AI技術の進化と普及が進む中、AI関連の資格保有者の市場価値が高まっている。AWSの新しいAI認定資格の概要と、試験合格に向けた効果的な学習法を、筆者の体験談から紹介する。
かつてはSF(サイエンスフィクション)の世界の存在だった人工知能(AI)は、今やビジネスに不可欠な技術となった。現在、企業が業務の自動化や、新たなアイデアの創出にAIを活用することは当たり前となり、機械学習や大規模言語モデル(LLM)に通じた人材は、組織運営に欠かせなくなっている。
こうした状況で、AIリテラシーを身に付けることができれば、安定したキャリアが期待でき、高収入のポジションに就くチャンスも高まる。
このようなニーズに対応するため、Amazon Web Services(AWS)はAWS認定資格「AWS Certified」に、「AWS Certified AI Practitioner」(AIF-C01)を新設した。この認定資格の目的は、資格保有者が、機械学習や生成AIなどの概念とユースケースに関する総合的な知識を備え、AWSのサービスを使いこなせる人材であると証明できるようにすることにある。
本稿では、筆者がAWS Certified AI Practitionerを取得した実際の経験を基に、試験の範囲、効果的な学習方法、取得してよかったのかどうかを紹介する。
AWS Certified AI Practitionerの概要は以下の通りだ
試験範囲は、以下の5つの分野に分かれている。
全体の20%を占める。AIや機械学習、深層学習(ディープラーニング)など、基本的なAI関連用語の定義、教師あり学習や教師なし学習などのトレーニングの種類、不正検出や自然言語処理(NLP)などの一般的なユースケースが含まれる。
全体の24%を占める。深層学習モデル「Transformer」(トランスフォーマー)ベースのLLM、拡散モデル、プロンプトエンジニアリングなど、生成AIの基礎知識が含まれる。生成AIアプリケーション開発サービス「Amazon Bedrock」やAIアシスタントサービス「Amazon Q」など、クラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)のAI関連サービスについての知識も含まれる。
全体の28%を占め、最も配点が高い。ファインチューニング(追加学習)、検索拡張生成(RAG)など、モデルのカスタマイズについてや、ゼロショット(Zero-shot)とフューショット(Few-shot)など、プロンプトエンジニアリングといった分野をカバーしている。
全体の14%を占める。公平性、透明性、バイアス(偏見に基づいたコンテンツ生成)の緩和を含む、責任あるAIの原則が含まれる。
全体の14%を占める。データの暗号化といったセキュリティ技術や、AIに関係するさまざまな規制や法律、コンプライアンスとガバナンスをサポートするAWSサービス、ガバナンス戦略について扱われる。
学習に当たり、以下のようなAWS公式の学習リソースを活用した。
AWSが提供するデジタルラーニングサービスで、試験範囲に沿って構成されており、各セクションの最後に練習問題が用意されているため、非常に効果的だった。
オンライン学習サイトで、詳細にわたる動画学習コースを提供している。MLモデル構築サービス「Amazon SageMaker」やAmazon BedrockなどのAWSの主要なAIサービスのハンズオンデモが視聴できるので、理論だけでは理解しにくい機能について学ぶことができた。
他にもAWSの公式ドキュメントを調べ、各サービスの概要と実際のユースケースについて学習した。模擬試験も積極的に受験した。模擬試験では、本番の問題よりも難しい問題が出題されたこともあり、自信を付けるのに役立った。
学習中にはしっかりメモを取ることを勧めたい。試験前に見返せば素早く復習できる。
学習計画としては、筆者は合計約40時間、4週末を準備に費やした。内訳は動画の視聴が15時間、AWSに実際にデプロイ(展開)する練習に15時間、練習問題や模擬試験に10時間だ。
本格的に学習を始める前に一度、模擬試験を受けることを特にお勧めしたい。もし大学の入試問題を本番前に知ることができれば、学習内容を絞り込んで効率的に勉強できるだろう。筆者は常にこの戦略を実践し、スクラムに関する認定資格「Professional Scrum Master」(PSM)と「Professional Scrum Product Owner」(PSPO)、そして今回AWS Certified AI Practitionerを取得できた。
試験問題には偏りがなく、十分にクリアできる内容だった。受験当時は制限時間2時間、出題数85問だったが、1時間足らずで全て解き終えることができた。
幾つかの問題は最後に見直そうと思ってチェックしておいたが、結局そのまま提出した。最初の直感は正しいことが多いと個人的には思っているので、絶対に正しいという確信がない限り、後から解答を変更することはあまりない。
ほとんどの問題はシナリオ形式で、ビジネス上の特定の課題を解決するために、どのAWSサービスを選ぶべきかを尋ねられた。例えば、画像分析には「Amazon Rekognition」を使うといった知識があれば、高得点につながるだろう。
繰り返し出題されたトピックは、Amazon SageMaker、Amazon Bedrock、Amazon Q、プロンプトエンジニアリング、教師あり学習、トークンの使用、責任あるAIの原則などだ。どれも十分に学習していたので、自信を持って解答できた。
個人的には、AWS Certified AI Practitionerは、非常に価値のある投資だと思う。AIとMLについての基礎知識を持ち、AWSのAIサービスを活用できる人材だと自己アピールできる。「AWS Certified Machine Learning Engineer - Associate」や「AWS Certified Machine Learning - Specialty」といった、より高度な認定資格の取得にもつながる。
さらに、履歴書に書ける資格以上の意味がある。ステークホルダーとAIについて話し合ったり、AIプロジェクトに参加したり、既存のシステムにAIを組み込む方法を特定したりする際に自信を持って臨むことができる。今後のAIファーストの社会に有意義に参加するための基盤となるのだ。取得して後悔することはない。
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)
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