AIが人間の仕事を“奪って”も給与が増えるのは、なぜなのかPwCのデータで判明

人工知能(AI)技術がビジネスに浸透しつつある中、人間へのさまざまな悪影響が指摘されている。ところが、PwCの調査で明らかになったのは「給与が増える」ことだ。どういうことなのか。

2025年06月30日 06時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

 人工知能(AI)技術の導入が従業員の給与アップにつながる可能性があることが、コンサルティング企業PricewaterhouseCoopers(PwC)の調査によって明らかになった。仕事を奪う「敵」とも見なされるAI技術がなぜ、従業員にとって利益となるのか。そして、AI技術導入によって給与を挙げるために必要なスキルとは。

仕事減で給与アップ? なるほどの理由はこれだ

 AI技術を導入すれば、さまざまな業務を自動化できる。しかしその結果、人間の仕事が減り、給与面も含めた悪影響を懸念する声もある。しかしPwCによると、AI技術は従業員にとってむしろプラスに働く可能性もある。その理由は、従業員の生産性の向上によって組織の収益が増え、従業員により高い給与を支払うための余裕ができることだと同社は説明する。

 PwCは2025年6月に、AI技術導入の影響を調査したレポート「The Fearless Future: 2025 Global AI Jobs Barometer」を公開した。全世界で約10億件の求人広告を分析したものだ。2022年にAI技術ベンダーOpenAIのチャットbot型AIサービス「ChatGPT」が登場したことを皮切りに、生成AIのビジネス利用が拡大。積極的に採用している業種ではAI技術の導入が売り上げや利益の向上につながったとPwCはみる。

 AI技術の売り上げや利益への影響については、別の考察もある。PwCは、AI技術を積極的に導入している業種ではそうでない業種に比べて従業員の給与の伸びが速いと指摘する。その例の一つが、ソフトウェア業界だ。同社によると、ソフトウェア業界ではAI技術を使った業務の自動化や開発の効率化が進み、従業員一人当たりの収益性が向上する傾向が見られる。一方で、AI技術の利用方法が限定的だとみられる業界では、従業員一人当たりの収益性は減少傾向にあるという。

 AI技術を導入すると、従業員には新たなスキルが求められるとPwCは指摘する。同社によれば、AI技術ツールの使用経験はもちろん、ツールによって得た回答をどう活用するかをよく考えたり、人ならではの付加価値を加えたりすることも重要だ。「組織は求人の際に、応募者の学歴や職歴だけではなく、AI技術に関するスキルも重視するようになった」(PwCチーフ・ピープル・オフィサーのフィリッパ・オコナー氏)

 PwCのCTO(最高技術責任者)を務めるウマング・パウ氏はAI技術について、「スキルが高い人にとって大きなチャンスをもたらすが、そうでない人を取り残すリスクもある」と指摘する。同氏は、従業員に対してAI技術のトレーニングが欠かせないと述べる。「AI技術の活用が進めば新たな産業や仕事が生まれる可能性があるため、その恩恵を誰もが受けられるよう、教育や技術へのアクセスを社会全体で強化すべきだ」(パウ氏)

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