調査によると、一時は停滞していたと見られていたプライベート無線ネットワーク市場が再び成長に転じているという。どのようなユースケースで採用されているのか。今回の成長にはどのような特徴が見られるのか。
区画ごとに基地局を設置する「セルラー方式」による移動体通信システムをユーザー組織が自営網として運用するプライベートネットワークを、「プライベート無線ネットワーク」(自営無線網)と呼ぶ。代表例が「5G」(第5世代移動体通信システム)を使用する「プライベート5G」(日本国内では主に「ローカル5G」と呼ぶ)や、「LTE」(Long Term Evolution)などの「4G」(第4世代移動体通信システム)を使う「プライベート4G」だ。
通信事業者向けコンサルティング企業STL Advisory(STL Partnersとして事業展開)が2025年8月22日(現地時間)に公開した、全世界のプライベートネットワークに関する調査レポート「Private Network Deployment Tracker」によると、プライベート無線ネットワークの需要は2024年後半に一時低下したが、2025年前半には再び成長に転じたという。
これまで製造や物流の現場では、プライベート4Gで必要な接続性を十分確保できるため、プライベート5Gの導入が特に伸び悩んでいた。しかし、今回は異なる傾向が観察された。
レポートによると、2025年1月から7月にかけて、新たに98局の新しいプライベート無線ネットワークが導入され、2014年の調査開始以来、累計で962局に達した。
内訳を見てみると、製造業が22%と最大で、次いで港湾が12%、空港が10%、メディア・エンターテインメント・スポーツ分野が10%と続く。製造業の強い需要が明らかになった形だ。特に、運用の自動化やIoT(モノのインターネット)を目的とした展開が多いという。
レポートによると、主に選ばれているのはプライベート5Gで、ネットワークを小規模な論理ネットワークに分割する「ネットワークスライシング」、プライベート4G、プライベート5Gとプライベート4Gのデュアル構成など、他の方式を上回った。STL Partnersは、「5Gの高い性能が企業のニーズを十分に満たしており、複雑な方式をあえて導入する必要性は少ない」と指摘する。実際、2024年1月以降の新規導入の73%がプライベート5Gだった。
2025年9月、コンサルティング企業SNS Telecom & ITも同様の調査レポートを公開した。こちらはプライベート5Gへの投資額について、2025年から2028年の間の年平均成長率を約41%と見積もり、2028年末までに50億ドルを超えると予測している。
STL Partnersのリサーチアナリスト、クルスナ・シン氏は次のように分析する。「2024年初頭から、業界全体でプライベート無線ネットワークの利用方法に大きな変化が見られた。基本的な接続の提供から、現場の運用効率とリアルタイムでの制御が重視される方向にシフトしている。この変化が、プライベート5G成長の主な要因だ」
STL Partnersは、もう一つの大きな傾向として、小規模かつ専門性の高いベンダーの台頭を指摘する。市場シェア上位10社には、NokiaやEricssonといった大手企業が名を連ねる一方、Mavenir SystemsやBoldyn Networksといった新興ベンダーが割って入った。
シン氏は次のように分析する。「ベンダーの多様化は、プライベート無線ネットワーク市場が、大手ベンダーが主導した初期段階を脱しつつあることを示している。現在、企業はベンダーの市場規模ではなく、自社の要件や専門知識に基づいてソリューションを中心に選択するようになってきている。各ベンダーの製品やサービスの差別化が進んでおり、企業側も、業界ごとに最適な採用戦略が異なることに気付いたようだ」
STL Partnersは、プライベート無線ネットワークについて、以下の3つの要素を定義している。
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)
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