「4G」「5G」の“プライベート無線”がユーザー200%増、大躍進の理由は?シェアは5Gより4Gが優位

5Gや4Gの「プライベート無線ネットワーク」の導入が広がりつつある。Juniper Researchの最新調査によれば、導入企業は今後5年で2.9倍に増加。信頼性やセキュリティの向上を背景に、市場拡大が進む見通しだ。

2025年08月26日 05時00分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

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 区画ごとに基地局を設置する「セルラー方式」による移動通信システムをユーザー組織が自営網として運用するプライベートネットワークを、「プライベート無線ネットワーク」(自営無線網)と呼ぶ。代表例が「5G」(第5世代移動体通信システム)を使用する「プライベート5G」(日本国内では主に「ローカル5G」と呼ぶ)や、「LTE」(Long Term Evolution)などの「4G」(第4世代移動体通信システム)を使う「プライベート4G」だ。

 通信専門の調査会社Juniper Researchは2025年3月、企業におけるプライベート無線ネットワークの導入には明確な利点があり、導入の必要性も高まっているが、近年のプライベート無線ネットワークの市場拡大は緩やかだったとの調査結果を発表した。だが、その2カ月後の2025年5月に発表した調査レポートでは、「世界のプライベート無線ネットワークの導入企業数は2025年のほぼ累計2500社から、2030年までに194%増加し、累計7000社以上に達する」との見通しを示した。

市場拡大を後押しする要因は「セキュリティ」と「低遅延」

 Juniper Researchの調査レポート「Global Private Cellular Networks Market 2025-2030」は、5年間にわたる8万2000件以上の市場統計を含むデータを基に、60カ国以上のプライベート無線ネットワーク市場を分析したものだ。

 Juniperは調査レポートで、プライベート無線ネットワークの大幅な市場拡大が見込まれる要因の一つして、以下を挙げている。

  • データに関する規制が強化される中、より高度なデータ管理やセキュリティに対する需要が高まっている
  • プライベート無線ネットワークの信頼性向上と低レイテンシ(通信遅延)により、リアルタイムの脅威検知と対応が可能になっている

 業界別では、製造業でプライベート無線ネットワークの導入が最も進む見通しだ。高度なプロセスオートメーションが実現され、インフラが整備されているからだ。製造業は2030年には、金額ベースで49%の導入シェアを占めると予測されている。これに対し、医療を含む他の業界は、はるかに小さい導入シェアにとどまる見通しだ。コストがかさみ、インフラが未成熟であるため、投資回収が非常に困難だからだ。

 調査レポートによると、プライベート無線ネットワークが他の主要な業界にも普及するためには、供給者側が中立的なホスト主導のビジネスモデルを選択肢に加えることが不可欠だという。このビジネスモデルは、サードパーティーが屋内の通信ネットワーク機器を複数の通信サービスプロバイダーにリースするネットワークインフラモデルに基づいている。Juniper Researchは、このインフラをプライベート無線ネットワークに適用することで、企業と移動体通信事業者(MNO)の両方にとって、全体的なコストが下がると指摘している。これにより、企業は安全なプライベート無線ネットワークにアクセスでき、MNOはより良い屋内通信環境を顧客に提供できるという。

5Gは市場の半分以下にとどまる見通し

 2025年3月に発表された調査結果によると、プライベート無線ネットワークの世界市場規模は2028年に122億ドルとなり、2025年(見込み額)と比べて114%増加する見通しだ。Juniper Researchによると、ここ数年の市場拡大のペースは緩やかだったが、これは主に、プライベート無線ネットワークの導入に伴うコストや、統合の複雑さといった課題に起因していた。だが、プライベート無線ネットワークへの投資を検討する企業が増えており、今後数年間に予想される大幅な市場拡大は、市場における重要な転換を示しているという。

 5G技術は、2019年からプライベート無線ネットワーク向けに商用化されている。ただし2028年のプライベート無線ネットワークの市場規模のうち、プライベート5Gは半分以下の56億ドルを占めるにとどまる見通しだ。Juniper Researchは、4GがMNOのほとんどの顧客の要件を満たしているため、5G投資は不要となり、5G市場の拡大が妨げられているとの見解を示している。

 Juniper Researchは2025年3月に発表した調査結果の中で、4G技術は運用コストが低い上、製造や物流などの市場に接続サービスを提供するには、4G技術で事足りることが、プライベート4Gの継続的な市場拡大を支える主な要因だと述べている。一方で5Gに関しては、プライベート無線ネットワークが5G導入を促進する主な要因となり、MNOやネットワーク事業者が5Gの事業を収益化する重要な機会になっているとも指摘している。

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