日本IBMは、AI戦略についての説明会を開催した。基盤モデル「Granite 3」への取り組みや、“IT変革のためのAI活用”に関する最新状況が紹介された。
日本アイ・ビー・エムは2025年3月13日、AI(人工知能)戦略に関する説明会を開催した。同社の村田将輝氏(取締役常務執行役員 テクノロジー事業本部長 兼 Chief AI Officer)は、急速な発展を遂げたAI技術がもたらした成果として「昨年1年間を通じて、私たちは『AIを知る』『AIによって組織/人を強化学習した』と言っても過言ではない」と語った。その上で、2024年の同社のAI関連の成果として「デジタル変革のためのAIソリューションの提供開始」「400件を超えるパイロットプロジェクトの実施」「社内業務やIBM製品へのAIの組み込みを推進」の3点を挙げた。
IBMは自社開発の基盤モデルとして「Granite」を持っており、2025年3月12日には次世代モデルとなる「Granite 3.2」が国内発表された(米国では2025年2月26日に発表済み)。
村田氏はGraniteを「オープンで小規模な基盤モデル」と紹介し、オープンソースソフトウェアのライセンス「Apache License 2.0」で公開されることに加え、パラメーター数が80億個と基盤モデルとしては小規模な点を強調した。
2020年にOpenAIがスケーリング則(学習に使われるデータの規模や計算量、パラメーター数が増えるほどAIモデルの性能が強化されるという法則)を発表して以来、AIモデルを大規模化して性能向上を目指す動きが続いてきた。だが、大規模なAIモデルを開発したり学習させたりするのには膨大な演算リソースが必要となり、多額のコストを要する。
IBMはGraniteについて、同等規模の他のAIモデルとの比較では性能面で上回っており、これをファインチューニングして「目的に適したモデル(Fit for Purpose)」として活用することで、性能と経済効率の両立を目指すとしている。同社が目指す「ビジネス価値への転換」を実現するためには、AIが生み出す価値を高めることに加え、AIを運用するためのコストを下げていくことも必要であり、Graniteはこの点に貢献するものと期待される。
さらに村田氏は、同社のコンサルティングの分野での高い専門性およびITベンダー各社との戦略的パートナーシップを踏まえ、「AIサービスをインテグレート(統合)し、AIの能力をお客さまが迅速に、生産的に、安全に、ビジネス価値に転換する架け橋となりたい」と語り、「AIサービス・インテグレーター」としての役割を果たしていくとした。
IBMフェローの二上哲也氏(執行役員 コンサルティング事業本部 最高技術責任者<CTO>)は「IT変革のためのAI」に関する取り組みについて説明した。二上氏はIT業界が直面する「エンジニア人材不足」といった課題感に関しては現在も変わっていないと指摘し、「生成AIを使って開発や運用に適用することで、スピード向上と工数削減・適正化を実現していく」と説明した。AI技術を活用した支援としては、具体的には以下の5つの領域で取り組んできた。
これらの領域の中で特に引き合いが多かったのは「コード生成のためのAI」だったという。この領域では、「コードを追加学習した『IBM共通コード基盤モデル』を作成することで、IBMが思うコードやお客さまが通常使っていらっしゃるようなコードが出るようになる」といった取り組みにより、実績として「90%以上のコード生成を実現」できるようになったという。この意味は、「生成AIが出力したコードのうち、修正なしでそのまま使えたコードの比率が90%以上だった」ということだと同氏は説明している。
最後に二上氏は、2025年の取り組みとしてIT/ビジネスの両方の変革をAIで実現していくことを今年も変わらずにやっていくとした上で、中でも「AIのツールやエージェントを提供することにより、お客さまが現場で使いやすいAI環境を構築していくという点に着目して進めていきたい」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
取引先との受発注をFAXからECサイトに切り替えたものの、取引先の都合でFAX注文が残り、二重入力の手間や人的ミスの発生といった課題が発生しているケースは多い。その解決策として、AI-OCRを使ったECサイトとの連携について紹介する。
AIは生産性や顧客満足度の向上などさまざまな効果をもたらすが、その導入時に、AIモデルの管理/監視、従業員のスキルギャップ、データの一貫性などの課題に悩まされる企業は多い。これらを解消するために必要な、AI戦略の進め方とは?
企業にとって生成AIは、生産性向上や収益性増加をもたらす重要な技術だが、導入には多くの課題が存在する。PoC(概念実証)段階で約30%の企業が導入を断念するといわれる生成AIプロジェクトを成功に導くための方法を紹介する。
生成AIによって既存業務の生産性向上といった成果を上げる企業が増えている今、AIをより効果的に活用するための鍵になるといわれているのが、AI処理に特化した「Copilot+ PC」だ。AI PCが具体的にどのような変化をもたらすのかを解説する。
企業のDX支援などを手掛けるSpeeeでは、各チームの業務に最適化されたAIエージェントを、現場レベルで自律的に開発/活用するための環境を提供している。このようにAIとデータの活用を民主化した理由とシステム構成を解説する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...