PCの新規購入や「Windows 11」への移行を検討するのであれば、候補の一つになるのが「AI PC」だ。PC市場の話題をさらったAI PCが、実際にPC市場にどのような変化をもたらしているのかを押さえてこう。
消費者の購買意欲が高まり、多種多様なハードウェアが市場にあふれる12月。ノートPCに関しても、ベンダーや小売店は年末のギフトシーズンに合わせてセールを実施し、PC買い替えを検討している消費者の欲求を刺激する。
新世代ノートPCの“機能強化”に関しては、人工知能(AI)技術を導入した「AI PC」を見逃すことはできない。AI PCが本格的に市場に出てきたのは2024年だが、既にAI PCは市場で大きな存在になりつつある。「Windows 11」への移行ニーズが本格化する今、AI PCがPC市場にどのような変化をもたらしているのかを押さえておこう。
AI PCについて全ベンダーに共通する定義は存在しない。どのベンダーもAI PCに関して独自の基準を定めている。一般的な傾向として言えるのは、NPU(ニューラル処理装置)を搭載するなど、AI機能の処理に特化した「AIアクセラレーション」の機能を搭載していることだ。NPUがAI機能の処理を担うことで、AI PCは通常のPCよりもAI処理のパフォーマンスに優れるように設計されている。
普通のPCではなく、AI PCを使うメリットは何だろうか。価格で比較すればAI PCよりもはるかに安価なPCは存在するが、やはり機能面での違いがある。AI機能の処理をPCのローカルでできるのであれば、クラウドサービスにデータを送る必要はなく、セキュリティとプライバシーの確保ができる。生成AI機能をスムーズに動作させられれば、生産性の向上につながることが期待できる。
調査会社Canalysによると、2024年第2四半期(4〜6月期)のPC出荷のうち、AI PCは全体の約14%を占めた。2025年にかけて、AI PCの比率はさらに上昇することが確実視されている。
AI PCの出荷台数だけではなく、今後は機能も増えるはずだ。例えば生成AIを搭載したAIアシスタントである「Microsoft Copilot」(Copilot)は、2025年にさらに多様なツールに組み込まれ、一段と多様な用途で使われるに違いない。
ハードウェアベンダーはこぞってAI PC市場に参入している。LenovoはさまざまなAI PC製品を提供している。同社の見立てによれば、これからAI PCは出荷台数が増えるだけではなく。ハードウェアのスペック向上に伴ってPCの平均販売価格を引き上げる存在にもなる。
調査会社International Data Group(IDG)のプレジデントでLenovo Groupのエグゼクティブバイスプレジデントを兼任するルカ・ロッシ氏によると、AI PC市場の今後の展望は上々だ。特にハードウェアベンダーの販売を後押しする存在になるのが、MicrosoftのクライアントOS「Windows 11」への移行だ。「Windows 10」のサポート終了が2025年10月に控えているため、「PCの買い替えが促されることは間違いない」とロッシ氏は期待と込める。
Windows 10のサポート終了は、ハードウェアベンダーにとっては絶好のタイミングでやって来る。2020年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が発生し、テレワーク用のノートPC購入を余儀なくされた消費者や企業は少なくなかった。そのPCが古くなり始め、ちょうどWindows 10のサポート終了と相まってPC買い替えの大きな需要が押し寄せるのだ。
「PC市場は2025年に5〜10%の成長を遂げ、2026年も同様の傾向が続くだろう」とロッシ氏は語る。AI機能はまずはPC販売の後押しとなり、その後はタブレットやスマートフォン、IoT(モノのインターネット)デバイスなどもAI機能搭載によって販売が進む可能性があるという。「少なくともこれらのデバイスの販売は今後3年は伸び続けるはずだ」(同氏)
AI機能を搭載するデバイスには幾つかの共通点がある。まずはメモリ、それにSSDなどのストレージの容量が比較的大きいこと。CPUも一定以上の性能を備える他、AI機能に特化したNPUも搭載する。となれば販売価格は自然と上昇し、「PCの平均販売価格は今後3〜7%上がる」とロッシ氏は予測する。
次回は、AI PCがなぜ急速にPC市場の中心的な存在になる可能性があるのかを解説する。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
AI・ARで「探索」 人より商品とつながるSNSの行く末――2025年のSNS大予測(Pinterest編)
ビジュアル探索プラットフォームとしての独自の道を進み続けるPinterestはもはやSNSでは...
「お年玉はキャッシュレスでもらいたい」が初の3割越え あげる側の意向は?
インテージが2025年のお年玉に関する調査結果を発表した。
ポータルサイトの集客UPに欠かせないSEO対策 一般的なWebサイトと何が違う?
今回は、ポータルサイトのSEO対策に取り組みたいあなたへ、具体的な方法をわかりやすく解...