MicrosoftのAI PCブランド「Copilot+ PC」の便利機能の一つである「Recall」に、セキュリティやプライバシーの問題があると複数の専門家がみている。どのような問題があるのか。
Microsoftが2024年5月に発表した人工知能(AI)技術搭載のPCブランド「Copilot+ PC」の機能「Recall」について、専門家はセキュリティやプライバシーに関する懸念を示している。Recallは、画面のスナップショットを5秒ごとに取得し、そのデータを基に過去の操作履歴や参照したコンテンツをたどれるようにする機能であり、Copilot+ PCの“目玉”の一つだ。具体的にはRecallの何が危険だとみられているのか。
Recallについてセキュリティ専門家が指摘するのは、「プロンプトインジェクション」といった、AI技術の仕組みを悪用する攻撃の影響を受ける可能性があることだ。プロンプトインジェクションとは、攻撃者が悪意のあるプロンプト(生成AIへの指示や命令)を入力することで、生成AIに想定外の動作をさせたり、エンドユーザーをだましたり、データを盗んだりする手法だ。
攻撃者がRecallのデータを不正入手した場合、標的のエンドユーザーがどのようなファイルやWebサイトが閲覧されたかが分かり、それによって機密情報の漏えいにつながるリスクもあるとセキュリティ専門家はみている。
MicrosoftはRecallのセキュリティに関する懸念が出ていることを受け、同機能の安全性の強化に取り組んできた。その一つが、Recallで処理されるデータが暗号化され、他のデータからは分離の上で保存される仕組みだ。不要であればRecallを削除することも可能にした。
セキュリティ専門家はMicrosoftのこうした取り組みを評価しつつも、脆弱(ぜいじゃく)な部分が残っていると指摘する。セキュリティ専門家のソリン・クロソウスキー氏はRecallについて、アタックサーフェス(攻撃対象領域)になりやすいことに加え、家族が同じデバイスを利用した場合にプライバシー問題が発生する恐れもあると指摘する。後者を解決するには「何がデータとして保存されるのかをエンドユーザーに明確に示すことが重要だ」と(同氏)は述べる。
セキュリティベンダー、トレンドマイクロの脆弱性発見コミュニティーZero Day Initiativeのダスティン・チャイルズ氏は、「Recallのセキュリティ強化が十分かどうかを判断するのはまだ早い」と語る。同氏が評価するのは、データアクセスに必要なキーが暗号化される点だ。「必要でなければインストールしないという選択肢もエンドユーザーにとっての安心材料になるだろう」(同氏)
カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)教授でセキュリティ研究者のアレッサンドロ・アクイスティ氏はRecallのセキュリティ強化について「攻撃リスクは下がったが、ゼロになったわけではない」と強調する。
セキュリティベンダーTrellix公共部門担当の最高技術責任者(CTO)、カラン・ソンディ氏は、AI技術の悪用によって攻撃の手口が巧妙化しつつあると指摘。Recallのセキュリティを強化するには、暗号化機能の強化や監査機能の追加といった施策が欠かせないという。ソンディ氏はRecallのユーザー組織への提言として「トレーニングによってエンドユーザーのセキュリティ意識を高めるとともに、厳格なアクセス制御を実装することが重要だ」と述べる。
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