「Granite」の新モデルも 日本IBM、AIの価値転換を本格化へ5つの領域でIT変革を促す

日本IBMは、AI戦略についての説明会を開催した。基盤モデル「Granite 3」への取り組みや、“IT変革のためのAI活用”に関する最新状況が紹介された。

2025年03月21日 05時00分 公開
[渡邉利和]

 日本アイ・ビー・エムは2025年3月13日、AI(人工知能)戦略に関する説明会を開催した。同社の村田将輝氏(取締役常務執行役員 テクノロジー事業本部長 兼 Chief AI Officer)は、急速な発展を遂げたAI技術がもたらした成果として「昨年1年間を通じて、私たちは『AIを知る』『AIによって組織/人を強化学習した』と言っても過言ではない」と語った。その上で、2024年の同社のAI関連の成果として「デジタル変革のためのAIソリューションの提供開始」「400件を超えるパイロットプロジェクトの実施」「社内業務やIBM製品へのAIの組み込みを推進」の3点を挙げた。

2025年はAIを価値に転換 「Granite」の新モデルも

 IBMは自社開発の基盤モデルとして「Granite」を持っており、2025年3月12日には次世代モデルとなる「Granite 3.2」が国内発表された(米国では2025年2月26日に発表済み)。

写真 日本アイ・ビー・エムの村田将輝氏

 村田氏はGraniteを「オープンで小規模な基盤モデル」と紹介し、オープンソースソフトウェアのライセンス「Apache License 2.0」で公開されることに加え、パラメーター数が80億個と基盤モデルとしては小規模な点を強調した。

 2020年にOpenAIがスケーリング則(学習に使われるデータの規模や計算量、パラメーター数が増えるほどAIモデルの性能が強化されるという法則)を発表して以来、AIモデルを大規模化して性能向上を目指す動きが続いてきた。だが、大規模なAIモデルを開発したり学習させたりするのには膨大な演算リソースが必要となり、多額のコストを要する。

 IBMはGraniteについて、同等規模の他のAIモデルとの比較では性能面で上回っており、これをファインチューニングして「目的に適したモデル(Fit for Purpose)」として活用することで、性能と経済効率の両立を目指すとしている。同社が目指す「ビジネス価値への転換」を実現するためには、AIが生み出す価値を高めることに加え、AIを運用するためのコストを下げていくことも必要であり、Graniteはこの点に貢献するものと期待される。

画像 Graniteと他オープンソースモデル(提供:日本アイ・ビー・エム)《クリックで拡大》

 さらに村田氏は、同社のコンサルティングの分野での高い専門性およびITベンダー各社との戦略的パートナーシップを踏まえ、「AIサービスをインテグレート(統合)し、AIの能力をお客さまが迅速に、生産的に、安全に、ビジネス価値に転換する架け橋となりたい」と語り、「AIサービス・インテグレーター」としての役割を果たしていくとした。

写真 日本アイ・ビー・エムの二上哲也氏

 IBMフェローの二上哲也氏(執行役員 コンサルティング事業本部 最高技術責任者<CTO>)は「IT変革のためのAI」に関する取り組みについて説明した。二上氏はIT業界が直面する「エンジニア人材不足」といった課題感に関しては現在も変わっていないと指摘し、「生成AIを使って開発や運用に適用することで、スピード向上と工数削減・適正化を実現していく」と説明した。AI技術を活用した支援としては、具体的には以下の5つの領域で取り組んできた。

  • コード生成のためのAI(AI for Code)
  • テスト自働化のためのAI(AI for Testing)
  • IT運用高度化のためのAI(AI for ITOps)
  • プロジェクト管理のためのAI(AI for PMO)
  • AI戦略策定とガバナンス(AI Strategy & Governance)
画像 AI技術を活用した5つの支援策(提供:日本アイ・ビー・エム)《クリックで拡大》

 これらの領域の中で特に引き合いが多かったのは「コード生成のためのAI」だったという。この領域では、「コードを追加学習した『IBM共通コード基盤モデル』を作成することで、IBMが思うコードやお客さまが通常使っていらっしゃるようなコードが出るようになる」といった取り組みにより、実績として「90%以上のコード生成を実現」できるようになったという。この意味は、「生成AIが出力したコードのうち、修正なしでそのまま使えたコードの比率が90%以上だった」ということだと同氏は説明している。

 最後に二上氏は、2025年の取り組みとしてIT/ビジネスの両方の変革をAIで実現していくことを今年も変わらずにやっていくとした上で、中でも「AIのツールやエージェントを提供することにより、お客さまが現場で使いやすいAI環境を構築していくという点に着目して進めていきたい」と語った。

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