AIエージェントのブームが勢いを増す一方だ。これまではカスタマーサービスや開発分野での活用が多かったが、Googleがデータエンジニアリングとデータサイエンス用AIエージェントを発表した。
人工知能(AI)技術を活用し、自律的に判断や処理を実行するシステム「AIエージェント」が、真の意味で“自律的に”行動できるのかについていまだに議論があるものの、AIエージェントへの期待は過熱する一方だ。調査会社Gartnerのアナリスト、チラグ・デカテ氏は「企業は業務をAIエージェントベースで再構築する取り組みを進めている」と語り、今後数年間で大企業のほとんどがAIエージェントを採用していくと予測する。
これまで、AIエージェントはカスタマーサービスや開発者向けのアプリケーションが中心だった。そうした中、2025年8月5日(現地時間)、Googleはカンファレンス「Google Cloud Next Tokyo 2025」において、データエンジニリングとデータサイエンス向けの新しいAIエージェントを発表した。
「企業におけるデータエンジニアリング、データサイエンスは非常に複雑な問題だ」とデカテ氏は語る。AIエージェントは、データパイプライン(分析用のデータを準備するための一連の工程)の構築と分析処理においてデータエンジニアとデータサイエンティストを支援する。
調査会社The Futurum Groupのアナリストであるブラッドリー・シミン氏はGoogleの発表について、「まさに“福音”だ」と評価する。「これまでデータエンジニアとデータサイエンティストは、データ活用基盤の構築どころか、データリポジトリで必要なデータを探すことに作業時間の大半を費やしてきた。AIエージェントを利用できれば、業務を自動化でき、やれることが増える」(シミン氏)
Googleが発表したAIエージェントに関係する発表は以下のようなものだ。全てプレビュー版となる。
このAIエージェントは、複雑なデータパイプラインを簡素化および自動化する。自然言語のプロンプト(指示)を使用して、クラウドストレージ「Google Cloud Storage」などのデータソースからのデータ取り込み、データ変換、データ品質の管理といったワークフロー全体を効率化できる。
ノートブック環境(ソースコード記述・実行環境)「Google Colaboratory」(Google Colab)に搭載されていたデータサイエンスエージェントを、有償版の「Colab Enterprise」を通じてBigQueryとAIアプリケーション開発ツール「Vertex AI」上で利用できるようになった。大規模言語モデル(LLM)「Gemini」によって駆動するこのエージェントは、データ探索(EDA:データの特性や構造の理解)、データクリーニング(用途に合わせて不要なデータを排除して、データを分類すること)、特徴量化(データの特徴を数値で表現すること)、機械学習モデルによる予測など、分析ワークフロー全体を自動実行できる。プランの作成、ソースコードの実行、推論、そして結果の提示まで、ユーザーにフィードバックを提供し、リアルタイムでのコラボレーションが可能だ。
「Code Interpreter」はビジネスユーザーとアナリスト向けだ。クエリ言語(問い合わせ言語)「SQL」では実現が難しい、自然言語による複雑な質問をプログラミング言語「Python」の実行可能なソースコードに変換できる。BI(ビジネスインテリジェンス)ツール「Looker Studio」上に公開されている。
Googleはまた、ユーザー企業がさまざまなエージェントをまとめてコントロールし、自社のシステムに接続できるようにするAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)「Gemini Data Agents API」を発表した。最初のAPIとして公開されたのが「Conversational Analytics API」だ。これにより、ユーザー企業はLooker Studioの自然言語処理機能とCode Interpreter機能を自社のアプリケーションや製品に組み込める。
Gemini Data Agents APIとオープンソースのAIエージェント開発ツール「Agent Development Kit」(ADK)を利用することで、自社のビジネスプロセスに合わせたカスタムエージェントの構築も可能だ。
「Gemini CLI GitHub Actions」により、「Gemini」のさまざまな機能をコマンドラインインタフェース(CLI)で操作できるオープンソースAIエージェント「Gemini CLI」を、自動化ツール「GitHub Actions」上で使用できるようになる。これによりチームのコラボレーションが可能になった。問題の解決やプルリクエストのレビューを自動化できる。
今回のGoogleの発表について、デカテ氏は、「企業がデータエンジニアリングとデータサイエンスチームの生産性を向上させる方法について考える良い出発点になるだろう」と評価する。将来はさらにAIエージェントが進化し、さまざまなデータソースからの複雑なデータを一元的に処理できるようになる可能性が高いと同氏は予測する。
シミン氏は、AIエージェントを信頼すべきだと語る。「最先端のAIエージェントは、さまざまなツールを使用できるようになっており、構造化データの分析も得意だ」と語る。
とはいえ、ビジネスで扱うデータは全て構造化されているわけではない、という課題もある。これについてシミン氏は、楽観的な期待を口にする。「構造化されていないデータを読み込み、コンテキスト(文脈)と意味を理解し、必要な行動を起こすことが必要だ。生成AIやLLMに駆動されたAIエージェントならそれが可能だと思う」
今後はデータエンジニリングとデータサイエンス分野でのAIエージェント導入がさらに進むことが予想される。Google以外にも、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、そしてOpenAIのようなベンダーがこの課題に取り組んでいるからだ。
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)
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