ITサービス管理(ITSM)でAI技術の活用が進んでいる。特にAIエージェントや生成AIといった先進的な技術の登場は、従業員との対話や文書作成といった業務を大きく変えようとしている。期待される進化とは。
AI(人工知能)技術はITサービス管理(ITSM)を根本から変える可能性を秘めているが、それはあくまでも「可能性」に過ぎない。実際にどのような効果が得られるかは、導入するAI技術の種類や、解決すべきITSMの課題によって、企業ごとに異なる。
本連載は、ITSMにおけるAI技術の現状を整理し、ITSMとAI技術の組み合わせに関する動向を探る。その上で、AI技術を駆使したITSMが自社にとって有効な選択肢かどうかを見極めるための指針を示す。
ITSMは、社内でITサービスを設計、提供、管理、改善するための戦略的な取り組みだ。IT部門の活動を企業の事業目標と直結させ、従業員が本来の業務に集中できるようにすることを目指す。
ITSMが対象とする活動は幅広く、具体的には以下がある。
AI技術はプロセスの自動化、意思決定の支援、従業員に提供するサービスの品質向上といった複数の領域で、ITSMに関する業務を強化できる。以下はその具体例だ。
アプリケーション障害やサーバダウンといったITインシデントの解決において、AI技術は主に以下の場面で活躍する。
AI技術はこれらの能力によって、ITチームがより少ない人員で迅速にインシデントを対処し、ダウンタイム(システム停止時間)とビジネスへの影響を最小限に抑えることを支援する。
AI技術を活用した仮想エージェントは、従業員から寄せられるIT部門への依頼や申請(サービスリクエスト)の処理を支援する。優れた自然言語処理能力を持つ仮想エージェントは、日常会話のような表現の要求を正確に理解し、処理するのに役立つ。IT担当者の助けを借りずに、従業員自身で解決までたどり着けるように案内し、自己解決を促す。
仮想エージェントを支える技術は飛躍的に進化した。画像やテキストを自動生成するAI技術「生成AI」を用いた仮想エージェントは、従業員からの要求を解釈し、文脈に即した回答を生成できる。
AI技術は、ITSMのプロセスが常に安全でコンプライアンスに準拠した状態を維持することにも貢献する。AI技術を駆使した分析ツールは、新しいノートPCの設定をスキャンして、適切な権限設定がされているかどうかを確認できる。クラウドサービスのネットワークトラフィックを分析し、攻撃の兆候を検出することも可能だ。
AI技術は、以下の方法でチケット管理を効率化する。
問い合わせの終了を判断し、自動でチケットをクローズするAI機能もある。
ITSMにおけるナレッジマネジメントとは、ITシステムや業務手順に関する知識を文書化し、有効活用できるようにすることだ。AI技術はこの分野で、主に2つの重要な役割を担う。
AI技術は多様な技術を指す語であり、ITSMにおいてそれぞれ異なる用途を持つ。以下に挙げる技術の違いを理解することは、課題に対して適切な技術を選択する上で不可欠だ。
分析AIは、システム内のパターン特定や異常検出に優れる。ITSMにおけるAI技術活用としては比較的確立された分野であり、今日ではシステム監視やインシデント管理用のツールが標準で搭載されている。最大の強みは予測能力で、システムの稼働データを継続的に分析して、サービス停止などの重大な事態が発生する前に潜在的な問題の兆候を警告する。
生成AIは、画像やテキストといったコンテンツを自動作成できる。ITSMの分野では比較的新しいAI技術であり、ここ数年で急速に普及した。現在では、チャットbotや仮想アシスタントを支える技術として広く利用されている。
AIエージェントは、AIモデルと実行機能を組み合わせることで、複雑な処理を自律的に実行するシステムだ。システム障害からの復旧といった複雑なタスクを自動化できる。単純な業務をスクリプト(簡易プログラム)で自動化する試みは以前から実施されており、これはAIエージェントの初期形態だと捉えることができる。
現代のAIエージェントは大規模言語モデル(LLM)を利用して、より優れた判断力と適応性で処理を自律的に実行する。これはITSMにおけるAI分野で急速に進化している分野の一つであり、ITSMベンダーはまだその能力を開発中だ。
次回は、AI技術の導入における課題と、今後の展望を紹介する。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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