仮想化技術には大きく「完全仮想化」と「準仮想化」の2種類がある。仕組みや特徴が異なる技術だが、IT管理者はどちらを選ぶべきなのか。
仮想化には大きく2種類の方式がある。ハイパーバイザーで動作するゲストOSの中身に何も変更を加えないで動作させる「完全仮想化」(full virtualization)に対して、ゲストOSに変更を加えて性能向上を図る仕組みを「準仮想化」(Para Virtualization)と呼ぶ。両者にはそれぞれメリットとデメリットがある。どのような違いがあるのかを解説する。
完全仮想化は、ハイパーバイザーが物理ハードウェアを直接仮想化して、仮想マシン(VM)を提供する方式だ。この方式は後述する仮想化支援機能が普及するまで、転送速度などのパフォーマンスに課題があった。準仮想化はパフォーマンスの低下を軽減するため、ゲストOSとハイパーバイザーが直接通信することで、オーバーヘッド(余分な処理負荷)を削減する。
その他、準仮想化では以下のリスクがある。
それに対して、完全仮想化は、ハイパーバイザー自体が事実上のホストOSとして機能するため、ハードウェアとゲストOSの分離を実現する。
完全仮想化では、ハイパーバイザーによってメモリやプロセッサといった物理リソースを抽象化して、論理的なリソースとして扱う。つまり、ハイパーバイザーは物理リソースと論理リソースを変換するが、仮想化技術が登場した初期はこの変換作業にオーバーヘッドが生じていた。そのため、ハイパーバイザーが作成できるVMの数は制限されていた。
しばらくして、プロセッサに「VMごとにメモリを割り当てる」といった、仮想化専用の命令を追加することで、仮想化処理を高速化する「仮想化支援機能」が開発された。例えばIntelの仮想化支援機能「Intel Virtualization Technology」(Intel VT)やAdvanced Micro Devices(AMD)の仮想化支援機能「AMD Virtualization」(AMD-V)などがある。
最近のプロセッサには標準で、仮想化支援機能が組み込まれている。そのため完全仮想化に伴うパフォーマンスの低下は問題でなくなりつつある。完全仮想化は、VMが他のVMやホストOSから分離されるというメリットがあり、変更を加えず任意のOSを使用できる。それに対して、準仮想化は完全仮想化ほどの支持を得られず、近年は実験的なユースケースでの利用にとどまっている。
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