「テレワーク無理? なら辞めます」にどう対抗すれば――IT人材獲得の打ち手は従業員が求める働き方と企業戦略のギャップ

ランスタッドは、日本のIT人材市場を対象とした調査報告を公開した。求人需要や報酬動向から、企業に新たな採用、定着戦略が求められていることが明らかになった。

2025年10月24日 18時00分 公開
[TechTargetジャパン]

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 ランスタッドは2025年10月22日、「日本のIT&テクノロジー業界マーケット&サラリーレポート2025」を公開した。同レポートは、国内のIT人材市場を対象に、7つの職種群にわたる人材供給、需要、報酬データを包括的に分析したもの。IT人材市場の現状と課題を明らかにしている。

 同レポートの基となるデータは、求人サイト、「LinkedIn」といったサービスの二次調査データ、労働市場分析会社Lightcast、給与データ会社Salary Expertなどの外部データだ。

より良いIT人材に長く働いてほしい、どうすれば?

 ランスタッドによると、日本の労働力不足は深刻化しており、2040年には最大1100万人が不足する可能性がある。日本政府は2023年から「三位一体の労働市場改革」を掲げ、賃上げや外国人労働者の受け入れ促進を進めてきた。2024年10月時点の外国人労働者数は過去最高の230万人に達している。

 人手不足が続く中、需要が高まっている専門職にはどのようなものがあるのか。ランスタッドのデータに基づく求人件数の標準水準と比較すると、2025年半ばまでにセキュリティ分野の求人需要は500%超、データエンジニアの求人需要は約300%に達すると同社は予測している。

 日本企業における人材配置の重点分野は、「クラウド、コンテナ、仮想化」(52%)、「サイバーセキュリティ」(51%)で、安全なクラウド移行を焦点としていることがうかがえる。

 一方、データからは人工知能(AI)スキルを有する人材の不足が見て取れるとランスタッドは指摘する。同社によると、AI導入を進める企業の半数以上が、AIモデルのカスタマイズや微調整に関する専門知識を持っていない。同専門知識を持つ企業は25%にとどまった。ランスタッドは「AI利用に的を絞った人材育成が喫緊の課題だ」と警鐘を鳴らす。

 調査からは、日本特有の離職の理由があることが浮き彫りになった。ランスタッドによると、日本企業における離職理由の第1位(39%)は「勤務地の柔軟性がないこと」で、勤務の柔軟性とテレワークの選択肢を重視していることが分かった。さらに、回答者の90%は完全テレワークの職種を希望していることも明らかになった。ランスタッドによると、この割合はグローバル基準と比べても突出している。特にセキュリティやIT系営業職では、求人の58%がリモート勤務を前提としている実態もある。

 地域別報酬では、東京都が依然として高水準を維持している。シニア人材の約8割が東京に集中し、東京の給与水準は全国平均より約20%高いことが明らかになった。

 ランスタッドのリチャードソン・アレクサンダー氏(デジタルタレントソリューション事業本部アソシエイトディレクター)は、魅力的な候補者を引き付けるために「金銭的な報酬以外に、柔軟な働き方、テレワークを実施できることが重要だ」と説明する。同氏によると、企業が候補者と良好な関係を築き、迅速なスケジュール調整や詳細なフィードバックを提供するなど、採用プロセスにおいて積極性を示すことも欠かせないという。

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