「公式だから安心」ではない
GoogleもGitHubも“汚染”される? 「正規サービス悪用型」攻撃の恐怖
OSの標準ツールを悪用する「LOTL」攻撃が猛威を振るっている。「Google検索」や「GitHub」といった、日常的に使う正規ツールを悪用する攻撃の危険性を、実際の攻撃例を交えて解説する。
セキュリティベンダーBitdefenderは2025年6月、同社のエンドポイントセキュリティツール「Bitdefender GravityZone」が直近90日間で記録した70万件以上のセキュリティイベントを分析した結果を発表した。その結果、「重大」と評価された大規模な攻撃の84%で、OSの標準ツールを悪用する「環境寄生型」(LOTL:Living-Off-the-Land)攻撃手法が用いられていたことが判明した。「Google検索」やソースコード共有サービス「GitHub」といった正規のツールを悪用する攻撃の危険性を、実際の攻撃例を交えて解説する。
“古くても危険”なLOTL攻撃
LOTL攻撃は新しい概念ではない。用語が生まれたのは2013年だが、手法自体は2001年に登場したワーム(自己複製をしながら他のシステムに拡散するマルウェア)「Code Red」にまでさかのぼる。Code Redはメモリ内のみで実行されるワームで、ファイルのダウンロードやインストールを伴わずに数十億ドル規模の損害をインターネットインフラ全体に与えたとの報告がある。
OSに元から存在する正規のソフトウェアや機能を悪用するのがLOTL攻撃だ。Code Redの事例では、ワームがMicrosoftのWebサーバソフトウェア「IIS」(Internet Information Services)を悪用し、DoS(サービス妨害)攻撃を実行した。
信頼されている正規のソフトウェアや機能を利用する攻撃は、正常な動作と区別することが難しく、セキュリティツールでは検出できない場合がある。こうして検出を回避した攻撃者は、一度標的システムに侵入すると、偵察活動やファイルレスマルウェア、メモリ上で実行されるマルウェアの展開、認証情報の窃取といったLOTL攻撃を、被害者に気付かれることなく実行できる。
以下では、LOTL攻撃の他、正規のシステムを悪用した近年の攻撃事例を解説する。
ショートカットファイルとCloudflareのサービスを悪用する攻撃
セキュリティベンダーSecuronixは2025年6月、「SERPENTINE#CLOUD」と名付けられたマルウェアキャンペーン(一連の攻撃活動)を発見したと発表した。この攻撃は、LNK形式のショートカットファイルを利用して、標的システムに遠隔でペイロード(マルウェアの実行を可能にするプログラム)を送り込む。攻撃はフィッシングメールから始まり、エンドユーザーがメールの添付ファイルを開いてショートカットファイルを実行すると、次のペイロードのダウンロードが始まる。最終的に、プログラミング言語「Python」で記述されたシェルコードローダー(本格的な攻撃をメモリに呼び込むプログラム)がメモリに展開され、システムにバックドア(侵入口)を設置する仕組みだ。
SERPENTINE#CLOUDにおいて、攻撃者はコンテンツデリバリーネットワーク(CDN)ベンダーCloudflareのトンネリングサービスを悪用してペイロードをホストし、信頼性の高い証明書やHTTPS通信を利用している。この攻撃には国家が関与する攻撃者のような洗練された手口が見られるものの、一部のソースコードの特徴から、主要な国家支援型攻撃グループによるものではない可能性が高いとSecuronixは推測する。
検索結果に偽のサポート電話番号を埋め込む詐欺
攻撃者がAppleやMicrosoft、PayPalなど大手企業を装ってGoogle検索のスポンサー広告枠を買い取り、テクニカルサポート詐欺を仕掛けている。この攻撃はエンドユーザーを正規の企業Webサイトに誘導し、正規のサポート電話番号の上に偽のサポート電話番号を重ねて表示するという巧妙なものだ。エンドユーザーがその番号に電話をかけると、攻撃者が公式サポート担当者を装ってエンドユーザーのデータや金融情報を盗み出したり、デバイスへのリモートアクセス権を取得したりする。
セキュリティベンダーMalwarebytesはこの手口を「検索パラメーターインジェクション攻撃」と呼ぶ。エンドユーザーは、電話をかける前に企業の公式情報でサポート電話番号を確認することが推奨される。
GitHubリポジトリを武器化してセキュリティ専門家を標的にする攻撃
トレンドマイクロは2025年5月、脅威グループ「Water Curse」の活動を初めて観測した。このグループは、GitHubの正規セキュリティツールを装ったリポジトリを悪用し、悪意のあるビルドスクリプト(ソースコードからの実行ファイル生成を自動実行するプログラム)を介してマルウェアを配布する。
このグループは2023年3月から活動しており、少なくとも76件のGitHubアカウントを使用して、サイバーセキュリティ専門家やゲーム開発者、DevOps(開発と運用の融合)チームを標的にしている。この攻撃では、複数段階でマルウェアが実行される。まず標的システム内の認証情報やWebブラウザが保持するデータ、セッション識別子を外部に送信する他、リモートアクセスを可能にして標的システム内に潜伏し続ける。攻撃は、被害者が悪意のあるソースコードを埋め込まれたオープンソースプロジェクトをダウンロードすることから始まる。コンパイル時にソースコードが実行されるとペイロードが展開され、システムの偵察やデータの窃取が実行される仕組みだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget発 グローバルITピックアップ
TechTargetジャパンの記事の一部で生成AIを補助的に活用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳・編集して国内向けにお届けします。編集部による内容の確認を徹底しています。
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール」事例・サンプル集 -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティ教育はなぜ「年間計画」を立てる必要があるのか? -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティの重要性が伝わらない…… 効果がない社員教育から脱却する方法 -
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール訓練」導入ガイド 社員の意識を確実に高める仕組みの作り方 -
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
4
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
5
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
6
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
7
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
8
AI基盤は本当に「オンプレ回帰」する? Broadcomの言い分と企業の本音
-
9
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
10
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー