生産性にこだわる人ほど「無意味な作業」を繰り返していた?これから求められる「生産性ツール」とは【前編】

さまざまな生産性向上ツールが登場する一方で、従業員の業務負荷は改善していないようだ。このような矛盾ともいえる事態は、なぜ起きてしまうのか。

2024年10月11日 08時00分 公開
[Adrian BridgwaterTechTarget]

関連キーワード

業務効率


 本記事は、ジェフ・シュチェパンスキー氏と、プログラミングQAサイトの「Stack Overflow」のOBチームが共同で執筆した寄稿を基にしたものだ。シュチェパンスキーはワークスペースオーケストレーションツールのベンダーReframe Technologiesの創業者兼CEOを務めており、過去にはStack Overflowと、「X」(旧Twitter)が2021年に買収したチャットアプリケーションベンダーSphereでCOO(最高執行責任者)を務めた経歴を持つ。

 現代の職場では、生産性を向上させるさまざまなツール(以下、生産性ツール)が活用されている。しかし皮肉なことに、従業員の業務負荷は増え続けており、「真の効率化」はますます遠のいているようだ。それはなぜなのか。

「生産性ツール」を導入しても生産性は上がらない訳

 生産性ツールを導入しても業務負荷が増えるといった状況が生まれる背景には、ツールが設計された目的と、実際の使われ方に、ギャップが存在することが挙げられる。

 現代の従業員は、通知が届くたびに作業を中断するというリアクティブ(受動的)な働き方をしており、この状況はプロアクティブ(能動的)な仕事の妨げとなっている。業務の合理化を目的としたツールが、逆に業務を複雑化してしまっているのだ。このような背景から、生産性ツールの在り方を再考する必要があることは明らかだ。

 シュチェパンスキー氏の見解によれば、近年のPCにおけるユーザー体験(UX)は、生産性を中心に据えて設計されたものではない。むしろ、1台のコンピュータで複数のプログラムを同時に実行するという、コンピュータサイエンスの問題解決に焦点を当てて開発されている。そのため、単に生産性ツールを導入するだけでは、マルチタスクによってエンドユーザーに過度な負担がかかっている状況を解決するのは難しいだろう。

 ある研究によると、われわれは業務で約100種類の異なるアプリケーションを使用しており、それらの間を1日1000回ほど行ったり来たりして、膨大量の情報をコピー&ペーストしている。つまり、情報をある場所から別の場所へ移動させるといった、非生産的な作業を繰り返しているだけとも言える。

 われわれが取り組むべき課題は、技術が人間のニーズにどのように応えているかを改めて見直すことだ。つまり、デジタルツールと人間とのインタラクション(相互作用)を強化するために、より統合されたアプローチへ転換していく必要があるということだ。

 シュチェパンスキー氏は、人類が火を発見した時代に例えて、「重要なのは火をどれだけ多く持っているかではなく、その火をどのように使うかだ」と話す。暖を取る、料理をする、明かりをつけるといった使い方が、火を価値あるものにするということだ。

 人工知能(AI)技術があらゆるシステムに組み込まれるようになった近年、この考え方は特に重要になっている。AI技術は情報検索やコンテンツ生成を支援するための個々のツールとして機能している。AIツールは非常に便利な反面、他のアプリケーションと柔軟に統合されているとは言い難い。そのため、エンドユーザーはいちいちアプリケーションを切り替えてプロンプト(指示文)を入力し、その結果をコピー&ペーストするといった手作業が増えてしまう可能性がある。


 次回は、これからの時代に求められる生産性ツールについて考察する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia マーケティング新着記事

news190.jpg

インバウンド消費を左右する在日中国人の影響力
アライドアーキテクツは、独自に構築した在日中国人コミュニティーを対象に、在日中国人...

news041.jpg

SEOは総合格闘技である――「SEOおたく」が語る普遍のマインド
SEOの最新情報を発信する「SEOおたく」の中の人として知られる著者が、SEO担当者が持つべ...

news143.jpg

HubSpot CMSにWebサイトの「定石」を実装 WACUL×100のパッケージ第1弾を提供開始
WACULと100は共同で、Webサイトの「定石」をHubSpotで実装する「Webサイト構築パッケージ...