2024年10月にOpenAIが提供を開始した「ChatGPT Search」は、生成AIのどのような弱点を克服するのか。具体的な機能と併せて紹介する。
AI(人工知能)ベンダーOpenAIは2024年10月、AIチャットbot「ChatGPT」に検索エンジンを搭載した「ChatGPT Search」の提供を開始した。この新サービスは、生成AI利用時の“あの弱点”を克服するための解決策として注目を集めている。一体どのようなサービスなのか。
生成AIの利用時に大きな課題となるのが「ナレッジカットオフ」(AIモデルが学習したデータの最終更新日)の問題だ。AIモデルの知識は学習時点のデータに依存するため、最新の情報を取得できず、回答の正確さに欠ける点が懸念されていた。例えば、ChatGPTの基盤となる大規模言語モデル(LLM)「GPT-4o」のナレッジカットオフは2023年10月に設定されている。
各AIベンダーはこの問題を解決するための取り組みを進めており、OpenAIもそのうちの一社だった。2024年7月、OpenAIは生成AI機能と検索エンジンを組み合わせた「SearchGPT」を発表。同年10月にはChatGPT Searchとして一般提供を開始した。
当初は有償プランのユーザーのみアクセス可能だったが、2025年1月時点で無償ユーザーも利用可能だ。Webブラウザからアクセスできる他、Apple製のモバイルOS「iOS」やGoogleのモバイルOS「Android」向けのアプリケーションからも利用できる。
ChatGPT Searchは、従来型検索エンジンとLLMを統合し、Webを横断してリアルタイムの情報を収集することで、ナレッジカットオフの問題を解消している。具体的な機能として以下のようなものがある。
ChatGPT Searchの基盤となるLLMは、GPT-4oをファインチューニング(既存AIモデルをカスタマイズするためのトレーニング)したものだ。推論能力が強化されたことで、より洗練され、かつ正確な検索体験を提供するという。ファインチューニングでは、事後学習(Post-training:追加トレーニングや基盤となる事前学習済みモデルのアップデート)を実施しており、その一環であるディスティレーション(蒸留)のプロセスが重要だったという。
ディスティレーションとは、大規模モデルから学習した知識で小規模モデルを訓練する技術だ。具体的には、OpenAIの新モデル「OpenAI o1-preview」の出力を小型モデルに学習させることで、高い回答精度を維持しつつ軽量化を実現したという。
ChatGPT Searchは「Microsoft Bing」など外部の検索プロバイダーから情報を取得したり、メディアのコンテンツを活用したりする。OpenAIはReutersやTime、Le Mondeをはじめとするメディア企業複数社とパートナー契約を提携しており、パートナー企業はChatGPT Searchの検索結果に自社コンテンツを表示させるかどうか選択できる。
後編は、ChatGPT SearchとGoogle検索の違いを解説する。
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