「Zig」はシンプルで強力な構文を備えた新しいプログラミング言語だが、注目点はそれだけではない。従来のコンパイル言語の概念を覆す、革新的な特徴を持つ。その特徴とは何か。
機械語に近い「低水準言語」を扱う開発者の心をつかみそうな新しいプログラミング言語がある。その名を「Zig」という。2024年7月時点で完全版はまだ公開されていないが、開発が盛んで、コミュニティーの熱気もある。
なぜ今新しいプログラミング言語が必要なのか。より具体的に言えば、Zigには「C」「C++」「Rust」「D」などのプログラミング言語を上回る点はあるのか。本連載はZigの主要なメリット5つを取り上げる。
複雑ではないことがZigの魅力の一つだ。文法を定義する「PEG」(Parsing Expression Grammar)ファイルは600行以内にまとまっている。
Zigは、データの型に依存しない汎用(はんよう)的な関数やデータ型を記述する機能「ジェネリクス」や、コンパイルする前のソースコードに特定の処理をする「プリプロセッサ」を必要としない。つまり全ての仕組みがZig自体で記述されている。これはCやC++と比べて大きな改善点だ。
プログラミング言語の主な分類方法として、プログラミング言語で書かれたソースコードを機械語に変換する仕組みに着目するものがある。この分類に従うと、プログラミング言語は以下の2つに分けることが可能だ。
インタープリタ言語は、実行時にプログラムをコンパイルする「JIT(Just-in-Time)コンパイラ」ではなく、インタープリタを使ってプログラムを実行する。そのため一般的には、あらかじめコンパイラが機械語に変換するコンパイル言語に比べて、プログラムの実行速度が遅い。一方で修正と実行を繰り返しやすいなどの特性から、テスト、トラブルシューティング、デバッグは、概してインタープリタ言語の方が容易だ。
Zigはこうした形式的な分類には当てはまらない、双方の特性を持ち合わせたプログラミング言語だ。Zigは、プログラムを直接機械語にコンパイルする。コンパイル時に関数の実行結果や変数などの値が確定している場合は、コンパイル時にプログラムを実行して、その結果をプログラムに埋め込むことができる。この仕組みはプログラムの実行速度を押し上げるだけではなく、言語自体の機能や性能を引き上げるものだ。
次回は、3つ目と4つ目のメリットを紹介する。
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