さまざまな生産性向上ツールが登場する一方で、従業員の業務負荷は改善していないようだ。このような矛盾ともいえる事態は、なぜ起きてしまうのか。
本記事は、ジェフ・シュチェパンスキー氏と、プログラミングQAサイトの「Stack Overflow」のOBチームが共同で執筆した寄稿を基にしたものだ。シュチェパンスキーはワークスペースオーケストレーションツールのベンダーReframe Technologiesの創業者兼CEOを務めており、過去にはStack Overflowと、「X」(旧Twitter)が2021年に買収したチャットアプリケーションベンダーSphereでCOO(最高執行責任者)を務めた経歴を持つ。
現代の職場では、生産性を向上させるさまざまなツール(以下、生産性ツール)が活用されている。しかし皮肉なことに、従業員の業務負荷は増え続けており、「真の効率化」はますます遠のいているようだ。それはなぜなのか。
生産性ツールを導入しても業務負荷が増えるといった状況が生まれる背景には、ツールが設計された目的と、実際の使われ方に、ギャップが存在することが挙げられる。
現代の従業員は、通知が届くたびに作業を中断するというリアクティブ(受動的)な働き方をしており、この状況はプロアクティブ(能動的)な仕事の妨げとなっている。業務の合理化を目的としたツールが、逆に業務を複雑化してしまっているのだ。このような背景から、生産性ツールの在り方を再考する必要があることは明らかだ。
シュチェパンスキー氏の見解によれば、近年のPCにおけるユーザー体験(UX)は、生産性を中心に据えて設計されたものではない。むしろ、1台のコンピュータで複数のプログラムを同時に実行するという、コンピュータサイエンスの問題解決に焦点を当てて開発されている。そのため、単に生産性ツールを導入するだけでは、マルチタスクによってエンドユーザーに過度な負担がかかっている状況を解決するのは難しいだろう。
ある研究によると、われわれは業務で約100種類の異なるアプリケーションを使用しており、それらの間を1日1000回ほど行ったり来たりして、膨大量の情報をコピー&ペーストしている。つまり、情報をある場所から別の場所へ移動させるといった、非生産的な作業を繰り返しているだけとも言える。
われわれが取り組むべき課題は、技術が人間のニーズにどのように応えているかを改めて見直すことだ。つまり、デジタルツールと人間とのインタラクション(相互作用)を強化するために、より統合されたアプローチへ転換していく必要があるということだ。
シュチェパンスキー氏は、人類が火を発見した時代に例えて、「重要なのは火をどれだけ多く持っているかではなく、その火をどのように使うかだ」と話す。暖を取る、料理をする、明かりをつけるといった使い方が、火を価値あるものにするということだ。
人工知能(AI)技術があらゆるシステムに組み込まれるようになった近年、この考え方は特に重要になっている。AI技術は情報検索やコンテンツ生成を支援するための個々のツールとして機能している。AIツールは非常に便利な反面、他のアプリケーションと柔軟に統合されているとは言い難い。そのため、エンドユーザーはいちいちアプリケーションを切り替えてプロンプト(指示文)を入力し、その結果をコピー&ペーストするといった手作業が増えてしまう可能性がある。
次回は、これからの時代に求められる生産性ツールについて考察する。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ソフトウェア開発のスピードと品質を両立するための手段として注目されている「テストの自動化」。だが自動化に適した領域とそうでない領域を見極め、適切なツールを選ぶのは簡単ではない。そのポイントを、基礎から分かりやすく解説する。
ビジネスに生成AIを利用するのが当たり前になりつつある中、ローコード開発への活用を模索している組織も少なくない。開発者不足の解消や開発コストの削減など、さまざまな問題を解消するために、生成AIをどう活用すればよいのか。
システム開発を任されても、「何から始めたらよいのか分からない」という担当者は多いだろう。そこで本資料では、システム開発の流れや専門用語といった基礎知識を分かりやすく解説するとともに、システム開発の4つの手法を紹介する。
システムの不具合によるさまざまなリスクを回避するには網羅的なテストを行う必要があるが、自社で行うのは難しい。そこで活用したいのが外部のテスト専門会社だ。本資料ではテスト専門会社を活用するメリットや具体的な流れを解説する。
レガシーシステムからの脱却が叫ばれる中、「ERP×ノーコードツール」のアプローチで基幹システムの刷新に取り組む企業が増加している。その推進に当たっては、「Fit to Company Standard」の概念を頭に入れておくことが必要になる。
繝弱�繧ウ繝シ繝峨�縲∬イ�縺ョ驕コ逕」縺ァ縺ゅk繧「繝翫Ο繧ー讌ュ蜍吶r縺ェ縺上○繧九�縺� (2024/11/12)
驥題檮讖滄未縺ョ繝「繝繝翫う繧シ繝シ繧キ繝ァ繝ウ縲譛驕ゥ隗」縺ォ蟆弱¥縺ォ縺ッ (2024/3/29)
「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...