さまざまな企業で利用が広がりつつある「AIエージェント」と「チャットbot」は類似しているが、同じではない。それぞれの仕組みを見て、どう違うかを解説する。
大規模言語モデル(LLM)を使い、業務を自動化する技術として、AIエージェントとチャットbotがある。この2つは似ているが、違いがある。本稿はそれぞれの仕組みを説明し、どちらを採用するかを決めるための判断基準を考える。
AIエージェントとチャットbotは、それぞれ異なる技術を用いて主要な目的を達成する。各機能は重なることがあり、チャットbotがAIエージェント的な性質を持つ場合や、エージェントがチャットbot的な性質を持つ場合もある。以下で、AIエージェントとチャットbotのそれぞれの仕組みを見てみよう。
AIエージェントは、LLMと、1つ以上のソフトウェアツールやアプリケーションを含むことが一般的だ。ユーザーのPCの個人フォルダといったデータリソースにアクセスできるAIエージェントもある。
LLMを用いてユーザーからのプロンプトを解釈し、利用可能なツールやデータを使って自律的にタスクを判断、実行できるのもAIエージェントの特徴だ。LLMは実行するコマンドやAPIコールを指定し、AIエージェントはその指示を実行する。
例えば、ローカルファイルシステムのデータを管理するために設計されたAIエージェントは、ファイルの読み取り、書き込み、コピーを実行するためにOSユーティリティにアクセスする場合がある。ユーザーが「昨日作成したPDFファイルを全てリストアップして」といったプロンプトを送信すると、LLMはAIエージェントに必要なコマンドを実行させ、ファイルのリストを表示させる。
AIエージェントは長年にわたって様々な形で存在してきた。しかし最近までは主に、あらかじめ用意されたスクリプトに従って要求に反応する仕組みだった。近年のAIエージェントはLLMを使用することで、幅広い内容のプロンプトを解釈できるようになっている。
チャットbotは自然言語処理技術を使用してユーザーによる入力を解釈し、返信を生成する。チャットbotにはテキストや音声など、さまざまな形での入力が可能な種類がある。
AIエージェントと同様に、チャットbotにも長い歴史がある。現代のAIチャットbotの元祖とも言えるのが、1960年代に開発された自然言語処理プログラム(NLP)「ELIZA」だ。ELIZAは、心理療法士のカウンセリングをコンピュータに代行させる目的で開発された。
チャットbotの歴史を見ると、大半のチャットbotはあらかじめ作成された応答のライブラリに依存して会話を実施していた。その結果、チャットbotが会話できるトピックは限られていた。近年のチャットbotは、LLMを使用することで幅広いトピックについて話すことができるようになった。チャットbotのユーザー企業の中には、ユーザーに不正確な情報や無関係な情報を提供してしまうリスクを軽減するために、チャットbotが生成する内容を意図的に制限するところもある。
AIエージェントとチャットbotの境界線が曖昧になる場合もある。これは、チャットbotとエージェントの両方の機能が同じツールで利用できるようになった場合に発生する。
例えば、カスタマーサービスで利用するチャットbotを例に考えてみる。このチャットbotの主な目的は顧客の質問に答え、情報を提供することと設定されている。しかし、パスワードをリセットしたり、注文をキャンセルしたりするといった、会話の範囲を超えた特定のアクションを遂行することもできる。後者の機能を踏まえると、このチャットbotはAIエージェントと見なされる可能性がある。とはいえ、チャットbotとAIエージェントの両方の機能を提供するツールは通常、どちらか一方の機能に重点を置いており、その主な機能に基づいて分類される。
ある特定のビジネスニーズに対して、AIエージェントとチャットbotのどちらが適しているかは、以下の4つの質問から検討できる。
対話のみであれば、ほとんどのケースでチャットbotが最適だ。情報を共有するだけではなく、タスクの操作や実行が必要な場合は、AIエージェントが必要になる。
AIエージェントの実装には、チャットbotよりもより多くのソフトウェア開発リソースが必要となる。チャットbotは、コンポーネントが少ないだけではなく、すぐに導入できる既製品もあるため、社内で開発する必要性は少なく、導入しやすい。
機密性の高いデータを扱う使用ケースでは、チャットbotはAIエージェントと比べ、セキュリティリスクを抑えやすいと考えられる。とはいえ、チャットbotもリスクがゼロというわけではない。企業は、チャットbotまたはAIエージェントを利用する際に、セキュリティとプライバシーの対策を講じることが重要だ。
AIエージェントは広範なタスクを実行できるので、ニーズの変化や複雑化に応じやすい。対照的に、チャットbotは対話機能に限定されるため、将来的に機能の追加が必要になる可能性のある使用ケースにはあまり適していない。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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