Webブラウザに潜む脅威の検出と対処
標的型攻撃を防ぐ新アプローチ「BDR」とは何か EDRとの違いは?
サイバー攻撃の脅威が増す中、新たな対策手法として注目を集めているのが「BDR」だ。その機能と従来のセキュリティ対策ツールとの違いを解説する。
標的型攻撃の脅威が拡大している中、攻撃の種類や用途に応じた専用のセキュリティ対策ツールが登場している。ネットワークの脅威を検出して対処する「NDR」(Network Detection and Response)、PCやサーバなどのエンドポイントに侵入した脅威に対処する「EDR」(Endpoint Detection and Response)、複数の領域で脅威を検出して対処する「XDR」(Xtended Detection and Response)などが挙げられる。
そうした中、新たな技術として注目を集めつつあるのが「BDR」(Browser Detection and Response:ブラウザ検知と対応)だ。
BDRとは何か
BDRは、Webブラウザ内で発生する脅威や、Webブラウザを通じて侵入する脅威を検出、調査し、封じ込めるための仕組みだ。従来のネットワークセキュリティやエンドポイントセキュリティは見逃しがちな、 WebサイトやWebブラウザを悪用した巧妙な攻撃に対処する。以下にその例を挙げる。
- Webサイトの入力フォームから情報を盗む「フォームジャッキング」
- 不正なWebブラウザ拡張機能
- スクリプト(簡易プログラム)による認証情報の窃取
- Webブラウザ内で完結するフィッシング
- Webサイト運営者が利用する、サードパーティー製の「JavaScript」スクリプトを経由したサプライチェーン攻撃
- エンドユーザーがAI(人工知能)チャットbotなどのWebアプリケーションのUI(ユーザーインタフェース)に機密情報を入力、送信することによるデータ流出
Webブラウザはさまざまなクラウドサービス、Webメールなどの主要なクライアントとして機能している。BDRは、エンドユーザーとデータが接する場所であるWebブラウザのなるべく近くに検出ロジックを組み込むことによって、攻撃者が活動する場所の近くでデータを収集、監視し、スピーディーかつ正確な防御を可能にする。
BDRの導入形態は主に以下の3つだ。
- Webブラウザ拡張機能
- エンドポイントへの負荷が軽微なWebブラウザエージェント(常駐ソフトウェア)
- リモートブラウザ分離
- エンドユーザーのWebサイト閲覧行為を、エンドポイントから離れた隔離された場所でホストし、実行する技術。
これらを通じて、BDRはアクセス先のURL、ドキュメントオブジェクトモデル(DOM:Webページの構造情報)の変化、スクリプトの実行履歴、フォーム送信、クリップボード操作、ファイルのアップロード/ダウンロード、拡張機能の動作などの監視データを収集。この情報を、エンドユーザーの識別情報(ID)、デバイスの状態、クラウドサービスの利用状況とひも付ける。
BDRは、収集したデータから通常の挙動を学習し、それとの乖離(かいり)や異常スコア、あるいはWebページへの不正な構成要素の挿入、不審なドメインへの通信要求、認証情報の搾取パターンといった既知の侵害の兆候に基づいて、脅威を検出する。脅威を検出した際には、Webブラウザ内での警告の表示、ファイルのアップロードや機密情報の貼り付けなどの危険な操作のブロック、セッションの自動終了、再認証の要求といった即時措置を実施する。EDRやSOAR(Security Orchestration, Automation and Response)と連携した処置も可能だ。
BDRが補完するセキュリティ体制
BDRは、クラウドサービスの利用を監視、制御する「CASB」(Cloud Access Security Broker)、ネットワークとセキュリティを統合した「SASE」(Secure Access Service Edge)、「DLP」(データ損失防止:Data Loss Prevention)といった既存のセキュリティ技術を置き換えるものではない。それらを補完するのがBDRの役割だ。BDRが収集した詳細なWebブラウザのイベント情報は、「SIEM」(ログ統合管理システム)やXDRと連携させることで、分析の精度を高めることができる。アラートをSOARと連携させれば、インシデント発生時のフォレンジック(事後調査)にも利用できる。
BDRはID管理システムからユーザー情報を、CASBやSaaS設定管理ツールからはアプリケーションの利用状況を、DLPツールからはWebブラウザが扱うデータの機密性をそれぞれ取得する。これらの文脈(コンテキスト)を組み合わせることで、状況に応じた対処を実現する。
どのような組織がBDRを検討すべき?
以下の特徴を持つ組織にはBDRが向いている。
- 大半の従業員がテレワークやハイブリッドワークを実施している
- 業務をSaaSやWebポータルサイトに依存している
- 厳格な規制順守が必要
- 機密性データを扱う顧客向けWebアプリケーションを運用している
クラウドサービスを前提とした業務プロセスが浸透した結果、多様な脅威が登場した。Webサイトが利用するスクリプトやフォームを踏み台にする「Webサプライチェーン攻撃」、メールサービスの防御を擦り抜ける巧妙なフィッシング、不正なサードパーティー製スクリプトやWebブラウザの拡張機能、AIチャットbotを通じた機密データの外部流出などだ。これらの脅威が、BDRの採用を後押ししている。
セキュリティの“空白”を埋めるBDR
BDRはEDRやCASB、ネットワークセキュリティを代替するものではなく、それらを補完するものだ。他のツールでは捕捉しにくい、Webブラウザに特化した状況把握と制御を実施することで、ID、エンドポイント、ネットワーク、アプリケーション層全体にわたる脅威に備えられる。
現代の業務の大半がWebブラウザで遂行されている以上、そこが攻撃者にとっての「主戦場」になるのは必然だ。企業はBDRを導入すれば、SaaSの利用にまつわるリスクやフィッシング、Webサプライチェーン攻撃のリスクを抑えられる。これまで見逃されていたリスクを浮き彫りにするだけではなく、脅威の検出から対処までの時間短縮にもつながる。
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