月〜2022年6月の12カ月間で米国の消費者物価指数は9.1%上昇した。米労働省労働統計局(BLS)の発表によれば、このインフレ率は1981年以降、12カ月間の上昇率としては最大の数値を記録した。インフレへの対抗策として消費者は買い控えるようになり、経済の軟化が進んでいる。生活費は高騰し、消費者や企業は支出の削減を余儀なくされた。利用しているIT製品やサービスの価格が上昇した企業は、IT製品やサービスの必要性を再検討し、利用の中止を決断することとなった。
インフレによる支出増加への対策としてコスト削減を検討する際、企業が最初に取る施策として一般的なのが従業員の解雇だ。人件費は企業が抱えるコストの中で大きな割合を占める傾向にあるためだ。Googleやショート動画共有サービス「Instagram」を運営するMeta Platforms、ショート動画共有サービス「TikTok」の親会社ByteDanceといったIT企業は、広告収入に依存するビジネスモデルを前提にしている。企業が広告費を削減すれば、IT企業の収益は減少する。
FRBは2022年に7回、2023年に4回の利上げを実施した。経済成長を抑制し、消費者と企業の消費活動を減少させることで需要を減らし、インフレを抑制することが利上げの目的だ。
金利が上昇すれば、企業は支出を避け、借入金を減らすようになる。高金利はベンチャーキャピタルやスタートアップ(設立後間もない企業)の資金調達にも影響を及ぼす。経済の先行きが不透明な状況では、企業はリスクを伴う投資は避け、採用活用や成長戦略を再検討するようになる。
収益が減少すれば、投資家は企業に出費を減らすことを求めるようになる。Googleの親会社Alphabetは、同社の大株主である投資会社TCI Fund Managementから人員削減と収益性向上の措置を講じるよう求められた。Meta PlatformsやMicrosoftといった大手IT企業も、他社と比べて従業員が多過ぎるという反発を投資家から受けている。
次回は、IT業界で人員削減が続く9つの理由のうち、4つを紹介する。
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