電力供給や通信インフラに課題を抱えるインドでは、データセンターの建設以外にもさまざまな取り組みが進められている。
AI(人工知能)需要の高まりやクラウドサービスの普及に伴い、データセンターは社会に必要不可欠な社会基盤となりつつある。ただし、従来型のデータセンターには、莫大な建設費用や拡張のしにくさ、電力消費量といった課題がある。これに対して、工場であらかじめ製造されたモジュールを現場に組み立てることで、データセンターの迅速な展開と柔軟な拡張を実現するのがモジュール型データセンター(Modular Data Center、以下MDC)だ。
インドでは、Schneider Electric、Huawei Technologies、Dell Technologies、Vertiv Holdingsといった多国籍企業がMDCへの投資を進めており、同国でエッジデータセンターを展開するITベンダーVueNow Groupなどと協力している。
英国に本社を置く世界的な不動産コンサルティング企業Savillsのインド法人、Savills Indiaのスリハリ・スリニバサン氏(データセンターサービス部門ディレクター兼責任者)は、インドのデータセンター市場について次のように述べている。「インドの大手通信企業Bharti Airtelが展開するデータセンター事業『Nxtra by Airtel』やAIスタートアップ(新興企業)Yotta Data Servicesは、「データセンターTier」ティア2の複数拠点でMDCの展開に熱心に取り組んでいる。インドのデータセンター合弁事業Digital Connexionも、チェンナイでMDCを早期に導入している」。データセンターTierは、データセンターの稼働信頼性の度合いや設備の程度を格付けする基準だ。Tierは1〜4まであり、4に近づくほどデータセンターの稼働信頼度が高いことを意味する。
MDCの活用が広がる中、ユーザーのAI活用には変化が起きている。農業テックのCropin Technology Solutionsは、エッジコンピューティングと「モジュール型AI」を使って農業データの処理を最適化している。インドのAI医療スタートアップNIRAMAI Health Analytixは、AI駆動のがんスクリーニングツールの計算にモジュール型AIを利用している。モジュール型AIは、必要なAI機能を効率よく配置し運用するための仕組みだ。
配電システムベンダーGroup Rhineのアイシャニ・バッシ氏(ディレクター)によると、小売業では、エッジに配置する小規模データセンター「マイクロデータセンター」の活用が進んでいる。同業界では、リアルタイムの在庫管理やPOS(販売時点情報管理)システムのデータ分析にマイクロデータセンターが利用されているという。製造現場でのデータ処理や倉庫の自動化、スマートシティの交通や監視データの管理にモジュール型AIが使われている場合もある。
「大規模なデータセンターキャンパスも、MDCの方式で設計されるようになる可能性がある」。Uptime Instituteのジェイ・ディートリッヒ氏(サステナビリティ担当ディレクター)はこう指摘している。同氏によると、データセンター全体で500メガワットの電力を使う計画がある場合、巨大なデータセンターを1棟建設するのではなく、電力供給能力に合わせて複数の建物を建てるといった選択肢を持つことができるようになるという。
AIの訓練や推論、サーバ処理など、用途ごとにデータセンターをモジュール化することも可能になる。「データセンターを用途ごとにモジュール化すれば、用途に合った電源設備や冷却設備を用意できる。さらに、一部の区画を新規システムに置き換えて更新しながら、他の区画を稼働し続けることができるようになる」とディートリッヒ氏はMDCの将来像を予測している。
MDCの勢いが増す一方で、データセンター市場には課題もある。Gartnerのナレシュ・シン氏(シニアディレクターアナリスト)によると、中東や東南アジアなどでは、顧客需要が現れるのを待つ間に、データセンターやGPUへの過剰投資で苦しむサービスプロバイダーがいるという。「インドは、市場のポテンシャルに見合った適切な投資を進め、このような事態を避けなければならない」(シン氏)
建設業界のある企業でCIOを務めるパービィ・シャー氏は、既存のデータセンターにMDCの仕組みを後付けするのは困難だと指摘する。特に中堅企業にとっては、MDCに切り替えるに当たっての初期投資が負担となる恐れがある。「規制の厳しい業種でMDCを適切に構築できない場合、コンプライアンス面で問題が発生する可能性もある」(シャー氏)
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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