訴訟に直面する米国テクノロジー企業
敗訴なら「Instagram」「WhatsApp」売却も? Metaに迫る“企業分割”の現実味
Facebookが過去にInstagramとWhatsAppを買収したことを巡り、FTCはMetaを提訴。2025年4月に始まった審理は、企業分割命令の可能性を含めて、業界全体に大きな影響を与える可能性がある。
Facebook(現Meta Platforms)は2012年にInstagramを、続いて2014年にWhatsAppを買収した。この2つの企業買収について、米連邦取引委員会(FTC)はソーシャルメディア市場における競争を不当に阻害したとして、2020年にFacebookを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴した。米連邦地方裁判所は訴状を棄却したが、FTCは2022年に再提訴し、2025年4月に審理が開始された。
この裁判はどのような結果を招くのか。2025年6月26日(現地時間)に情報技術・イノベーション財団(ITIF:Information Technology and Innovation Foundation)が主催したパネルディスカッションで、複数の専門家が議論した内容から考察する。
Metaに勝ち目はあるのか 敗訴したらどうなる?
今回の訴訟において、FTCはソーシャルメディアを狭義に定義し、Meta Platformsが所有する「Facebook」「Instagram」「WhatsApp」の競合サービスとして、ショート動画共有サービス「Snapchat」とソーシャルメディア「MeWe」のみを挙げている。しかしMeta Platformsは、動画共有サイト「YouTube」やショート動画共有サイト「TikTok」もソーシャルメディアに該当し、これらも競合に含まれると反論した。
「争点は、“YouTubeとTikTokがソーシャルメディアかどうか”だ。Meta Platformsからすると、“独占している”ように見えない程度に市場占有率を相対的に引き下げたい。これにはYouTubeとTikTokの存在が不可欠だ」。米国の法律事務所Benedict Law Groupのプリンシパル、ブレンダン・ベネディクト氏はそう語る。
“買収は無効”との判決が下る可能性は?
裁判でFTCは、Meta PlatformsのCEOマーク・ザッカーバーグ氏が当時Facebookの最高財務責任者(CFO)だったデビッド・エバースマン氏に送ったメールを持ち出し、“決定的な証拠”に当たると主張した。メールの中でザッカーバーグ氏は、買収の目的について「潜在的な競合相手を無力化するため」と明言していたのだ。
反トラスト法違反と認定された場合、Meta Platformsに対してInstagramやWhatsAppの売却命令が下される可能性がある。ベネディクト氏はデジタル分野での市場独占を立証するのは簡単ではないとしつつも、「FTCの訴訟が認められた場合、InstagramおよびWhatsApp事業の売却やスピンオフが自然な流れになる」と語る。
別の意見もある。シンクタンク(独立研究機関)Competitive Enterprise Institute(CEI)のテクノロジー&イノベーションセンターのディレクター、ジェシカ・メルギン氏は次のように語る。「FTCにとって難しいのは、“買収が消費者に損害を与えた”という主張の裏付けだ。買収後、Meta PlatformsはInstagramとWhatsAppを無料で消費者に提供してきた。経済的な損害を与えたとは言いにくい」
シンクタンクInternational Center for Law & Economics(ICLE)のコンペティションポリシー担当シニアスカラーを務めるダン・ギルマン氏もこれに同意する。「10年以上前に買収した事業の売却を企業に命じることは非常にまれだ。仮に売却したからといって、健全な市場競争につながるとは言い切れない。サービスの質が低下して、消費者に悪影響を及ぼす可能性もある」
メルギン氏は、別の問題を指摘する。「InstagramとWhatsAppがMeta Platformsから切り離されれば、どちらの国際競争力も低下する恐れがある。例えばWhatsAppは現在世界中で利用されているが、独立した場合、他国の似たようなサービスとの熾烈(しれつ)な競争に勝ち残れるだろうか。FTCの訴訟は、世界中で強力な影響力を持つ米国のIT企業の足を引っ張るのも同然だ」(メルギン氏)
訴訟に直面している米国の巨大テクノロジー企業はMeta Platformsだけではない。Google、Amazon.com、Appleも、反トラスト法などの法律違反の疑いで調査を受けている。Googleは2024年8月、検索エンジンに関して反トラスト法違反の判決を受けた他、2025年4月にはインターネット広告についても敗訴した。
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握 -
製品資料
[株式会社マクニカ] 「脆弱性総まとめ」解説 被害事例から考える必須の対策ポイント -
製品資料
[Splunk Services Japan合同会社] サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには -
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」完全ガイドブック:メリットから資格取得のポイントまで -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] はじめての「自治体/官公庁入札」 必要な知識がすぐに学べる入門ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
「世界一給与にハングリー」な日本のエンジニアが“雇用の安定”を求める理由
-
5
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
6
「VMwareのコスト」に悩んでいるユーザー企業に送る、VMwareを残す・捨てる基準
-
7
後付けガバナンスの崩壊 PayPalが設計段階からデータを縛る理由
-
8
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
9
迫る“インフラ崩壊”の危機 米英を相次いで襲った「PLC悪用攻撃」の全貌
-
10
「GPTかClaudeか」だけでは不十分 AI選定で情シスが見るべき3つの仕組み
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー