ストレージベンダー“主要8社”のシェアと戦略、ストレージ注目技術を振り返る10年のトレンドを総括する

企業向けストレージ市場において、過去10年ほどに起きた変化と、それを受けてシェア上位を占める8社の戦略がそれぞれどのように変化してきたのかを振り返る。ComputerWeeklyのシリーズ記事のまとめだ。

2025年09月25日 05時00分 公開
[Antony AdsheadTechTarget]

 過去10年、多くの技術革新が起きたが、業界をけん引するストレージベンダーの名前は以前と変わっていない。とはいえ、各社のシェアには一定の変化がある。一方で10年を振り返ると、技術面でもさまざまな進化があった。本稿はストレージ業界に新たに登場した、あるいは普及したストレージ技術を振り返るとともに、ストレージベンダー8社のシェアの変化を分析する。

10年でストレージ業界に起きた変化とは

 ここ10年でストレージ業界に登場、普及したストレージ技術や製品・サービスとして、以下が挙げられる。

  • 1つのメモリセルに4bitを格納する「QLC」(クアッドレベルセル)など、大容量に貢献するNAND型フラッシュメモリ技術
  • ハイブリッドクラウドの運用を想定したストレージソフトウェア機能
  • コンテナ向け永続ストレージ(コンテナのデータを永続的に保管するストレージ)
  • ストレージをサービスとして利用するSTaaS(Storage as a Service)
  • AIワークロード(人工知能技術関連の処理やタスク)専用の読み書きを拘束するにするストレージ技術

AIワークロード

 クラウドサービスとオンプレミスシステムを組み合わせるハイブリッドクラウド環境に対応したストレージの提供は近年業界の大きなテーマなっていた。最近では、AIワークロード(AI関連の処理タスク)のニーズが拡大し、多くのストレージ製品の進化に影響を与えている。

データ管理

 NetAppやPure Storageなど、ストレージ管理からより明確にデータ管理へと製品戦略の方向性を変えるベンダーもある。

各社のシェア動向

 比較的新しく市場に参入したLenovoは印象的な躍進を遂げた。NetAppなどと提携し、中小企業向けストレージに特化することにより、調査会社IDCのランキングでは市場シェア4位にまで浮上した。

 調査会社IDCの調査による、2023年の企業向けストレージ市場シェアの割合(かっこ内は2022年)と、ComputerWeeklyによる分析は以下の通り。

  • Dell Technologies:26.1%(29.6%)
    • 企業向けストレージ製品のラインアップを強化し、市場シェア首位を維持。合併したEMCに由来するストレージアレイ製品を継承、発展させつつ、クラウド対応、コンテナ対応、STaaSも強化している。
  • Huawei Technologies:9.7%(9%)
    • 米国政府の規制と関税にもかかわらず、市場シェアで順位を上げた。AI対応、クラウド対応、STaaSの提供を拡大中。
  • Hewlett Packard Enterprise(HPE):8.3%(9.9%)
    • 厳しい市場で懸命に、賢く戦っている印象。ランキングでは順位を落としたが、成熟したクラウド対応と、オンプレミスインフラ向けサービス群「HPE GreenLake」の提供を通じてAI対応に重点的に取り組んでいる。
  • Lenovo:7.7%(4.1%)
    • 巧みなパートナーシップ戦略でランキングを上昇中。中小企業およびエントリーレベルの市場を独占している。
  • NetApp:7%(8.3%)
    • 市場シェアは低下したが、ファイルストレージ、ブロックストレージ、オブジェクトストレージ製品に加え、STaaS、コンテナオーケストレーター「Kubernetes」アプリケーション向けのストレージ、ハイブリッドクラウド対応ストレージを構築してきた。
  • Pure Storage:6.1%(6%)
    • オールフラッシュストレージ、STaaS、クラウド対応ストレージへ注力している。データ管理、コンテナ対応を進めながら、製品、サービス全般にわたってオールフラッシュストレージの提供を強化している。
  • Hitachi Vantara:4.9%(4.4%)
    • データ管理基盤「Hitachi Virtual Storage Platform One」(VSP One)がストレージ製品を先導。ハイブリッドクラウドおよびコンテナ対応製品ラインアップの一部としてファイルストレージ、ブロックストレージ、オブジェクトストレージをVSP Oneと「Hitachi EverFlex」を介して提供している。
  • IBM:4.7%(4.4%)
    • ストレージ製品をクラウド対応、コンテナ対応、STaaSとして再構築。メインフレームから最新技術まで対応する幅広いストレージ製品を提供している。

翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)

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